小説・2

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■ 第一章 りっちゃんのお願いもしくは受難の隊長編 ■

おれの、最愛の彰浩は。おれのお願いなら何でも叶えてくれるんだよ。だからごめんね桐哉隊長。


目立たないように、というのは無理だった。
すっごいうっとーしいし、めんどくさいんだけど、おれと彰浩が徴兵とかされたんだよね。ま、国民の義務と言われれば仕方ないんだけどほんとなんでおれがこんなことしないといけないんだろうってちょっと頭にくるよね。故郷の村でのんびりパン焼いたり本読んだり、たまに怪我なんかで担ぎこまれる人とか病気の人とか治療して、あとは彰浩といちゃついて過ごしたいのにさ。
あー、べつにね、怪我人の治療くらいいよ?兵士のみなさんばしばしお怪我なさって治すのはいいよ?
……だけど怪我をが直してあげた途端にセクハラ仕掛けてくるのほんっとやめて欲しい。別に被害はないけどね。だっておれのことは一生ずっと彰浩が守ってくれるから。おれだって自分で自分の身くらい守れるけどね。魔法って使うと結構疲労度が高い。怪我してる人治すのは治療魔法、おれにセクハラしてくるヤツ倒すのは攻撃魔法。魔法の系統、切り替えるの、ホント面倒でしんどいんだよね。
使えるけどねおれも、両方、それなりに。
おれはいつも攻撃魔法使えるの隠している。身の危険、カンジた時だけ使うくらい。おれの身体に触っていいの彰浩だけなんだからねっ!
でもねえ、魔物退治の兵士の人と一緒に行動なんてね、みんな気持ち、やさぐれてるし。魔物もバンバン出てくるし、それだけじゃなく夜盗のみなさんとかもねえ、ほんと隙逃さず襲ってくるし。
元々兵士だった人なんて疲労困憊。
おれと彰浩みたいに徴兵されてきた人間なんて、率先して戦う気なんてないし、兵士の人が指揮とか指示とかちゃんと出してくれないと右往左往でしょ?混乱して魔物とか野党とかに真っ当に対処するなんて出来なくて。
彰浩とおれはね、そりゃあ自分の身は守れる。まもれるけどこんなところにいつまでも付き合っていられない。
逃げちゃおっかな、なんて思っても、逃げておれの家族とか彰浩の家族とかになんか迷惑掛かるのも嫌だから。
いちおう、回復魔法使えるってことでおれは医者的な役割のポジション確保したし、彰浩もおれ専属護衛兵みたいなカンジにしてもらってるけどさ。……おれは、正直目立つんだよね。
だって顔、可愛いし。
言っておくけど自慢しているわけじゃないからね。
戦場で、可愛い系の顔の男が居るんだよ。
身の危険感じないほうがおかしいでしょ。
待遇改善を希望したい。
それにこんなところに居たら彰浩といちゃつくわけにはいかないでしょ?もう何か月も彰浩としてない。キスすらままならないなんてちょと欲求不満気味。だけどさー、兵列から離れてどっか森の奥とかでいちゃいちゃなんてできないもんね。覗かれるのなんてゴメンだし。おれたちの姿見られないように魔法掛けて、いちゃつくなんてさあ。
なんかこう……、集中出来ないよね。まあ、姿消してキスくらいはなんとかできるけど、それ以上は無理。
そんなふうに不満たらたらたらしているときに、また、なん十回目だかわからないけど夜盗が襲ってきたわけ。
本職の兵士のみなさんがそのへんの魔物と戦っている隙に、食料だとか物資だとか盗んじゃえっていう火事場泥棒みたいな夜盗ってムカつくけど効率良い仕事っていうんだろうなあこういうの。だってねえ、行軍中なんて物資大量に必要でしょ。魔物退治で百人とか二百人の兵士の人とか徴兵された人が居るっていうことは、その人数分ご飯食べるってことだからね。武器も、一人一個じゃないから結構ある。武器の修理用の道具とか回復用の薬とか、下手な商人なんて目じゃないくらい持って移動しているんだからそりゃあ夜盗のねらいどころとしては悪くない。もちろん、本職の兵士の人達だったら魔物だって倒すんだから、夜盗くらい倒せないでどうする?ってカンジだけど。あいにく今は兵士の人不在。魔物と戦っている真っ最中。徴兵された人たちは、夜盗なんかに対抗しないで、逃げまどうので精いっぱい。あー、またか。おれと彰浩は自分の身は守るけど、みなさん守る気はない。だってきりがないんだもん。それに助けてやっても、それにかこつけて、おれに礼を言いに来たのかなとか思ったらそのままおれ襲われそうになるし。助けてやった恩を、おれに仇で返さないでよっ!ってすっごいムカつく。
だから、知らない。
おれと彰浩は自分達の身だけ守る。
それのどこが文句あるんだよ。伝説の勇者様じゃないんだから出来ることとできないことがあるんだよっ!
そんなふうにぶつぶつ文句言いながら、身と隠すっていうか身を守っていたら。
あれよあれよという間に夜盗の一団倒しちゃった人が居て。そんなことで兵士の人から警備担当とかに任ぜられちゃって。徴兵された一般人のみなさんに声掛けまくって仲良くなって。いつの間にか、すっごい系統立てていろんなトラブルに対処できるようになっちゃって。もちろんその人、おれと彰浩にも声掛けてきて。
「へー、魔法使えるんだすげえなあ。怪我とかしたらオレの治療とかよろしくー」
なんて喋っているうちになんかおれも彰浩もその人と仲良くなっちゃって。

なんかね、みんなその人頼りにするようになっていった。困ったこととか不満なコトとかあったら相談とかするみたいにさ。
その人が全部解決してくれるってわけじゃない。だけど、ね。気さくで話しやすいし。「んー、そっか。それじゃえっと。そのへんに関して詳しい人居る?ちょっと手伝ってくれると助かるしー」なんてみんなで何とかしようってカンジに声掛けまくっていくんだよね。
うん、なんていうのかなあ。徴兵されてきた人たちのやさぐれてた気持ちとか、すっごくマシになってきたんだよね。もちろんおれもだ。怪我人治療するのはいいけど、直したあとにセクハラまがいのコトしかけられるの冗談じゃないっていう文句零したら、その人がなんか手を尽くしてくれた。おれが怪我人なおしに戦場駆け巡るんじゃなくて、救護用の場所確保してくれて、そこに怪我人運ぶようにってふうにいつの間にかしてくれて。怪我した人、テントに運ぶ人とかそういう役割の人作ってくれて。うん、一対一の場合だとおれを襲おうって気にもなるかもしれないけど、大勢の目があるところならおれだって襲われにくい。
すごい人だなーこの人、とかちょっと感心してるんだけどさおれ。そんなこと言ってみたら「べっつにー。オレがなんかしてるわけじゃないっしょ?出来そうな人に声掛けまくってるだけであとはみんなが自主的に動いてくれてるだけだろ?」って返事だったし。
謙遜とかしてるんじゃなくて本気でそう思ってるみたいなんだよね。
それが、北嶋桐哉って人だった。
「桐哉みたいな人が上に立ってしきってくれるといいよね。過ごしやすいっていうか……」
ぼそっと、零したおれの一言を、彰浩はしっかり聞いていて。
「兵役義務は五年か。桐哉がいたら律の身の危険は減るな」
「うん。おれだって怪我人とか治療したり助けてあげるのは故郷に居ても戦場に居ても同じだからいーけど。身の安全は確保したい」
「そーだな……」
彰浩はちょっとしばらく不在にするから桐哉の傍からなるべく離れるなっておれに言い置いて、それで3日くらい姿消した。
別に自分の身くらい自分で守れるけどねおれも。
彰浩が、そうやっておれのこと置いていくのはめったにない。
うーん、どうしたんだろ?ってちょっと思った。
あ、不安はないよ。彰浩はおれのものだしおれだって彰浩のものだからね。
で、ね。
彰浩が「首尾良くことが進んだ」って帰ってきたら。
桐哉は、隊長なんてものになっていた。
兵士のみなさん不在時の警備責任者じゃなくて、正式に軍の所属。そんでもって、一部隊率いて自由に魔物に対応しろなんて、ええとなんていうのかなあ?あ、そうそう、遊撃隊みたいなものの、隊長ってコトになって。で、彰浩はその遊撃隊のっていうか桐哉専属の補佐その1みたいな立場になって。おれも補佐その2みたいになっていた。
……彰浩が、なんかしたんだよねきっと。おれのコト守るためなら彰浩なんでもするし。
まあ、そういうわけで、桐哉は隊長になって順調にクラスアップしていっている。そのうち師団長とかもっと上まで行くんじゃないのかなあ?
「オレはっ!軍なんて辞めて兄貴の所に帰るんだああああああああああああああああっ!」
たまにね、発作的に桐哉は叫ぶ。
まあ、でも。桐哉が居れば軍で過ごすのもおれは悪くないかと思ってる。
だから、ね。多分、桐哉が退役なんて出来ること、ないよ。
彰浩がこっそり手をつくしちゃうだろうし。
んー、でも好きな人と離れてるのは嫌だろうから、桐哉のお兄さん、お城とかで働いてもらえばいいのかなあ?足が悪いってことだからおれたちと同じように軍隊勤務は無理だろうしねえ。
ねー、彰浩。おれたちが快適に過ごすにはどーしたらいいと思う?
桐哉と一緒に過ごすのもわりと楽しいんだよね。せっかく出来た友達だし。それに、イケニエにされかかった川村さんもすっごい可愛いから仲良くなりたいなーとか思うし。
おれが、そう思っていればきっと。おれの彰浩がおれのお願いを叶えてくれちゃうから。

だからごめんね、桐哉隊長。
多分一生、頑張ってこの国と、おれと彰浩の生活良くしてね。



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