小説・2

BL二次創作&創作。18歳未満の方はお戻りください。無断転載厳禁です。

■出発編■

お隣の国にお使いに行くことになりました。うん、よくわかんないんだけど、お隣の国にね、すごーく有名な魔女のヒトがいて、その人のところにおれに行って欲しいって王様に言われたんだ。
お隣の国なんて行くの初めてだー。えっと、ぶーちゃんに乗って飛んでいけばいいのかな?ぶーちゃんはドラゴンだから隣の国くらいすぐに行って帰ってこられるからおれがお使い頼まれたのかなーって思ったんだけど。
……ぶーちゃん、ここのところおれのところに来ないんだよねー。繁殖期、なんだってさ。ぶーちゃんにはちゃんと奥さんのドラゴンがいるから。れーちゃんていう深紅色の綺麗な女の子のドラゴンさん。子どもとかできたらかわいいだろーなー。ぶーちゃんもミニサイズでおれの肩とか頭とかに乗ってるときはすっごく可愛いけど、子供のドラゴンて見てみたいなー。ええっと。青い鱗のぶーちゃんと赤のれーちゃんの子供なら何色になるのかなー?いっくんみたいな金色のドラゴン?それとも紫とか?真っ黒の色とかだったらかっこいいかな?なんて想像してみるんだけど。繁殖期で卵産んで、それからその卵から子供が孵るまで何十年もかかるらしい。れーちゃん、そのあいだずっと卵あっためてるのかなぁ大変だなあ。うーん。
そんなカンジだからいくらドラゴンのみんなが便利でもお隣の国まで送って、っていうわけにはいかないんだよね。だから歩いて行くのかなあっておれは思ったんだよね。お隣の国まで歩き……ちょっと遠い、よね?お隣の国まで歩くとどのくらいなのかなんて正確にはわからないけど。一日とか二日で行って帰れないってことくらいはわかる。でもね、王様がね、ちゃんと送り迎えしてくれる人、手配してくれるって言ってたから安心。馬に乗って行くってことなんだってさ。おれ、馬とか乗ったことないんだけど大丈夫かなあ?とか思いながら、お城の門のところで待ってたんだけど。やって来たのは桐哉だった。
「おーい、川村~。準備出来てっか?」
お馬さんのに乗って桐哉がなんか知らないけど、疲れたみたいに背中丸めながらおれのほうに来る。
「あれ?とーや?桐哉がおれ隣の国まで送ってくれる人?」
「そー。それからあと二人……オレの部下っていうか友達みたいなのも来るから川村はそっちの馬に乗って。あと……兄貴も、くるから……」
「えっ!恭也さんも一緒に行くの?」
「そー……。どーしても行くって聞かなくてさ……」
はあ、とか思いっきり桐哉はため息ついてるけど。おれは嬉しくて。だって大好きな恭也さんと一緒におでかけ!すごおおおおおおおおい嬉しい!!桐哉もまあいいや!いてもいいけどこのところ同じお城で働いていてもなかなかゆっくり恭也さんとお話なんて出来なかったから。お使いの行き帰りにたっくさんの話出来る!
なんておれがすっごい喜んでるってのに桐哉の眉間にはしわが寄ってる。
「とーや?どうしたの?恭也さん一緒で嬉しくないの?」
「……川村よ、隣国の魔女んとこ行く途中には魔物わんさか出てくる樹海通らないといけねえんだよっ!その上魔女さんだって超おっそろしい危険人物指定されてるってのっ!オレはともかく兄貴をそんなところに連れて行きたくねえええええってのにっ!」
「…………桐哉?まだそんなこと言ってんのか?俺連れて行かなかったら……」
「うわああ兄貴っ!いつの間に背後にっ!」
「あー、恭也さんだおはよー」
おれは一目散に恭也さんに向かって抱きつきます!
「おはよ、川村君。今日もかわいーなー」
「え、へへへへへへへへ」
可愛いとか恭也さんに言ってもらえると嬉しい。照れるけどすっごい嬉しい。抱きついてるおれの髪とか撫でてもらってすっごく幸せ。
「……連れて行きますよ連れて行きますともだから兄貴、川村から離れて。オレの精神衛生上よろしくないからオレの目の前で川村といちゃつかないでお願い……」
「もういい加減文句タラタラいうんじゃねえっつの。……で?もう出発すんの?」
「あとりっちゃんとフジ君来るからもうちっと待って」
えーと、リっちゃんとフジ君て誰だっけ?聞こうと思ったそのときに「たいちょー、お待たせー」って、なんかすっごく可愛い女の子ともう一人おれと同じくらいのと仕事の男の人がお馬さんを引きながらおれたちのほうにやってきた。あ、なんかどっかで見たことある。えーと、おれが昔イケニエにされた時とか、どっかで会ったことある人たちだ。
「おはようございます川村さん、と、隊長のお兄さん。ええと、隣国への行き帰り同行します工藤律です。で、こっちは藤沢彰浩です。どうぞよろしく」
「あ、よろしくおねがいしますー」
ぺこって頭とか下げてみる。
「川村さんはおれの馬に乗ってもらいますね。お兄さんは彰浩のほうに乗ってください」
「あー、はい。えっと、二人もお馬さんに乗って大丈夫なのかな?お馬さん、疲れたりしない?」
「基本は川村さんとお兄さんが馬に乗ってもらって、おれと彰浩は手綱引っ張って歩きます。魔物とかに遭遇した時は二人乗りになりますけどね」
「え、でも女の子、歩かせておれが馬に乗るのってちょっと……」
こんなにちっさくて可愛い子、歩かせるの申し訳ないと思う。おれだってそう体力とかあるほうじゃないけど、少なくとも女の子よりはまし……って思ったんだけど。
「川村、こんなに可愛くてもりっちゃんは男」
「えっ!」
「……よく間違われますけど男です」
にっこり、笑われたその顔がホントお花みたいですっごい可愛いんだけど。
「あー、ご、ごめんなさい」
「いいえー。おれ、こんな顔してますから。無理はないんですけどねー」
「ほ、ほんとごめんなさいー」
おれが恐縮したらそれまでだまってじっと立ってたもう一人の男の人……ええと、藤沢さんが、ぼそっと「律はいつでも可愛い」って呟いた。そしたらええと、工藤さんの笑顔がお花咲いたレベルからお花咲き乱れるみたいになった。うっわー、ホントすっごい可愛い人だ!
「あー、そんじゃ、全員そろったんで出発。とりあえず、直線コースじゃなくて迂回していくからな。まずは勇者サンのウチによって、そっから樹海通って隣国へっつうカンジ。勇者サンの所まではまあ安全にのんびり行けると思う。そのあとが問題だから、出来れは勇者サンに同行してもらえるといいんだけどなー、どーなるかなー?」
桐哉が、ぼそぼそと、そんなこと言ったけど。
ええと、勇者サンって省吾サン?
「と、桐哉?なんでしょーごサン……」
だってお城のお使いだよ?省吾サン、関係ないのに来てもらうの悪いと思う……。とかなんとかおれは口の中でもごもご言ってみた。あ、べ、別に一緒が嫌だとかいうんじゃないんだよ!省吾サン、おれにすっごい優しいし、なんかあのイケニエにされかかった時からおれのこと気にかけてくれてるみたいで、お城に来たついでにおれの所立ち寄ってくれるしお話とかしてくれるしええと、でもあのその……。
顔、赤く染めたおれを不思議そうに桐哉が見てる。あ、どーしよ。
「川村?顔赤い。オマエどーした?」
ええと、あのその……。
「川村君?あの勇者さんに何か言われたり何かされたりしたのかな?」
ええと、そのあの……。恭也さん、笑顔だけどあの、ちょっとなんか怖いんだけどどーして、かな?
「何かされたっていうんなら、教育的指導で成敗するよ?」
にこ、って恭也さん笑うけど。ええと、教育的指導って何?恭也さんが省吾サンに何かする、の?
「ええと、なんかされたとかじゃなくて……」
ちょっと言いにくくておれは口ごもる。
「されたんじゃなかったら何か言われたのかな?川村君、何を言われたのか話してくれるかなあ?」
にこっと、笑顔で。
「ええと、そのあの」
「うん、なに?」
でも強い口調で先を促されて。おれはすっごい小声でようやくのことで「あの……、省吾サンに、プロポーズっていうか、おヨメにおいでって言われて……」
うわぁ、言っちゃった!
省吾サンに言われたんだよついこの間。今度来た時に返事欲しいって。
今度来る時っていつ?って聞く前に省吾サン、消えるみたいに帰っちゃって。
今度来る時の前におれは隣国の魔女さんに所にお使い行かなくちゃいけなくて。
だから、一応、お城の人達に「もしもおれが居ない時に省吾サンが来てくれたら魔女さんの所に行くことになりましたって伝えて欲しい」って頼んだし、おれの部屋にも置き手紙してあるんだけど。
ほら、やっぱりプロポーズの返事はちゃんと直接言わないといけないと思うし。
でもそもそも、そのお返事どーしようとか思ってる。
省吾サンは、結構好き。
恭也さんの次ぐらいに好きだと思う。
でも、ええと……どうしよう。
お嫁においでとか言われた時は心臓バクバクしてドキドキしてびっくりしてでも嫌じゃなかったしちょっとホント言うと嬉しかったりもしたんだけどええと。
どうしよう、とか思ってるだけど……。
ぐるぐるぐるぐる、おれは混乱中。
なのに。
「……………………何を今更」
呆れたような、桐哉の声が。
「もうとっくじゃんかそれ。オマエ、イケニエにされて、そんでもって勇者サンに助けられた時とっくに言われてたじゃねえかよ」
「え?何を?」
何か、省吾サンに言われてたっけ?それに恭也さんが言った今更って何?
「だーかーらー。『だから、ユウの馬鹿をオレの嫁に寄こせって言ってる』って言われてただろー?」
あ、あああれかあ。
「でもあれ省吾サンが『嫁は比喩だ』って言ってたもん」
うん、たとえで言ってたんだよねあの時は。一生守ってくれるってそういう意味で、傍に居ろって言ってくれたんだ。もうイケニエになんてならなくてもいいようにって。きっとおれのコト、ちょっとは大事にしてくれる気だよってそういう意味あの時は嫁って言葉でたとえてくれただけだとおれは思ってる。
だってそのあとずーーーーーーっと、おれはお城に勤めて。別に省吾サンのお嫁さんになってたわけじゃないし。
省吾サンだって、おれの所に顔見せにとかわりとよく来てくれてたんだけどそんなこと全然一言も言われてなかったし。
「比喩ってオマエな……。あの後押し倒されかけて手籠めにされかけてたじゃねえかよっ!」
「てごめ…ってなに?」
がつーんとすっごいいい音がした。なんだか知らないけど思いっきり恭也さんが桐哉の後頭部、叩いてた。
「え、えええと?きょーやさん?」
「はいはいはいはい、桐哉、そこまで」
「ええと、恭也さん、手、痛くない?」
「んー?痛いよ?」
「えっと、じゃ、なんで桐哉殴ったの……?」
「余計なこと言いやがったからお兄ちゃんの鉄拳炸裂教育行為だよ?」
桐哉のほう見たら、思いっきり顔顰めて後頭部擦ってる。
「……事実手籠めにされかかってたじゃねえかよコイツ、勇者サンにっ!地面に押し倒されてあっちこっち触られれてて、首とかにべったり付けられてたじゃねえかよキ……っ!」
「……教育上不適切な単語の発言は控えような、桐哉?」
「……はい………」
ええと、地面に押し倒されるのが手籠めっていうこと?
「あーあれ、イケニエにされかかったから一応あちこち傷とか打撲とか骨折ないかって省吾サンが確かめてくれたこと言ってんの?」
そうなんだよね。一応省吾サン、おれが大怪我してないかとか心配してくれたみたいで。うん、その時のこと、言ってんのかなあ?
よくわからなくて首かしげたら、恭也さんは桐哉睨みつけながら「そーそーそーゆーこと」とか笑顔になるし、桐哉はもごもごごと、なんか知らないけど「いい加減純粋培養すんの止めろよ兄貴っ!」とかわけのわからないこと、言ったりしてる。ええとお?
恭也さんと桐哉はぎゃあぎゃあとなんか言い争ってるし。おれは言われた言葉の意味がわからなく首かしげちゃってたし。
「はいはいはいはいはいはいはい。たいちょーもたいちょーのお兄さんもいい加減にしないと日が暮れます。川村さんがイケニエにされかかった時に勇者さんにプロポーズされようか今されようがなんの変わりなんてないでしょう。求婚されたって事実に変化なんてないんだから。それより問題は、勇者さんのプロポーズを川村さんが承諾したのかしないのかでしょ?違う?プロポーズオッケーなら隣国まで付いて来てくれるだろうし、樹海に魔物が出てきても余裕で対処できるでしょ?でもから村さんがプロポーズお断りしたっていうのなら、勇者さんの所のルートじゃなくて道変更したほうが無難じゃないかっていう話じゃないの?」
今まで無言でいてくれた工藤さんが恭也さんたちを仲裁してくれた。
「そうだよっ!川村君!返事とかどうしたのっ!」
慌てて、恭也さんが言ってくれたけど。
「ええと、その……」
「ま、まさか。もう嫁に行くとか返事しちゃったわけは……」
「あ、ううん、えっとその……」
「俺に無断で結婚承諾なんてそんなことないよね川村君っ!勝手に結婚なんてそんなことお父さんは許しませんっ!」
「えっと。お父さんて誰?」




性懲りも無く続く













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