小説・2

BL二次創作&創作。18歳未満の方はお戻りください。無断転載厳禁です。
これは誰に言うつもりもない、単なるオレの独り言。

きっかけとか、そういう話。

あの時オレは疲れてて。というのも、列車に3日連続乗っててさ、しかも毎度おなじみ、っていうくらい、列車テロに遭遇して、テロリストとかやっつけて。
そんでまあ、なんとかイーストシティにたどり着いたら、どこのホテルも空きがない。なんかイベントとかお祭りとか?そーゆーの、けっこう大規模で、他国からも来賓呼んじまうくらいのヤツの真っ最中らしくて。
で、結局。軍部の仮眠室でも借りようと、大佐んとこ行ったら、仮眠室も全滅。
もうどこでもいい、いっそ大佐の執務室の床でもいいから寝かせてくれ、ってくらいに疲れてて。
そうしたら、その大佐は執務室で寝ている最中で、そこもアウトかよ、ってふてくされそうになったんだけど。
ホークアイ中尉が毛布とかなくても大丈夫なら大佐の執務室のソファで寝てもかまわないわよ、って言ってくれて。オレはありがたくそれに飛びついた。

そしたら、執務室のソファには大佐がすでに先に寝ていやがった。

話が違うじゃねえか、ソファ空いてたんじゃないのか、とか思った瞬間。

大佐が。
うなされてて。

何かの夢とか見ているのかわからないけど。
聞き取れないくらいのつぶやきが、何か聞こえてきて。
額に汗とかかいてて。
苦しそうに眉をひそめて。
オレが同じ部屋にいることなんか気が付かないままうなされて。辛そうで。
いっつも不敵に嘲笑ってるような顔しか知らないから。
オレは驚いて動けなくなって。
でも、大佐が、腕を伸ばして、何かをつかもうとして。
ほら、例えばなんだけど、崖とかビルの屋上とかの高いところから落ちちまう時に、手を伸ばして掴もうとするだろ?あんな風に手を伸ばすから。
だからオレはとっさに大佐の手をつかんで。
両手で、包みこむみたいに。
でも、そっとつかんで。
「大丈夫だから」って思わず言っちまって。
そうしたら、声でわかったのか、それとも右手と左手の感触が違うから、ほらオレの片腕機械鎧だからさ、その感触の違いで分かったのか。
大佐が、うっすら目を開けて確かめるみたいに「鋼の……?」ってつぶやいて。
そうして、それだけ言って、すうっと、眠りにひきこまれるみたいに目をつむった。
今度はうなされもしないで、規則的な寝息が、穏やかに聞こえてきて。
でもオレは何となく、掴んだ大佐の手を放すことができなくてそのまま包み込んだままでいた。

で、気が付いたら、大佐はいつの間にかいなくて。
大佐が寝ていたはずのソファでオレが寝ていて。
さっきのはオレの夢かなって思ったんだけど。オレの体の上には毛布じゃなくて、大佐の上着つうか軍服が掛けられてて。

ああ、って思った。

何かを強く思ったわけじゃなく。
ああ、そうかって。あれでよかったんだって。

きっと、何でうなされてたのか、もう大丈夫なのかとか、聞く必要なんてなくて。
ただ、あの瞬間にあの場所にオレがいて、大佐を穏やかに眠らせることができてよかった。

最初は、それだけ。
単にそれだけを思ったのに。

ずっと、何度も繰り返し、思い出しちまった。
何度も何度も何度も。

小さくオレの名前をつぶやいた声。すうっと、眠りにひきこまれるみたいに目をつむった大佐の顔とか。
何度も何度も繰り返して。
まるで、宝箱をそっと開けて、箱の中にちゃんと宝が入っていることを確かめているみたいに。
何度も何度も繰り返し思い出す。

なんでそんなことを思い出すんだろうって思ったら、わかってしまった。
あの瞬間を忘れたくないんだオレは。
あの瞬間にきっと、大佐がいけ好かないヤツから、オレの特別に変わってしまったから。

でもこれは、言うつもりはない。
誰にも。
いつまでも。

単なる独り言。

そうして。きっといつか、大佐が誰かきれいな女の人と結婚とかするまでに、ゆっくりと風化させるつもりの気持ち。

男で、年下の、オレから告白されてもきっと大佐は困るから。
だから、一生、心に秘めたまま。
誰に告げるつもりもない。

‐終-



















書き途中ロイバージョン。



時折り、ふとした瞬間に焔の幻を見る。
もちろんそれは現実の焔ではなく、単なる幻。
例えば疲れ切って眠った時見る夢のようなもの。
過去を振り返った時、記憶の中から湧き上がってくる黒い影のようなもの。
けれどそれは幻覚などではなく。
過去に、現実に、私自身が行ったもの。

焔の赤が全てを燃やす。
人も、血も肉も魂すらも燃やし尽くす。
私のこの腕が生み出した焔が空の青までも焔に包む。

後に残るは怨嗟の声。
風が声をいつまでも響かせる。
恨む、と。
なぜ殺すのかと。
いつまでも忘れない焔の記憶。
きっといつまでも忘れることは出来ない過去。

けれど過去は過去。
いつまでも忘れることはないそれは悔恨ではなく。忘れるまいと覚悟しているのでもない。
単なる記憶。
私の、心の奥深くに、いつまでも横たわり続けるのだ。

自身の行為を正当化するつもりもなく、被害者ぶるわけでもない。

私が、何をしたのか。
それをそのまま、何一つ変えることなく忘れずに……持ち続けているだけなのだ。
持ち続け、そうしてそれを抱えたまま、何かを成し遂げようと。
足掻く。
理想を、掲げ。己の力不足を知り、それでも理想を諦めまいとする指標のようなものとして。

だが、ふとした折に、それが重くのしかかってくることがある。

すまないと、謝ることで許されるはずもない。
代わりに何かを成し遂げてもそれで相殺されるはずもない。

それでいい。

過去に魘されようと、私は私の道を進む。

けれど。

ほんの時折、少しだけ。
静寂の中に微睡みたい時もある。

ほんの少しだけ、焔の赤ではなく、空の青さを見せてほしい。

そんな風に魘されて、私は思わず腕を伸ばす。延ばした先に何もないのはわかっているはずなのに。例えば高い所から落ちるときに、咄嗟に腕を伸ばすように。掴めるものがないままに、落ちていくのは知れているというのに。
手を、伸ばす。
けれど。
「大丈夫だから。」
温かい声。強い声。
ああ、知っている。この声は。
「鋼の……」


光のようにまぶしい君の、温かくやわらかく、そして強い手が、私の腕を包み込む。
息を吐いて、目をつむる。


強く真っ直ぐに君自身の道を進むだろう。
だから、私の焔を君に見せることはない。
暗く、怨嗟に満ちた道を、私は抱えながら、それでも前に進むから。
時折り、そう、今のように、少しだけ君の熱が欲しいと思うことだけは許して欲しい。


そうして再び目を開けると。私の寝ていたソファに寄りかかって鋼のが眠っていた。
私の手をしっかりと握りしめたまま。
疲れているのだろう、ピクリとも動かずに。
起こさないように彼の体をそっと抱き上げる。
そして、ソファに横たえて、毛布代わりに私の上着を掛けておく。
寝ている彼の体を温めることが出来ればいいのにと、そんなことを思いながら。

だが、それは
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。