小説・2

BL二次創作&創作。18歳未満の方はお戻りください。無断転載厳禁です。
気になることはすぐにでも解消したいのがエドワードである。
王宮に帰りつくなりすぐに「誰かに、恨まれたりしてんのか?どうして?」とロイに説明を求めたかったのだが、それをエドワードが口にする前にロイはロイの帰りを待ちわびていた臣下の群れに囲まれてしまった。
エドワードが口を挟む暇もなかった。
ロイの決済の必要な書類が山を成しているだとか、ロイに謁見を求めているものが列を成しているだとかの言葉が次々にロイへ浴びせかけられる。その言葉に対してロイは口頭で済むものを優先して指示を矢継ぎ早に出していた。
そうしてそれらの臣下に囲まれたまま、ロイはかろうじてエドワード達に「すまないね」と一言述べ、次いでハボックに「二人のことは頼む」とそれだけを告げ、ロイは足早に去って行ってしまったのだ。
今日が駄目なら次の日に……と思ったのだが、次の日からも他国の大使との接見だの、国際交流会議レセプションへの臨席だの、子どもたちのための環境保全に関する教育会議への聴講だとのロイは多忙を極めていた。
ロイが捕まらないのであれば、ロイのことは一端棚に上げて置くしかない。時間もないのだ。魔女に対する対抗策。それをなんとか考えださねければ命が無い。
手がかりなどないに等しい。
ただ考えられるのはロイが言った「魔女に同情することなく共感し、魔女に呪いを解いてもらう方法」だ。
ロイには何らかの対抗手段の見当がつけてあるようだが、エドワードとアルフォンスには皆目分からない。
ロイを問い詰めたくともそのロイは多忙である。
「うぅ……っ」
唸りながらソファに寝転ぶエドワードであった。
「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……っ」
「兄さん唸らないで。鬱陶しいよ」
アルフォンスはエドワードを軽く睨みつける。
「だけどなあアル。アイツを捕まえねえことにはもうどうしようもねえってのがムカつく……」
「うーん、まあ、殿下が恨まれてるっていうほうも魔女への対抗策も両方問いただしたいけどね。仕方がないでしょ。殿下はさぁホーント冗談抜きで今忙しいらしいからね」
「命かかってんのに外交だの内政だのしてる場合かっ!女王陛下がいるんだからそっちに任せちまえばいいっつーのにっ!」
「王族の方々はみんなお忙しいんだよ。女王陛下お一人で国政が回るわけないだろ。臣下がいくらいても最後には王族の決済必要になるんだから。国をほっぽっといて、ボク達に労力割けなんて言えるわけないでしょ」
「それにしたって……」
アルフォンスは肩をすくめると、すっと立ち上がった。
「はいはい。うだうだ言ってないで。今出来ることをやる。殿下だって言ってたでしょ。書物にばかり向かうのではなく。恋愛という感情や魔女の気持ちだけや……ボク達自身の心を考えろってね」
「言われたけどさあ……」
「書物から調べられることはもう大体調べられたと思う。だから、今度は行動が必要なんだとボクは思うよ」
兄さんはどう?と目線で問われたが、エドワードはなんと答えたらいいのかわからなかった。
「行動って……。クソ忙しいアイツを無理矢理拉致して……じゃなくて、時間開けてもらって話しやがれって迫るとか……か?」
「どーしてそういう極端な思考に走るかな兄さんは」
「ちがうんか?」
「違います」
じゃあ何をどう行動するのか、と、疑問符を浮かべながら首を横に傾けるエドワードであった。
そんな兄にふっと笑いかけてアルフォンスは「ボクはちょっと出かけてくるからね。兄さんも好きにしていて」とドアのほうへと足を向けた。
「なんだ?アル?どっか行くのか?」
「うん。行動ってのをしてみようかと思ってさ」
「そんじゃオレも一緒に行く」
アルフォンスの足がぴたりと止まった。
「兄さんがいたら邪魔だから。ついてこないでね」
にっこりと。これ以上もない笑顔をアルフォンスはエドワードに向けた。
「あ、ある……、邪魔って……」
がーん、と殴られたようなショックでエドワードはそれ以上言葉を繋げることは出来なかった。
「ごめんね。でも兄さんがいたらホントに邪魔なんだよ」
繰り返されて、エドワードにはもう何の言葉もなかった。放心したように口を開け、ただアルフォンスを見た。
「あのね、ボクの運命の相手って殿下の近くにいるはずなんだよね」
「運命の……相手?」
「うん。ボクの運命は兄さんの強い光の影響で母さんのカードでも読めないんだ。だけど、ボクの運命は兄さんの運命と密接に関係している。だからボクの運命の相手も殿下の近くにいる可能性が高い。……ここまではいいよね?」
「あ、ああ……」
「それから。ボクには……、兄さんもだけど、リゼンブールなんていう特殊環境でのほほんと暮らしていたから普通のことはよくわからない。恋愛経験もないから『失恋して世界を呪う』ような魔女の気持ちなんかわからない」
「うんまあ、そうだけど。それがどうした?」
「だから、知ってみようと思って」
「何を?」
「恋愛ってこと。先ずはボクの運命の相手を探し出すよ。それで、恋に堕ちてみる。そしたら何かわかるかもしれないじゃない」
分からないものなら知ればいい。
知らないままで、ぐだぐだとしているよりはきっと道が開けるはずだ。
きっぱりと、アルフォンスは言った。
「運命の相手なんてそう簡単に見つかるもんかよ」
懐疑的なエドワードに対して、アルフォンスは笑った。
「ボクの運命の相手。殿下の周辺にいるはずなんだよね。だったら動けば出会う確率高いと思うよ?」
とりあえず王宮歩きまわってみるよ、いってきまーすと、アルフォンスは足取り軽く、出かけて行ってしまった。
「オレは……どうすれば……」
エドワードは茫然と、ただその背中を見送るしか出来なかった。




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