小説・2

BL二次創作&創作。18歳未満の方はお戻りください。無断転載厳禁です。
目が覚めてからもオレはぼけっとベッドに寝転んでいた。身体は重くて、なんか起き上がるのが億劫で。それにさらさらのシーツは気持ちがいいし、抱きかかえている枕からはロイの残り香なんかがするし。ああ、幸せだなと夕べの行為を反芻したりして。夕べ。そう、ずっと一晩中ロイの熱を感じていて。頭の中は真っ白になっちまっていつまでたっても熱は引かねえし。ああ、もう。どーしよ。浮かれてるってオレ。落ち着けってオレって。でも、しょーがねえ嬉しいし。うん、だってこうなるの、ずっと待ってたんだからな。ロイが今までオレに手を出してこなかった分だけ舞い上がっちまっても仕方ねえだろう。その上指輪と婚約のオマケつきだ。っと、枕抱えてベッドの上をゴロゴロしていれば、とっくに軍務で出かけてると思っていたロイがいた。軍服にすら着替えていないままで、ベッドの端に座り込んで、何か思い悩むようにじっと一点を見つめている。オレが起きてんのにも気が付かないで、しかもオレごろごろごろごろ転げ回ってたんだけどな。それよりもう昼じゃねえか。今日は休み……のはずないよな。
ホークアイ中尉に撃たれても知らねえぞ。あ、オレ一回しちゃっただけで未亡人は嫌だかんな。
「ロイ……?」
オレは軋みそうな身体を何とか起こして、背中を向けて座っているロイに背後からしがみ付いた。
「ああ、おはよう。エドワード……」
憂いを帯びたかすれた声もかっこいい……なんて聞き惚れている場合ではない。なんだ?どうした?よく見れば、目の下にクマまである。オ、オレの大っ好きな切れ長の目の下になんじゃこのクマさんは。ああ、やつれた表情もイイ……なんて思ってる場合ではない!寝てないんじゃないのか?ええっと、もしかしてオレ、鼾でもかいて煩かったとか、それとも寝相が悪いとか……?寝てる最中にけっ飛ばしでもしたんか?それとも、ここまで憔悴してんのはそんなことじゃなくて。まさかとは思うけど、だけど。
昨夜はあんなに真剣に誓ってくれたことをに疑いたくはないんだけど。
他にこんなふうに憔悴させるようなこと、思いつかなくて。オレは恐る恐る声を出す。
「……何?どーかしたのか?」
寄せられた眉根にちょっと不安を覚える。オレは、すっげー幸せだったんだけど。ロイにとっては考え直したくなっちまうコトだったのかもしれない。やっぱ、もともとロイは女の人好きだし。オレは胸もないし同じモン付いてるし。……してみたら、やっぱり無理だとか。大事に思ってくれてるのは知ってるけど、それ、保護者的な愛情でこういう関係じゃなかったんだとか……。
「いや、考えていたのだが……昨日の私の言葉を訂正させてもらおうと」
「え?」
小さな不安が途端に大きくなるのがわかる。でかくなるのは身長だけでいいなんてふざけた突っ込みも出てこない。喉の奥が塞がれて、なんか怖い。
……オレ、思ったのにな。ロイの傍にあり続けられるくらいの男でいたいって。だけど、その強い決意も揺らぎそうで。
「ほら、『君が二十歳になったら結婚しよう』と言っただろう?」
「訂正って……何?」
オレの声が低くなるのも仕方がない。心なしか震えてるし。やっぱり、結婚やめるとか。そういうことなんかな。ずきりと、胸が痛んだ。そうだったらどうしよう。ヤダ、嫌だ。ぜってー嫌だ。
「今すぐ、結婚してほしい。エドワード。もうこれ以上我慢することはできない」
「ロ……」
「旅をやめられないのはわかっている。けれど、共に暮らそう。できる限り。この街に帰ってくる時は私のもとで過ごしてほしい。……エドワード、イエス以外の返事は聞かないよ?」
強張っていた全身の力が抜ける。ああ、そうじゃねえか。誓ったのに。オレはなんでこんなふうに疑うように、不安になったんだろう。一瞬のこととはいえ、不甲斐無い。ちゃんと、信じないと。ロイの気持ちを。オレの真実を。
「……昨夜言ってくれたじゃねーかよ。『病める時も……』って。……も、オレたち……その……」
誓ったんだぜ。神様にじゃねえけど。オレはロイに、ロイはオレにちゃんと。神様なんて信じてねーからオレたちはこれが正解なんだ。お互い誓い合ってそれで。だから、その……ケッコンなんて式あげなくても、書類なんて書提出しなくても、オレの伴侶はもうロイだって、そう思う。なんてことをボソボソと、オレは口にしていった。あんまりうまく言えなかったけど。ロイはオレの気持ちをちゃんとわかってくれたらしい。
「ああ、そうか。そうだったな。エドワード……」
綻んだ笑顔はやっぱり超かっこよくて。オレはその首筋にかぶりつく。そうしてロイはオレにキスをしてくれてからこう言ってくれたんだ。
「こんなアパートに住むのではなく、きちんとした一軒家を購入するから。私たちの寝室と、それからアルフォンスの部屋を作って。そうして一緒に過ごしていこう。旅に出ることを止めはしない。けれど私たちは家族だよ」
たぶん世界はオレらのためにあるんじゃないのかなって、思えてしまう。うん、今のオレはそのくらい満たされてる。 Lavie En Roseって、言葉もあるよな曇りなんかひとっつもない美しい人生。それを現す言葉だ。ロイの言葉は魔法の言葉で。オレをめちゃくちゃ幸せにする。うん、幸せだ。これ以上もないってくらい。
オレの18歳の誕生日、の翌朝は。昨日までとは全然違う世界の色。バラ色に輝く、晴れ渡った人生だ。
ふと、どうせ一緒のベッドでなんにもないままグーグー眠るだけでしょって、オレを送り出したアルの顔が浮かんだ。うん。アルフォンスにも言ってやろう!

「見たか、アル。オレの勝ち!!」

世界はオレのためにある!や、きっと絶対、オレたちのために、な。



-終-




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