小説・2
BL二次創作&創作。18歳未満の方はお戻りください。無断転載厳禁です。
声が、風に揺れた。
どうして、どうして……と。
しかし、それはロイの耳にもエドワードの耳にも届かなかった。
いや、誰の耳にも届きはしなかっただろう。
女の声は、風に揺れただけだ。
そして、その姿も。
ゆらり、と。
まるで陽炎のように。
女の姿が歪む。
静かに。
歪んで。
消え去るその寸前に、ロイが顔を上げた。
陽炎のような女に、ロイの身体が一瞬硬くなる。
エドワードを抱きしめたまま、ロイは女を見た。
女は、ロイを見ていた。そして、その腕の中のエドワードを。
「どうして……なの?」
女の声は、音声としてはロイの耳には届かなかった。
音声と、しては。
ただ、唇の動きから、ロイは女が何を発したのかがわかった。
「『どうして』……とは何だ?」
ロイは女に聞いた。
「え?」
答えたのはエドワードだった。
「何?」
ロイから発せられた言葉の意味がわからなくて顔を上げる。
「エド……、彼女が見えるか?」
「彼女?」
「そう……、彼女、だ」
ロイが指さした、その先をエドワードの視線が追った。
「え……?」
確かに女がいた。長い黒髪に、黒のドレス。瞳までもが黒だった。その対比のように、肌は透けるように白い。
いや、実際に、女の姿は透けていた。
実在する人間ではないことは一目瞭然だった。
叫びたい気持ちを抑えて、エドワードはその女を凝視する。
ゆっくりと、抑えた声で、女に尋ねる。
「アンタ……、誰だ?……っつうかナニモン?」
女は口を開きかけ、そうして、そのまま風にかき消されたように、その姿は霧散した。
「あれ……、なに?アンタの知り合い?」
エドワードはロイを見る。
「そう聞くということは君の知り合いでもない……のだね?」
「……ユーレイみたいに姿を消すことができる人間なんて知らねえぜ。リゼンブールの魔女でもそんな芸当出来るのいねえし……」
「私も同様だが……」
「この王宮に住みついているユーレイとか?」
「その手の怪談は古い城には付き物だが……、従兄殿の離宮の近くでは怪談などなかったはずだ」
「じゃ、あれ、今の誰っつうか……何?」
「わからん。ただあの女性は我々に向かって『どうして』という言葉を発していたが……」
「『どうして』?何がどうしてなんだか……?」
「我々がこうして抱きあっている姿を見て『どうして』と言ったのだから、『どうして抱きしめあっているのか』と聞きたかったのかもしれないが……」
「だき……って、う、わあああああああああっ!」
エドワードはロイの背に手を回していたことに、今、ここで、初めて気がついたかのように焦った。そしてそのまま全力でロイから飛び退る。
「おや、そこまで照れずとも……」
「あ、あのそのこれは違くてっ!」
ロイに抱きしめられるだけならともかく。自分からロイの背中に腕を伸ばして抱きついてしまっていたのだ。
エドワードは、両手をわきわきと無意味に動かしながら、違う違うと繰り返した。
顔から首から全身に至るまで真っ赤に茹で上がってしまった。
汗も、噴き出してくる。
熱くて汗が出るのか、それともこれは冷や汗なのか、それすら分からない。
……な、なんでオレは、自分からコイツに抱きついちまったりしちまったんだろう……。
自分の気持ちがわからない。
照れているわけではないが、何やら恥ずかしいことは確かで。
恥ずかしいと言うか、何故、どうして自分は、ずっとロイの背に手を回してしまったんだろう。どうしてそのままずっと静かに身体を密着させたままでいたんだろう。
エドワードは焦りながらも自身に問うが、自分の心の中にその明確な答えは見つからなかった。
しかし、ロイはエドワードの現状も心情も追い詰める気はさらさらないらしい。
「私の知り合いでも君の知り合いでもない上に、まるで幽霊のように姿を消すことができる女性……」
ロイは腕を組みながら、女の消えた空間を凝視する。
「……まさかとは思うが彼女がそうか?」
眉間の皺が深くなった。
「え、アンタ今の人の正体とかわかったとか?」
「単なる推測にすぎないが……」
「何だよもったいぶってねえでわかったんなら教えやがれ」
未だ赤い顔を誤魔化すように、エドワードは乱暴な口調で問う。
「……あれが『最悪の魔女』ではないかと」
「え、あ、今の……が?」
「ああ……。根拠はない。確証もない。が……」
「『が』?その続きは?」
「……君とアルフォンスの寿命が尽きるまで、もうそれほど時間はないだろう?そろそろ魔女が姿を現してもいい頃ではないかと思っただけだよ」
「あ……、そっか。いきなり何の前触れもなくオレもアルも死ぬってわけじゃないもんな……多分、だけど」
「君、確かリゼンブールで魔女について聞いてまわっていたのだろう?彼女の容貌などはどうだったかとか知っているかね?」
「あ、そっか……。魔女と直接戦ったばっちゃん達に聞いた……。黒髪で黒い瞳でスレンダーな美人だったって」
「ふむ……。今消えた女性と特徴的には一致するか」
「じゃ、あれ、やっぱり……」
「魔女の可能性は高いな」
「そっか……」
あれが、魔女。
自分とアルフォンスを死に向かわせているもの。
「まあ、魔女であると仮定をしてみるか……。では次にやるべきことは決まったな」
ぼそりと、ロイが独り言のように告げた。
「え、やるべきことって……」
「エド、君、死ぬ気はないんだろう?」
「当然」
何を今更あたりまえのことを聞くのかと、エドワードの表情が語った。
「もう一つ問うが、私と恋に堕ちる気は?」
「え、えええええええええっ!」
ようやく落ち着きかけた心臓の鼓動がばくんっと高鳴って、そうして再度エドワードは真っ赤になった。
「ちょ、待て待て待て……、そ、それと、魔女と何の関係が……」
ロイは一瞬だけ口角をあげた。が、即座にこれ以上もなく真剣な表情を敢えて浮かべてみた。
最初に出会ってプロポーズをした時は、ロイなど意にも解していなかったエドワードがここまで反応を見せたことに内心ロイはほくそ笑んでいたのだ。が、ここでそれを態度に出して全てを台無しにするロイではない。
「関係あるとも。我々は運命の相手なのだし、呪いに打ち勝つのは愛の力なのだろう?君がその気になってくれれば嬉しいし、そうでないのなら、魔女が我々の前に姿を現してくれたのは、状況を打破するためには好都合だしね」
ただ他意の無いようにと、淡々と告げる。
「え……?好都合ってなんだよ」
ロイはゆっくりとエドワードの瞳を覗きこんで、そして囁くように甘く告げた。
「それとも……私と恋に堕ちてみるかいエドワード?」
「ちょ、ちょっと待てえええええええっ!」
驚愕の叫びに、ロイはあはははと笑う。
「ああ、安心したまえエドワード。いきなり襲ったりはしないから」
「襲……っ!」
「合意ではないと意味はないからね。さ、行こうか」
「い、行くってどこに……」
「私の執務室に。きっと今頃アルフォンスも誰かに連れてきてもらっているだろうし、私の部下も、私が君を連れて帰るのを待っている」
「へ……?アル?アンタの部下?」
決して思考が鈍重なわけではないエドワードではあったが、この時はロイに振り回されていた。しかし、振り回されていることすらエドワードは気がついていなかった。
「そう……そろそろ本格的に魔女への対策を練らんといかんなと思ってだね。君達を呼びに行ったら部屋にも書庫にもいないものでね。君達を皆に探させていたんだよ」
「あ、それで……、アンタさっきいきなり来たんだ……」
「そう、こちらの離宮のほうへ向かったと女官が言っていてね。……従兄殿に会わせたくはなかったし、それに、この庭や離宮は限られた一部の人間以外は立ち入り禁止だからね。部下の誰かをここに寄こすわけにはいかなかったから、直接私が君を探しに来たというわけだ」
「そうだったんだ……」
「ということで納得したかい?では、魔女らしき女性も姿を現したことだし、皆で対策会議といこうではないか」
ロイはエドワードにすっと手を差し出した。
「行こう、エドワード。魔女の呪いなどさっさと打ち破ってしまおう」
手を繋げと言うことだとエドワードにもわかった。けれど、差し出されたロイの手に自分の手を重ねることには躊躇した。
かと言って、差し出された手を無視するのも、それを叩くのも、違うと思われた。
逡巡した結果、とりあえずの妥協だと、自分に言い訳をして、エドワードはそっとロイの上着の裾を掴んでみた。
ロイはちらとだけエドワードを見たが、何も言わずにゆっくりと歩き出した。
エドワードはそのロイにつられる形でロイについて行く。
耳が、熱い。
顔が上げられない。
掴んでいるロイの上着の裾を凝視するけれども、その指を離すことが出来ずにいる。
先ほど見た女が本当に魔女なのかどうか、魔女ならば対策を考えなければいけないと思うのだけれども、思考が動かない。
オレは……いったいどうしちまったんだ……?
ぐるぐると考えるがわからない。
つい先ほどまでは、世界は単純だった。
大事なのはリゼンブールに居る母とアルフォンス。
普通に、幸せに暮らしていて何も不満など無い。
男として過ごしてきて、いきなり実は女などと言われても、自分は男だとしか思えなかった。
魔女の呪いなど、蹴散らして、さっさと元の生活に戻るつもりだった。
もちろん男の自分に対して、出合い頭にいきなりプロポーズなどしてきたロイなど眼中になかった。
なのに、どうしてなのか、自分から腕を伸ばして抱きとめてしまった。
今も、ロイの手など握れないのに、服の裾を掴んだまま、黙々とロイについて歩く。
耳が、熱い。
顔も、きっと真っ赤で。
なのに、それが不快ではないのだ。
なんだよこれ……。
わからないわからないと、エドワードはただそれだけど心の中で繰り返していた。
どうして、どうして……と。
しかし、それはロイの耳にもエドワードの耳にも届かなかった。
いや、誰の耳にも届きはしなかっただろう。
女の声は、風に揺れただけだ。
そして、その姿も。
ゆらり、と。
まるで陽炎のように。
女の姿が歪む。
静かに。
歪んで。
消え去るその寸前に、ロイが顔を上げた。
陽炎のような女に、ロイの身体が一瞬硬くなる。
エドワードを抱きしめたまま、ロイは女を見た。
女は、ロイを見ていた。そして、その腕の中のエドワードを。
「どうして……なの?」
女の声は、音声としてはロイの耳には届かなかった。
音声と、しては。
ただ、唇の動きから、ロイは女が何を発したのかがわかった。
「『どうして』……とは何だ?」
ロイは女に聞いた。
「え?」
答えたのはエドワードだった。
「何?」
ロイから発せられた言葉の意味がわからなくて顔を上げる。
「エド……、彼女が見えるか?」
「彼女?」
「そう……、彼女、だ」
ロイが指さした、その先をエドワードの視線が追った。
「え……?」
確かに女がいた。長い黒髪に、黒のドレス。瞳までもが黒だった。その対比のように、肌は透けるように白い。
いや、実際に、女の姿は透けていた。
実在する人間ではないことは一目瞭然だった。
叫びたい気持ちを抑えて、エドワードはその女を凝視する。
ゆっくりと、抑えた声で、女に尋ねる。
「アンタ……、誰だ?……っつうかナニモン?」
女は口を開きかけ、そうして、そのまま風にかき消されたように、その姿は霧散した。
「あれ……、なに?アンタの知り合い?」
エドワードはロイを見る。
「そう聞くということは君の知り合いでもない……のだね?」
「……ユーレイみたいに姿を消すことができる人間なんて知らねえぜ。リゼンブールの魔女でもそんな芸当出来るのいねえし……」
「私も同様だが……」
「この王宮に住みついているユーレイとか?」
「その手の怪談は古い城には付き物だが……、従兄殿の離宮の近くでは怪談などなかったはずだ」
「じゃ、あれ、今の誰っつうか……何?」
「わからん。ただあの女性は我々に向かって『どうして』という言葉を発していたが……」
「『どうして』?何がどうしてなんだか……?」
「我々がこうして抱きあっている姿を見て『どうして』と言ったのだから、『どうして抱きしめあっているのか』と聞きたかったのかもしれないが……」
「だき……って、う、わあああああああああっ!」
エドワードはロイの背に手を回していたことに、今、ここで、初めて気がついたかのように焦った。そしてそのまま全力でロイから飛び退る。
「おや、そこまで照れずとも……」
「あ、あのそのこれは違くてっ!」
ロイに抱きしめられるだけならともかく。自分からロイの背中に腕を伸ばして抱きついてしまっていたのだ。
エドワードは、両手をわきわきと無意味に動かしながら、違う違うと繰り返した。
顔から首から全身に至るまで真っ赤に茹で上がってしまった。
汗も、噴き出してくる。
熱くて汗が出るのか、それともこれは冷や汗なのか、それすら分からない。
……な、なんでオレは、自分からコイツに抱きついちまったりしちまったんだろう……。
自分の気持ちがわからない。
照れているわけではないが、何やら恥ずかしいことは確かで。
恥ずかしいと言うか、何故、どうして自分は、ずっとロイの背に手を回してしまったんだろう。どうしてそのままずっと静かに身体を密着させたままでいたんだろう。
エドワードは焦りながらも自身に問うが、自分の心の中にその明確な答えは見つからなかった。
しかし、ロイはエドワードの現状も心情も追い詰める気はさらさらないらしい。
「私の知り合いでも君の知り合いでもない上に、まるで幽霊のように姿を消すことができる女性……」
ロイは腕を組みながら、女の消えた空間を凝視する。
「……まさかとは思うが彼女がそうか?」
眉間の皺が深くなった。
「え、アンタ今の人の正体とかわかったとか?」
「単なる推測にすぎないが……」
「何だよもったいぶってねえでわかったんなら教えやがれ」
未だ赤い顔を誤魔化すように、エドワードは乱暴な口調で問う。
「……あれが『最悪の魔女』ではないかと」
「え、あ、今の……が?」
「ああ……。根拠はない。確証もない。が……」
「『が』?その続きは?」
「……君とアルフォンスの寿命が尽きるまで、もうそれほど時間はないだろう?そろそろ魔女が姿を現してもいい頃ではないかと思っただけだよ」
「あ……、そっか。いきなり何の前触れもなくオレもアルも死ぬってわけじゃないもんな……多分、だけど」
「君、確かリゼンブールで魔女について聞いてまわっていたのだろう?彼女の容貌などはどうだったかとか知っているかね?」
「あ、そっか……。魔女と直接戦ったばっちゃん達に聞いた……。黒髪で黒い瞳でスレンダーな美人だったって」
「ふむ……。今消えた女性と特徴的には一致するか」
「じゃ、あれ、やっぱり……」
「魔女の可能性は高いな」
「そっか……」
あれが、魔女。
自分とアルフォンスを死に向かわせているもの。
「まあ、魔女であると仮定をしてみるか……。では次にやるべきことは決まったな」
ぼそりと、ロイが独り言のように告げた。
「え、やるべきことって……」
「エド、君、死ぬ気はないんだろう?」
「当然」
何を今更あたりまえのことを聞くのかと、エドワードの表情が語った。
「もう一つ問うが、私と恋に堕ちる気は?」
「え、えええええええええっ!」
ようやく落ち着きかけた心臓の鼓動がばくんっと高鳴って、そうして再度エドワードは真っ赤になった。
「ちょ、待て待て待て……、そ、それと、魔女と何の関係が……」
ロイは一瞬だけ口角をあげた。が、即座にこれ以上もなく真剣な表情を敢えて浮かべてみた。
最初に出会ってプロポーズをした時は、ロイなど意にも解していなかったエドワードがここまで反応を見せたことに内心ロイはほくそ笑んでいたのだ。が、ここでそれを態度に出して全てを台無しにするロイではない。
「関係あるとも。我々は運命の相手なのだし、呪いに打ち勝つのは愛の力なのだろう?君がその気になってくれれば嬉しいし、そうでないのなら、魔女が我々の前に姿を現してくれたのは、状況を打破するためには好都合だしね」
ただ他意の無いようにと、淡々と告げる。
「え……?好都合ってなんだよ」
ロイはゆっくりとエドワードの瞳を覗きこんで、そして囁くように甘く告げた。
「それとも……私と恋に堕ちてみるかいエドワード?」
「ちょ、ちょっと待てえええええええっ!」
驚愕の叫びに、ロイはあはははと笑う。
「ああ、安心したまえエドワード。いきなり襲ったりはしないから」
「襲……っ!」
「合意ではないと意味はないからね。さ、行こうか」
「い、行くってどこに……」
「私の執務室に。きっと今頃アルフォンスも誰かに連れてきてもらっているだろうし、私の部下も、私が君を連れて帰るのを待っている」
「へ……?アル?アンタの部下?」
決して思考が鈍重なわけではないエドワードではあったが、この時はロイに振り回されていた。しかし、振り回されていることすらエドワードは気がついていなかった。
「そう……そろそろ本格的に魔女への対策を練らんといかんなと思ってだね。君達を呼びに行ったら部屋にも書庫にもいないものでね。君達を皆に探させていたんだよ」
「あ、それで……、アンタさっきいきなり来たんだ……」
「そう、こちらの離宮のほうへ向かったと女官が言っていてね。……従兄殿に会わせたくはなかったし、それに、この庭や離宮は限られた一部の人間以外は立ち入り禁止だからね。部下の誰かをここに寄こすわけにはいかなかったから、直接私が君を探しに来たというわけだ」
「そうだったんだ……」
「ということで納得したかい?では、魔女らしき女性も姿を現したことだし、皆で対策会議といこうではないか」
ロイはエドワードにすっと手を差し出した。
「行こう、エドワード。魔女の呪いなどさっさと打ち破ってしまおう」
手を繋げと言うことだとエドワードにもわかった。けれど、差し出されたロイの手に自分の手を重ねることには躊躇した。
かと言って、差し出された手を無視するのも、それを叩くのも、違うと思われた。
逡巡した結果、とりあえずの妥協だと、自分に言い訳をして、エドワードはそっとロイの上着の裾を掴んでみた。
ロイはちらとだけエドワードを見たが、何も言わずにゆっくりと歩き出した。
エドワードはそのロイにつられる形でロイについて行く。
耳が、熱い。
顔が上げられない。
掴んでいるロイの上着の裾を凝視するけれども、その指を離すことが出来ずにいる。
先ほど見た女が本当に魔女なのかどうか、魔女ならば対策を考えなければいけないと思うのだけれども、思考が動かない。
オレは……いったいどうしちまったんだ……?
ぐるぐると考えるがわからない。
つい先ほどまでは、世界は単純だった。
大事なのはリゼンブールに居る母とアルフォンス。
普通に、幸せに暮らしていて何も不満など無い。
男として過ごしてきて、いきなり実は女などと言われても、自分は男だとしか思えなかった。
魔女の呪いなど、蹴散らして、さっさと元の生活に戻るつもりだった。
もちろん男の自分に対して、出合い頭にいきなりプロポーズなどしてきたロイなど眼中になかった。
なのに、どうしてなのか、自分から腕を伸ばして抱きとめてしまった。
今も、ロイの手など握れないのに、服の裾を掴んだまま、黙々とロイについて歩く。
耳が、熱い。
顔も、きっと真っ赤で。
なのに、それが不快ではないのだ。
なんだよこれ……。
わからないわからないと、エドワードはただそれだけど心の中で繰り返していた。
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