小説・2

BL二次創作&創作。18歳未満の方はお戻りください。無断転載厳禁です。
茫然としていた時間は一体どのくらいなのか。
それすら分からないほどにエドワードは動揺していた。
「ええと……。運命の、ひと……アルフォンスの」
とりあえず、口に出してみた。
そう、アルフォンスは自分の運命の相手を探すと言って出ていったのだ。
恋愛というものを知らない自分達が、恋愛というものを知るために、運命の相手を探す。
いや、恋愛、ではない。魔女の呪いを解いて、このまま自分だちが男として普通に人生を過ごしていくための方法を探すということのはずだった。そのためにイーストエンドの王宮などにまでやって来たのではなかったのか。
しかし、だ。
「アルの、運命の相手って……」
エドワードはその先を口にしたくはなかった。
認めたくはないが、自分の運命の相手はロイ・マスタングという男、らしい。
男である自分の相手が男とはふざけるなと言いたいところだが、なにしろ、アルフォンスの占いも母の占いも外れたことはないのだ。
だがら、認めるのが非常に苦痛を伴ってしまうのだが、自分の相手はそのロイとかいう殿下であるということは、認めざるを得ない。
「だけど、……アル」
だけど、なのである。
「当然、なんだけど……」
アルフォンスの運命の相手。それももしかしたら男ではないのだろうか?
さああああああ、と。今まで呆けていたエドワードの顔が一瞬にして真っ青になった。
「アルの、相手が……アルの相手が……」
可愛い女の子であるのならば別に何も問題はない。
自分より先にカノジョなんか作りやがって、と顰め面をするかもしれないがまあいい。
しかし。
「『――兄さん、あのさ、この人が僕のカレシ。』……っとかアルがどっかの男とか連れてきたら、きたら……」
うわああああああああっ!止めろアルっ!早まるなっ!!
雄叫びをあげて、エドワードはアルフォンスの後を追いかけたのであった。


だがしかし、王宮は広い。
とてつもなく広いのだ。
しかも、入り組んだ作りになっている。
「アールーううううう。どこ行っちまったんだよ……」
しかもどこか明確な目的地があるわけではないのだ。アルフォンスが今どこにいるのかなどはわからない。
結果として、エドワードはアルフォンスを探すのではなく、ふらふらと王宮内を彷徨っているような状況になっていたのである。
そして当然のことながら、迷子となった。
「ここ……どこ、だ……」
せめて警備の兵士か誰かがいれば現在地くらいは聞くことができるのにと思ったが、現状、付近には誰もいない。窓の外から聞こえてくる音と言えば風のざわめきや鳥の声のみだ。人の気配はない。静か、その一言に尽きる。呼吸の音さえ周りに響いてしまいそうなほどだ。
エドワード自身の立てる足音がその静寂を破ってしまいそうで、足音を立てないように忍び足で歩く。
磨きこまれた大理石の階段を下り、突きあたりの扉をそっと開く。
「うわ……」
扉の外に広がっていたのは中庭らしき場所だった。中庭と言ってもかなり広い。樹木や草花、石や水などを組み合わせて作る風景庭園のようなもので、真正面には美しく形作られた池がある。池の周りに抽水植物が配されて、池の水面にはスイレンが花を咲かせている。その池の水面には空の青色と雲の白が映っていた。
「ええと、こーゆーのって確かウォーターガーデンとかって言うんだったけ?それともウォーターテラスとかだっけ?」
あいにくエドワードには造園関係の知識はあまりない。ないからこそテンプレートな発想ではあるが、まるでモネの絵画のような雰囲気だな、などとエドワードは思う。
「観光地の庭とかってこーゆー感じなのかな?」
のんびりと散策をするのに向いているような気がして少しだけエドワードの肩から力が抜けた。
辺りを見回しながら深呼吸をする。すると花の匂いがした。
「ええと、どっかに花壇とかでもあんのか?」
どうせ迷子状態で現在位置不明なのだからと、寧ろ開き直ってその花の香りを辿ってみることにした。池の周りを巡ってから、広い芝生を少し進むと薔薇のアーチが見えてきた。
「うっし、とりあえずあっち行ってみっかっ!」
アルフォンスが運命の相手を探すのであれば、薔薇のアーチをくぐってその先の秘密の花園のようなところに行くのではないか、などと勝手に想像してエドワードは思わず笑いを浮かべてしまった。
「まー、あいつ結構そーゆーの好きだからなー」
気を良くしてずんずん進んで行けば、薔薇の咲き乱れる庭とその奥にひっそりとした邸宅のようなものが見えた。
「離宮……?」
ひっそりと、薔薇の陰に隠れるように佇むようなこじんまりとした屋敷である。
「誰か、居んのかな……?」
使用人の家というのは立派すぎる。静養もしくは避暑や避寒のために造られたものだろうと、エドワードは推測した。避暑や避寒のための屋敷であれば今の季節は無人という可能性もある。
「ええとすみません。どなたかいらっしゃいますかー」
あっさりとアルフォンスが見つかるわけはなくとも、誰かがいればとりあえず現在位置くらいはわかるだろうと思って、とりあえず声を出しみる。
「居ねえかなー」
誰もいないのであれば仕方がない。来た道を戻るというのは少々性格的には向いていないのだがこの離宮はきっと行き止まりだろうと思って、くるりと背を向けた。
「しっかたねえ、戻るか……」
先ほど通って来たウォーターガーデンのほうまで引き返そうと歩み出した途端に「誰だ、お前は」という誰何の声がかけられた。


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