小説・2
BL二次創作&創作。18歳未満の方はお戻りください。無断転載厳禁です。
その鋭い口調から咎められているのがわかった。だが、エドワードは気にもしなかった。誰か人がいるのならば現在位置が判明するだろうから、寧ろラッキーだと思い、声の主をきょろきょろと探した。
が、視界の範囲内には誰もいない。
するとまたもや声だけが、した。
「誰の許可を得て私の庭に入りこんだ?」
しわがれて、険のある声だ。どうやら声の主は男らしい。
「答えよ、何者だ」
もしや建物の中に誰かが居てそこから自分に声をかけたのかと思い、離宮と思しきその建物を探ってみれば、一階の窓が一つだけ開いていた。
「すみません、オレ、道に迷ってここまで入りこんじまっただけで……」
とりあえず謝るだけ謝って、道を教えてもらおう。そう思ってエドワードはその窓に向かって駆けだした。そして、背伸びをして少々高い位置にある窓のから部屋の中を覗き込んでみた。
一人の男が寝台に横たわって、エドワードを睨みつけていた。まるでミイラか幽鬼のような男である。こけた頬、薄い頭髪。腕などは骨に皮が張り付いているだけのようで肉などは全く感じられない。だが、生きている人間だという証拠のように漆黒の瞳だけが爛々と輝いている。
「何者か、と、重ねて問わねばならんのか?」
声に怒気が混じる。エドワードは、どうやら隠居した偏屈爺さんの館にでも入りこんじまったんだな、と心の中で思いながらもう一度すみませんと声に出した。
「ええと、オレはエドワードと言います。エドワード・エルリック……です。先日からこの王宮で世話になってて……」
言いかけたエドワードの声は男によって遮られた。
「ああ……、ロイの客かキサマは」
咎める、というよりも虫けらに対する蔑みの声だと感じた。
「よくもまあこの私の前に恥ずかしげもなく顔を見せられるものだ……」
エドワードに聞かせるというよりはむしろ独白に近い言葉だったが、嘲られているのははっきりとわかった。
「えっと、そう言うアンタ、誰?」
年長者に対する礼を知らないわけではないが、こんな態度を取る相手に礼を尽くす気もなく、エドワードも男を睨みつけた。道を尋ねる気なども失せていた。が、男はますます機嫌を悪くしたらしい。
「私が誰かだと……?ふん、礼儀を知らんガキだな。キサマのような下賤の者などとこの私が口を聞くなど汚らわしい。とっとと去れ」
「な……っ!」
確かに勝手に他人の庭に入ってしまったのも悪いのかもしれないが、それにしてもこの言い草はないだろうと、思わずエドワードは激昂した。いっそ窓など乗り越えてやろうかと窓の桟に足をかけようとしたところで、背後から誰かに肩をポンと叩かれた。
「乗り越えていってはいけないよ、エドワード」
振り向いてみるとそこにいたのはロイであった。
「アンタ……」
「こんなところにまで迷い込むとはな……。戻るぞ」
言いながら、ロイはエドワードを窓枠から引きはがした。そして、そのままひょいと抱きあげる。
「ちょ、待て。オレはあの野郎に一言くらい言ってやり……」
「失礼しました従兄殿。これは連れて帰りますので、ご容赦を」
エドワードが言葉を発しきらないうちに、その言葉を遮るように、ロイが室内の男に向かって会釈をした。
「い、とこ……?」
ロイと、室内の男を交互に見る。
言われてみれば似ているような気もするが、従兄という割には年が離れすぎているような気もしないでもない。が、それ以上に男がロイを見つめる視線が気になった。
エドワードに対する態度も侮蔑や嘲りというものであったが、ロイに対するこの視線はそれを上回る。
はっきりとした敵意がそこにあると、エドワードには感じられた。
男はもうエドワードなど寒中にないとばかりにロイのみを忌々しそうに睨め付ける。
「……久しいな、ロイ」
「ご無沙汰しております。お加減はいかかでしょうか?」
ふん、と男は喉を鳴らした。
「この通り健勝だとも。……私が生きているうちはお前に王位など継がせんからな」
「女王陛下ももうそろそろ体力に限界を感じていらっしゃるようですし、私が王位を継ぐ日も近いかと存じますが?」
男がロイを睨みつける力を増した。視線で、射殺すとばかりに。目の奥にあるのは凄まじいほどの嵐。それが荒れ狂っている。
「私のものは何一つキサマなどにやるものか……っ!」
喉の奥から絞り出された声。
まるで地の底から湧き上がってくる呪いの声のようだ。別に恐怖などは感じはしないが、こんな視線や声を浴びせられれば不快に感じる。
けれど、ロイはそんな男の態度などまるで気にもしていないように涼やかな顔をしたままだった。
「王位は従兄殿の私物ではなく、現状この私が王位継承者として女王からの指名を受けております。ですが、従兄殿がそう仰るのならばせいぜい長生きをしていただきましょうか。……貴方がお亡くなりになったその後即座に私が王位を継承いたします。それでよろしいですね?」
笑顔のまま冷やかに、ロイは告げた。
男は、激怒を通り越して憤怒の表情になっている。
エドワードは男に対する激昂など忘れてロイを見やる。こんなに冷たいロイの声など今まで聞いたことはなかった。それほど長い付き合いではないが、しかし市場に連れて行ってもらった時など誰に対しても穏やかな顔を向けていた。いや、いつでもにこにこと笑顔を振りまいていたわけではないが、それで誰かに対してこれほど冷たい温度の言葉を告げる人間ではないと、エドワードはロイを認識をしていた。
「死ぬものか……」
「では気力を振り絞って生にしがみ付いていただきましょう。それでは失礼いたします」
ロイは男に背を向ける。
「あ、おい、ちょっと……っ!」
抱きあげられたままのエドワードはじたばたとロイの腕の中で暴れてみたが、ロイはそんなエドワードを抑えつけ、スタスタと進む。離宮から去り、先ほどエドワードが通って来たウォーターガーデンに到達するまでロイは一言も口を聞かないままだった。
が、視界の範囲内には誰もいない。
するとまたもや声だけが、した。
「誰の許可を得て私の庭に入りこんだ?」
しわがれて、険のある声だ。どうやら声の主は男らしい。
「答えよ、何者だ」
もしや建物の中に誰かが居てそこから自分に声をかけたのかと思い、離宮と思しきその建物を探ってみれば、一階の窓が一つだけ開いていた。
「すみません、オレ、道に迷ってここまで入りこんじまっただけで……」
とりあえず謝るだけ謝って、道を教えてもらおう。そう思ってエドワードはその窓に向かって駆けだした。そして、背伸びをして少々高い位置にある窓のから部屋の中を覗き込んでみた。
一人の男が寝台に横たわって、エドワードを睨みつけていた。まるでミイラか幽鬼のような男である。こけた頬、薄い頭髪。腕などは骨に皮が張り付いているだけのようで肉などは全く感じられない。だが、生きている人間だという証拠のように漆黒の瞳だけが爛々と輝いている。
「何者か、と、重ねて問わねばならんのか?」
声に怒気が混じる。エドワードは、どうやら隠居した偏屈爺さんの館にでも入りこんじまったんだな、と心の中で思いながらもう一度すみませんと声に出した。
「ええと、オレはエドワードと言います。エドワード・エルリック……です。先日からこの王宮で世話になってて……」
言いかけたエドワードの声は男によって遮られた。
「ああ……、ロイの客かキサマは」
咎める、というよりも虫けらに対する蔑みの声だと感じた。
「よくもまあこの私の前に恥ずかしげもなく顔を見せられるものだ……」
エドワードに聞かせるというよりはむしろ独白に近い言葉だったが、嘲られているのははっきりとわかった。
「えっと、そう言うアンタ、誰?」
年長者に対する礼を知らないわけではないが、こんな態度を取る相手に礼を尽くす気もなく、エドワードも男を睨みつけた。道を尋ねる気なども失せていた。が、男はますます機嫌を悪くしたらしい。
「私が誰かだと……?ふん、礼儀を知らんガキだな。キサマのような下賤の者などとこの私が口を聞くなど汚らわしい。とっとと去れ」
「な……っ!」
確かに勝手に他人の庭に入ってしまったのも悪いのかもしれないが、それにしてもこの言い草はないだろうと、思わずエドワードは激昂した。いっそ窓など乗り越えてやろうかと窓の桟に足をかけようとしたところで、背後から誰かに肩をポンと叩かれた。
「乗り越えていってはいけないよ、エドワード」
振り向いてみるとそこにいたのはロイであった。
「アンタ……」
「こんなところにまで迷い込むとはな……。戻るぞ」
言いながら、ロイはエドワードを窓枠から引きはがした。そして、そのままひょいと抱きあげる。
「ちょ、待て。オレはあの野郎に一言くらい言ってやり……」
「失礼しました従兄殿。これは連れて帰りますので、ご容赦を」
エドワードが言葉を発しきらないうちに、その言葉を遮るように、ロイが室内の男に向かって会釈をした。
「い、とこ……?」
ロイと、室内の男を交互に見る。
言われてみれば似ているような気もするが、従兄という割には年が離れすぎているような気もしないでもない。が、それ以上に男がロイを見つめる視線が気になった。
エドワードに対する態度も侮蔑や嘲りというものであったが、ロイに対するこの視線はそれを上回る。
はっきりとした敵意がそこにあると、エドワードには感じられた。
男はもうエドワードなど寒中にないとばかりにロイのみを忌々しそうに睨め付ける。
「……久しいな、ロイ」
「ご無沙汰しております。お加減はいかかでしょうか?」
ふん、と男は喉を鳴らした。
「この通り健勝だとも。……私が生きているうちはお前に王位など継がせんからな」
「女王陛下ももうそろそろ体力に限界を感じていらっしゃるようですし、私が王位を継ぐ日も近いかと存じますが?」
男がロイを睨みつける力を増した。視線で、射殺すとばかりに。目の奥にあるのは凄まじいほどの嵐。それが荒れ狂っている。
「私のものは何一つキサマなどにやるものか……っ!」
喉の奥から絞り出された声。
まるで地の底から湧き上がってくる呪いの声のようだ。別に恐怖などは感じはしないが、こんな視線や声を浴びせられれば不快に感じる。
けれど、ロイはそんな男の態度などまるで気にもしていないように涼やかな顔をしたままだった。
「王位は従兄殿の私物ではなく、現状この私が王位継承者として女王からの指名を受けております。ですが、従兄殿がそう仰るのならばせいぜい長生きをしていただきましょうか。……貴方がお亡くなりになったその後即座に私が王位を継承いたします。それでよろしいですね?」
笑顔のまま冷やかに、ロイは告げた。
男は、激怒を通り越して憤怒の表情になっている。
エドワードは男に対する激昂など忘れてロイを見やる。こんなに冷たいロイの声など今まで聞いたことはなかった。それほど長い付き合いではないが、しかし市場に連れて行ってもらった時など誰に対しても穏やかな顔を向けていた。いや、いつでもにこにこと笑顔を振りまいていたわけではないが、それで誰かに対してこれほど冷たい温度の言葉を告げる人間ではないと、エドワードはロイを認識をしていた。
「死ぬものか……」
「では気力を振り絞って生にしがみ付いていただきましょう。それでは失礼いたします」
ロイは男に背を向ける。
「あ、おい、ちょっと……っ!」
抱きあげられたままのエドワードはじたばたとロイの腕の中で暴れてみたが、ロイはそんなエドワードを抑えつけ、スタスタと進む。離宮から去り、先ほどエドワードが通って来たウォーターガーデンに到達するまでロイは一言も口を聞かないままだった。
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