小説・2
BL二次創作&創作。18歳未満の方はお戻りください。無断転載厳禁です。
行動あるのみ。
確かにそう思った。納得もした。
だから、今日一日、ロイというものに真正面からぶつかってみようと思った。
恋であっても恋でなくとも、自分が納得できるように行動するしかないのだ……と。
行動した結果、見えてくるものがあるはずだと。
「……思ったけど、さ」
思わずぼそりとエドワードは呟いた。
――ぶつかるんじゃなくて、抱きすくめられて身動きがとれねえってのはどういうことだっ!
盛大に、文句を言いたかった。
言わなかったけれど。
なにせ、大声など出したらきっとロイは起きてしまう。
今のロイは、すうすうと寝息を立てて、非常に気持ち良く熟睡しているのだ。
ただし、エドワードを抱きしめて。
事の起こりはと言えば、数刻前。
デートのために、アルフォンスを迎えに来たホークアイがエドワードに困ったように告げたのだ。
「ごめんなさいねエドワード君。殿下は……ちょっと昨夜遅くて、というよりも先ほどまで起きていらっしゃって。エドワード君と出かけるまで少しだけ仮眠をとるとおっしゃってて。そろそろ起きられると思うのだけど、出来ればぎりぎりまで寝かせて差し上げたいのよ。でも、殿下ご自身がご自分で起きていらっしゃるまで放置しておいたら夕方になるでしょうし……。エドワード君自由に殿下の居室に入ってもいいって殿下も仰られたから。悪いけど、起こしてくれるかしら?」
と。
まあ、眠いのならば気の済むまで寝てればいいじゃねえかともエドワードは思ったが、いかんせん、それではせっかくの「ロイに真正面からぶつかってみよう」という決意が無駄になる。
ただでさえ時間がない。
それに思いたったら吉日という言葉もある。
眠いのは少しばかり可哀想とは思いながら、エドワードはさっさとロイを起こしてしまおうと、ロイの寝室へと向かった。
そして、寝室の、その寝台の上で気持ちよさげに眠っているロイを前にして、エドワードは硬直した。
「どうしろっつーんだこんなの……」
エドワードはロイの寝台の横で立ちつくしてしまった。
こんなものを起こせとはなんて無茶な、と思った。
ホークアイに頼んで起こしてもらえないかとも思ったが、既に彼女はアルフォンスとの「デート」に出かけてしまった。
そして、仮にも「殿下」の寝室に、勝手に入れるような人間はいない。
ここは自分が起こすしかないのだ、と思いエドワードはぐっと握りこぶしを固めるが、声など掛けることができない。
あまりにも、無防備。
あまりにも、整った顔。
カーテンの隙間から零れる朝日が、さらにロイの顔にコントラストを作っている。
少しだけ通ったセントラルの学校。女子の制服を来て通ったのは記憶から削除してしまいたいが、そこで受けた授業では興味深いことがらも多々あった。
授業の内容は、それまでリゼンブールでは受けたことのない内容で、学問として純粋に楽しかった。その、授業内容を思い出す。
古代ギリシアの哲学者たちは美術というものを「熟練した洞察力と直感を用いた美的な成り行き」として定義しており、そこで、絶対的な美の基本というのは「見るものをどれくらい感動させられるか」、という点にあるということだった。
その結果、ギリシアの芸術作品は、完璧な美を備えている神々の姿をとった彫刻が多いのだと。
その時に見たそのギリシャ彫刻の数々の写真。
それと同じような、いや、それ以上完璧に整った絶対的な美というのがこれではないか……。
感動を覚えてしまうほどの、整った顔。
目が離せないほどの、容貌。
それが寝顔として今ここにある……。
無造作に起こせるかというのだこんなモノっ!
エドワードは無理矢理にロイの寝顔から眼を逸らした。
顔だけなら文句なしの男前……ということを認めるのはやぶさかではない。
確かに美形というか男前だ。
そのくらいは客観的な事実として認めることができる。
出来るが……。
チラリと横眼でもう一度ロイを見る。
そしてため息をついた。
こんなのどうしろっていうんだよっ!
起こせるか触れられるかそんなん無理っ!
ぎゃーっと。声にならない叫びをエドワードは全身で発していた。
頭をがりがりと掻いて、せっかくの天使のような金の髪が乱れに乱れた。
エドワードの恐慌状態が伝わったのか、ロイはうっすらと目を開けた。
「う……ん?エド…ワード?」
寝起きの掠れた声はいつもよりほんの少しだけ低く。
けれど、その声で呼ばれた名はどこか甘く響く。
エドワードの心臓が「ばくん」と跳ねる。
「う、わああああそのあのこれは、ええと、リザさんっ!リザさんにアンタのこと起こせって言われて、そんで、ええと……っ!」
「ああ……すまないね……。昨夜遅くて、というより、今朝がたまで書類の処理に追われてねえ……」
ふああ、とあくびをするロイにエドワードは「そそそそそそうかっ!」と裏返った声を出した。
「じゃ、じゃあ、アンタと出かけるの延期とかでアンタはもうちょと寝てていいからっ!」
ぜいぜいと、必死になってエドワードは怒鳴る。
怒鳴らなければ声など出せない。
まだ半分寝ボケているロイはまるで年下の子どものように、ややぼんやりとした表情をエドワードに向けている。
その無防備さに、ますますエドワードの心臓が掴まれたようにぎゅうぎゅうと音を立てる。
「ああ……もう少しだけ、眠ってもいいかい……」
「もももももももちろん寝ろよっ!」
「ありがとう……すまないね」
にこお、と恐ろしく無防備な笑顔だった。
何も作っていない、ロイの素顔なのではと思った途端にまたもやエドワードの心臓は跳ねまくる。
最早ビックウェーブの上で踊るラインダンスだ。などとわけのわからないことを考えつつ、
「いいいいいいいいいいいいっから寝ろっ!!」
と、ぜいぜいと息も荒く、叫ぶのが精いっぱいであった。
そんなエドワードの心情を知ってか知らずか、ロイはゆっくりと手を伸ばし。
エドワードの腕を掴み。
エドワードの小さな身体を引き寄せて、抱き枕のように抱え込んだのであった。
「ではおやすみ……」
ちょっと待てっ!
一人で寝ろっ!
オレをまくら代わりにするな抱きしめんなっ!
エドワードは叫びたかった。
が、声が出ない。
口はパクパクと開け閉めを繰り変えずがそれだけだ。
実に至近距離にある、ロイの破壊力のある男前の顔。
――ち、近い近い近い近い離せええええええ。
が、叫ぶことなど到底できない。
息を呑んでその寝顔を見つめているしか出来ない。
エドワードは、だらだらと汗をかきながら、身じろぎ一つ出来ないで、そのままロイに抱きしめられたまま、硬直状態を維持する以外何もできはしなかった。
確かにそう思った。納得もした。
だから、今日一日、ロイというものに真正面からぶつかってみようと思った。
恋であっても恋でなくとも、自分が納得できるように行動するしかないのだ……と。
行動した結果、見えてくるものがあるはずだと。
「……思ったけど、さ」
思わずぼそりとエドワードは呟いた。
――ぶつかるんじゃなくて、抱きすくめられて身動きがとれねえってのはどういうことだっ!
盛大に、文句を言いたかった。
言わなかったけれど。
なにせ、大声など出したらきっとロイは起きてしまう。
今のロイは、すうすうと寝息を立てて、非常に気持ち良く熟睡しているのだ。
ただし、エドワードを抱きしめて。
事の起こりはと言えば、数刻前。
デートのために、アルフォンスを迎えに来たホークアイがエドワードに困ったように告げたのだ。
「ごめんなさいねエドワード君。殿下は……ちょっと昨夜遅くて、というよりも先ほどまで起きていらっしゃって。エドワード君と出かけるまで少しだけ仮眠をとるとおっしゃってて。そろそろ起きられると思うのだけど、出来ればぎりぎりまで寝かせて差し上げたいのよ。でも、殿下ご自身がご自分で起きていらっしゃるまで放置しておいたら夕方になるでしょうし……。エドワード君自由に殿下の居室に入ってもいいって殿下も仰られたから。悪いけど、起こしてくれるかしら?」
と。
まあ、眠いのならば気の済むまで寝てればいいじゃねえかともエドワードは思ったが、いかんせん、それではせっかくの「ロイに真正面からぶつかってみよう」という決意が無駄になる。
ただでさえ時間がない。
それに思いたったら吉日という言葉もある。
眠いのは少しばかり可哀想とは思いながら、エドワードはさっさとロイを起こしてしまおうと、ロイの寝室へと向かった。
そして、寝室の、その寝台の上で気持ちよさげに眠っているロイを前にして、エドワードは硬直した。
「どうしろっつーんだこんなの……」
エドワードはロイの寝台の横で立ちつくしてしまった。
こんなものを起こせとはなんて無茶な、と思った。
ホークアイに頼んで起こしてもらえないかとも思ったが、既に彼女はアルフォンスとの「デート」に出かけてしまった。
そして、仮にも「殿下」の寝室に、勝手に入れるような人間はいない。
ここは自分が起こすしかないのだ、と思いエドワードはぐっと握りこぶしを固めるが、声など掛けることができない。
あまりにも、無防備。
あまりにも、整った顔。
カーテンの隙間から零れる朝日が、さらにロイの顔にコントラストを作っている。
少しだけ通ったセントラルの学校。女子の制服を来て通ったのは記憶から削除してしまいたいが、そこで受けた授業では興味深いことがらも多々あった。
授業の内容は、それまでリゼンブールでは受けたことのない内容で、学問として純粋に楽しかった。その、授業内容を思い出す。
古代ギリシアの哲学者たちは美術というものを「熟練した洞察力と直感を用いた美的な成り行き」として定義しており、そこで、絶対的な美の基本というのは「見るものをどれくらい感動させられるか」、という点にあるということだった。
その結果、ギリシアの芸術作品は、完璧な美を備えている神々の姿をとった彫刻が多いのだと。
その時に見たそのギリシャ彫刻の数々の写真。
それと同じような、いや、それ以上完璧に整った絶対的な美というのがこれではないか……。
感動を覚えてしまうほどの、整った顔。
目が離せないほどの、容貌。
それが寝顔として今ここにある……。
無造作に起こせるかというのだこんなモノっ!
エドワードは無理矢理にロイの寝顔から眼を逸らした。
顔だけなら文句なしの男前……ということを認めるのはやぶさかではない。
確かに美形というか男前だ。
そのくらいは客観的な事実として認めることができる。
出来るが……。
チラリと横眼でもう一度ロイを見る。
そしてため息をついた。
こんなのどうしろっていうんだよっ!
起こせるか触れられるかそんなん無理っ!
ぎゃーっと。声にならない叫びをエドワードは全身で発していた。
頭をがりがりと掻いて、せっかくの天使のような金の髪が乱れに乱れた。
エドワードの恐慌状態が伝わったのか、ロイはうっすらと目を開けた。
「う……ん?エド…ワード?」
寝起きの掠れた声はいつもよりほんの少しだけ低く。
けれど、その声で呼ばれた名はどこか甘く響く。
エドワードの心臓が「ばくん」と跳ねる。
「う、わああああそのあのこれは、ええと、リザさんっ!リザさんにアンタのこと起こせって言われて、そんで、ええと……っ!」
「ああ……すまないね……。昨夜遅くて、というより、今朝がたまで書類の処理に追われてねえ……」
ふああ、とあくびをするロイにエドワードは「そそそそそそうかっ!」と裏返った声を出した。
「じゃ、じゃあ、アンタと出かけるの延期とかでアンタはもうちょと寝てていいからっ!」
ぜいぜいと、必死になってエドワードは怒鳴る。
怒鳴らなければ声など出せない。
まだ半分寝ボケているロイはまるで年下の子どものように、ややぼんやりとした表情をエドワードに向けている。
その無防備さに、ますますエドワードの心臓が掴まれたようにぎゅうぎゅうと音を立てる。
「ああ……もう少しだけ、眠ってもいいかい……」
「もももももももちろん寝ろよっ!」
「ありがとう……すまないね」
にこお、と恐ろしく無防備な笑顔だった。
何も作っていない、ロイの素顔なのではと思った途端にまたもやエドワードの心臓は跳ねまくる。
最早ビックウェーブの上で踊るラインダンスだ。などとわけのわからないことを考えつつ、
「いいいいいいいいいいいいっから寝ろっ!!」
と、ぜいぜいと息も荒く、叫ぶのが精いっぱいであった。
そんなエドワードの心情を知ってか知らずか、ロイはゆっくりと手を伸ばし。
エドワードの腕を掴み。
エドワードの小さな身体を引き寄せて、抱き枕のように抱え込んだのであった。
「ではおやすみ……」
ちょっと待てっ!
一人で寝ろっ!
オレをまくら代わりにするな抱きしめんなっ!
エドワードは叫びたかった。
が、声が出ない。
口はパクパクと開け閉めを繰り変えずがそれだけだ。
実に至近距離にある、ロイの破壊力のある男前の顔。
――ち、近い近い近い近い離せええええええ。
が、叫ぶことなど到底できない。
息を呑んでその寝顔を見つめているしか出来ない。
エドワードは、だらだらと汗をかきながら、身じろぎ一つ出来ないで、そのままロイに抱きしめられたまま、硬直状態を維持する以外何もできはしなかった。
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