小説・2
BL二次創作&創作。18歳未満の方はお戻りください。無断転載厳禁です。
最初は、無神経なやつだと思った。
外見でしか物事を判断しないようなのだとも。
でも、違った。
そうじゃないと頭ではなく心でわかった。
――いきなり、なんだ。
好きだと、感じる。
それは何か好意の積み重ねの末にそういう気持ちになるのではなく。
突然わかるのかもしれない。少なくともエドワードはそうだった。
ついこの間まではなんとも思っていなかった。
なのに今、この瞬間から。
全くと言っていいほど世界が変わる。
気持ちが、変わる。
どうして今までこんなふうに好きではなかったのか。その方がわからない。
――多分、だけど。オレが今感じているような気持ちを、コイツはオレと出会ったその瞬間に感じてくれてただけなんだ。
好きだと。
理由でも理屈でもなんでもなく。
ただ、好き。
それだけ。
「あ、あの……さ、」
上手く動かない口で、なんつか言葉を紡ぐ。
好きだと伝えたい。
ロイ、とその名を呼んでみたい。
ぎくしゃくと、それでも精一杯の心で、息を吸い吐き出し。
「オレ、さ……」
言うのだ。
静かに、溢れてくる気持ちを今。
けれど、その想いは鋭い声に遮られた。
「……エド、静かに」
ロイは、依然としてエドワードを抱き寄せてはいるが、その意味が突然変化する。
肩に触れているロイの手が緊張を含んでいるのがエドワードにはわかった。
「……どうし、た?」
ロイの目はエドワードを見ていない。
エドワードの問に答えもしない。
ただ、何もない空間を睨む。
エドワードはそのロイの視線の先を追った。そして気がつく。
「なんだ、あれ。おかしい……」
それはまるで色のない陽炎。
ゆらりとした空気の歪み。
前に一度、これと同じものを見たことがある。あれは……。
考えているうちに、その陽炎が闇を纏い、重さを増していった。まるで実体であるかのように形を作る。ひらりと視界で揺れた炎の欠片は女性の長いドレスの裾になった。
そのドレスを少しだけ摘まんでいる細い指が現れる。指に小さな宝石がちりばめられている指輪をはめている。手首、二の腕、肩。そして顔。だんだんと全身の輪郭がはっきりしていく。
そうして、陽炎は一人の女の形になった。
「魔女だ」
姿を表した魔女は黒く長い髪をばさりと一つ振り払うと、まっすぐにロイを見ていた。
ロイだけを。
「どうして……」
繰り返す。
どうしてどうしてどうして……と。
輪唱のように。
波のさざめきのように。
重い念のように。
「何が『どうして』なのかなお嬢さん?」
ロイの問いかけに、魔女は答えず、壊れたオルゴールのように「どうして、どうして……」と繰り返す。
ロイは小さく舌打ちをした。
「これでは話が進まんな……」
そして、チラリと、視線をベロニカ・オックスフォードブルーの青い花へと流す。
「仕方あるまい。……結界を張ってくれアルフォンス」
いつの間にか、花の影に隠れるようにしてアルフォンスが立っていた。
「あ、アルぅ!?」
エドワードは驚いて目を見開いた。
「お、前いつからそこに……」
アルフォンスは申し訳なさそうな顔をしてエドワードに「兄さんごめん」と小さな声で告げた。
「初めから、ボク達ここにいたんだよね……」
「アル、達……?」
エドワードとロイが居るあずまやの四方を取り囲むようにして、アルフォンスもホークアイも、それからハボックやブレダといったロイの部下の面々が居た。
「い、いつから居たんだよっ!」
「だから、最初から。リザさんの魔法で、姿消して、はじめっからここに……」
「ウソだろっ!」
「いや……、ホント。ごめんね兄さん。僕とリザさんのデートっていうのも嘘っていうか方便っていうかで……最初から兄さんと殿下のところに魔女が現れると思って、先回りで待機してたんだ……」
初めから、居た。
アルフォンスの言葉が実感を持って沁みて来たと同時にエドワードの顔は真っ赤に茹で上がった。
初めから、居た。
――オ、オレ、今、こいつと……ええと、待て。それって、今の、全部、アルとかみんなに見られて……たって、こと、で……。
魔女のことなど忘れた。
叫びまくって逃げてしまいたい。
「ちょ、ちょっと待てアルフォンスうううううううう」
「だから、ゴメン、兄さん」
激昂しかかったエドワードの肩を、ロイが強く掴んだ。
「すまないエドワード。アルフォンスを責めるな。これは私の指示だ」
「あ、あんたのっ!」
「だが、落ち着け。その弁明などしている暇は今は無い。……ホークアイっ!アルフォンスっ」
「……既に三重の結界を張っております」
先に答えたのはホークアイだった。そしてアルフォンスも「はい、わかってます殿下」と一つ頷くと、手にしていたカードを手早くシャッフルする。それを投げるかのような勢いで宙に放つ。
運命、魔術師、愚者、女教皇……様々な図案のそのカードが意思を持つ者のようにひらりと飛び、そして全てのカードが淡い青白い光を放ちだす。光は細い糸のようにカード同士を繋いで行く。まるで、網の目のように。
「リザさんの結界をボクのカードが強化してます。……魔女を、逃がしはしません」
ハボックたちも銃やナイフを取り出し魔女を警戒している。
いきなりの皆の登場に慌てているエドワードを除いて、体制は万全のように思える。
だが、相手は最悪の魔女だ。
何が起こるかはわからない。
ロイは確認するかのように部下たちを見回すと、エドワードを背に、魔女に向かって一歩踏み出した。
「……さあ、話をしようかお嬢さん」
あくまでも紳士的ににこやかに、ロイは魔女に向かって手を差し伸べた。
外見でしか物事を判断しないようなのだとも。
でも、違った。
そうじゃないと頭ではなく心でわかった。
――いきなり、なんだ。
好きだと、感じる。
それは何か好意の積み重ねの末にそういう気持ちになるのではなく。
突然わかるのかもしれない。少なくともエドワードはそうだった。
ついこの間まではなんとも思っていなかった。
なのに今、この瞬間から。
全くと言っていいほど世界が変わる。
気持ちが、変わる。
どうして今までこんなふうに好きではなかったのか。その方がわからない。
――多分、だけど。オレが今感じているような気持ちを、コイツはオレと出会ったその瞬間に感じてくれてただけなんだ。
好きだと。
理由でも理屈でもなんでもなく。
ただ、好き。
それだけ。
「あ、あの……さ、」
上手く動かない口で、なんつか言葉を紡ぐ。
好きだと伝えたい。
ロイ、とその名を呼んでみたい。
ぎくしゃくと、それでも精一杯の心で、息を吸い吐き出し。
「オレ、さ……」
言うのだ。
静かに、溢れてくる気持ちを今。
けれど、その想いは鋭い声に遮られた。
「……エド、静かに」
ロイは、依然としてエドワードを抱き寄せてはいるが、その意味が突然変化する。
肩に触れているロイの手が緊張を含んでいるのがエドワードにはわかった。
「……どうし、た?」
ロイの目はエドワードを見ていない。
エドワードの問に答えもしない。
ただ、何もない空間を睨む。
エドワードはそのロイの視線の先を追った。そして気がつく。
「なんだ、あれ。おかしい……」
それはまるで色のない陽炎。
ゆらりとした空気の歪み。
前に一度、これと同じものを見たことがある。あれは……。
考えているうちに、その陽炎が闇を纏い、重さを増していった。まるで実体であるかのように形を作る。ひらりと視界で揺れた炎の欠片は女性の長いドレスの裾になった。
そのドレスを少しだけ摘まんでいる細い指が現れる。指に小さな宝石がちりばめられている指輪をはめている。手首、二の腕、肩。そして顔。だんだんと全身の輪郭がはっきりしていく。
そうして、陽炎は一人の女の形になった。
「魔女だ」
姿を表した魔女は黒く長い髪をばさりと一つ振り払うと、まっすぐにロイを見ていた。
ロイだけを。
「どうして……」
繰り返す。
どうしてどうしてどうして……と。
輪唱のように。
波のさざめきのように。
重い念のように。
「何が『どうして』なのかなお嬢さん?」
ロイの問いかけに、魔女は答えず、壊れたオルゴールのように「どうして、どうして……」と繰り返す。
ロイは小さく舌打ちをした。
「これでは話が進まんな……」
そして、チラリと、視線をベロニカ・オックスフォードブルーの青い花へと流す。
「仕方あるまい。……結界を張ってくれアルフォンス」
いつの間にか、花の影に隠れるようにしてアルフォンスが立っていた。
「あ、アルぅ!?」
エドワードは驚いて目を見開いた。
「お、前いつからそこに……」
アルフォンスは申し訳なさそうな顔をしてエドワードに「兄さんごめん」と小さな声で告げた。
「初めから、ボク達ここにいたんだよね……」
「アル、達……?」
エドワードとロイが居るあずまやの四方を取り囲むようにして、アルフォンスもホークアイも、それからハボックやブレダといったロイの部下の面々が居た。
「い、いつから居たんだよっ!」
「だから、最初から。リザさんの魔法で、姿消して、はじめっからここに……」
「ウソだろっ!」
「いや……、ホント。ごめんね兄さん。僕とリザさんのデートっていうのも嘘っていうか方便っていうかで……最初から兄さんと殿下のところに魔女が現れると思って、先回りで待機してたんだ……」
初めから、居た。
アルフォンスの言葉が実感を持って沁みて来たと同時にエドワードの顔は真っ赤に茹で上がった。
初めから、居た。
――オ、オレ、今、こいつと……ええと、待て。それって、今の、全部、アルとかみんなに見られて……たって、こと、で……。
魔女のことなど忘れた。
叫びまくって逃げてしまいたい。
「ちょ、ちょっと待てアルフォンスうううううううう」
「だから、ゴメン、兄さん」
激昂しかかったエドワードの肩を、ロイが強く掴んだ。
「すまないエドワード。アルフォンスを責めるな。これは私の指示だ」
「あ、あんたのっ!」
「だが、落ち着け。その弁明などしている暇は今は無い。……ホークアイっ!アルフォンスっ」
「……既に三重の結界を張っております」
先に答えたのはホークアイだった。そしてアルフォンスも「はい、わかってます殿下」と一つ頷くと、手にしていたカードを手早くシャッフルする。それを投げるかのような勢いで宙に放つ。
運命、魔術師、愚者、女教皇……様々な図案のそのカードが意思を持つ者のようにひらりと飛び、そして全てのカードが淡い青白い光を放ちだす。光は細い糸のようにカード同士を繋いで行く。まるで、網の目のように。
「リザさんの結界をボクのカードが強化してます。……魔女を、逃がしはしません」
ハボックたちも銃やナイフを取り出し魔女を警戒している。
いきなりの皆の登場に慌てているエドワードを除いて、体制は万全のように思える。
だが、相手は最悪の魔女だ。
何が起こるかはわからない。
ロイは確認するかのように部下たちを見回すと、エドワードを背に、魔女に向かって一歩踏み出した。
「……さあ、話をしようかお嬢さん」
あくまでも紳士的ににこやかに、ロイは魔女に向かって手を差し伸べた。
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