小説・2
BL二次創作&創作。18歳未満の方はお戻りください。無断転載厳禁です。
教室の中はざわざわとうるさいくらいたっだ。アルフォンスはグレイシアお手製のお弁当を広げながら「そーいえばさー、」とあからさまにしみじみとした声を出した。
「ん、アル。なんだよ」
エドワードのこめかむが、ピクリと動く。
もしや、またあれをいうんじゃないだろうな、と少々警戒しながらとりあえずから揚げを口に入れた。美味い。グレイシアさんのお弁当は本当にうまいなーっと意識をそらすその瞬間に、爆弾発言が投下される。
「にーさんがさー、あーんなにきっぱりはっきりと殿下に『好き』とか告白するとは思わなくて。いまだに思い出しちゃうもんねー」
あはははーというアルフォンスの笑い声に、エドワードは飲み込みかけたから揚げを、喉に詰まらせそうになった。
げほごほげほげほ。
咽ながら、やっぱりまたかよと、涙目でアルフォンスをにらむ。
アルフォンスはといえば、すまし顔で、「あー、はいはい、兄さんお茶飲んで。そーんなに咽なくてもいいじゃない。事実なんだしー」とコップを差し出してくる。
エドワードはそのお茶の入ったカップをひったくるようにしてつかむと、それを一気に喉に流し込む。
そして、ふううううううううと息を吐く。
「ぃ、いい加減になんどもなんども言うんじゃねええええええええっ!」
顔を赤らめて、小声で叫ぶ。何せここは教室なのだ。目立ちたくはない。
「あー、そうそうえっと、なんだったけ?正確に言えば『オレはロイのそばにいたい。オレの未来はアンタと一緒がいい』だったよねー。うひゃー、。しっかも大声で言ったじゃん殿下に」
「あーるうううううううう!」
リピートはされたくない。
思いのたけを、素直に、青空に響けとばかりに告げたのはわずか一週間前のこと。
当然、記憶は鮮明だ。
告白したことも、そしてその後のことも。
その告白シーンのことを、アルフォンスは毎日毎日繰り返し述べ、エドワードをからかうのである。
イーストエンドに滞在していた時も、そして、リゼンブールに戻り母に何が起こったのかを報告した後、もう一度アメストリスにやって来てからも。
何かの折に、ふと気が付いたふりで、アルフォンス何度も何度もエドワードがロイに告白をしたシーンを口にする。
「いいじゃないのさ、兄さんは幸せなんだから。なーのにわざわざ遠距離恋愛コース選んじゃってさー。やっぱり恥ずかしいからなのかなーって思ったり。兄さんそのままイーストエンドに残って殿下といちゃつけばいいじゃないのーとか思ったりさー」
「だーからアルうううううう、やめろってその話……」
アメストリスに戻り、そして学校にきちんと通う。リゼンブールという狭い社会でぬくぬくと過ごすのではなく、あのままイーストエンドに残るのではなく。
ここで、学びたい。たくさんのことを知りたい。そう思ったのはエドワード自身だ。
確かに、ロイのもとに居たいという気持ちもあった。
そして、そう望めばロイも、ほかの皆もそれを承諾してはくれると思った。
けれど、エドワードはあえて、グレイシアやヒューズの家に下宿という形をとらせてもらい、学校へ通うという選択をした。
知りたいのだ。
それは例えば、ラフィーナが最悪の魔女などと呼ばれずに済んだ方法。
例えば、ロイがロイの従兄に対してわざと敵愾心を煽らなくても済むような方法。
誰もが、笑顔でいられる。自分たちだけではなく。
世界中すべてを幸せにしたいなどという大それた望みは抱いたりはしないけれど。
少なくとも、自分の周りの人くらいは皆笑顔でいられるように。
そうエドワードは思ったのだ。
だから、今欲しいのは経験だ。
すべてを知りえることは不可能でも。
書物だけでは世界はわからない。
自分の目で見て、自分の手で触れて。そうしたのちに何かがわかるのだと思う。
恋愛も、そうだ。
ロイを好きになった初めてわかったことがある。
ロイに触れて、初めてわかったこと。
エドワードは、教室の窓の外の青空を見る。
――なあ、ロイ。オレはさ、アンタと幸せになりたいなーとか、そんなこと思ってるんだ。
などと、アルフォンスに告げたらまたもやからかわれるのは必至である。
だから、エドワードは逆襲を試みた。
「……ロイのことより先に、やんなきゃならねえこと、あるだろ」
ぼそり、と告げる。
「あー、兄さんてば花嫁修業とかするつもりー?」
「そんなわけねえだろ。っつーか、アル、おまえのこと、そのままでいーのかよ。アルがそのままでいいっつうなら、オレだってべっつにー」
あえて、ふざけ口調にして、アルフォンスを指さしてみる。
「まあ、オレはさ、もうスカートなんつーもの履かなくてもよくなったし?でもアルだってさー、やっぱそれ、スースーすんだろ?特に股間が」
「……………わざわざ声に出していわないでよね…」
「オレ的にはさ、ロイを放っておいてでもお前の体を元に戻すこと、考えたいじゃねーかって考えたんだけど、それ、大きなお世話だったらイーストエンド行くかなー」
「う、ううううううううう…………」
確かに、魔女の呪いは解けた。
が、本来であれば、命が助かるだけで、エドワードもアルフォンスも本来の女性の肉体へと戻る……はずなのだ。
そう、トリシャは確かにこう言った。
――エドワードとアルフォンスが男の子の身体になっているのは……呪い、と言っていいのかしら。……呪いのためにエドワードもアルフォンスも男の子の身体となったのだと思います。エドワードが運命の相手と結ばれればエドワードとアルフォンスに降りかかっている呪いは解けるはずです。魔女の呪いに打ち勝つのはたった一つ、愛の力だけですから。
魔女の呪いは晴れて解け、そうしてアルフォンスは女性へと戻った。
アルフォンスにしてみれば、女性へと変わった、という、呪など解けていないに等しさではあるが、これが本来生まれ持っての姿である。
「……なんで、にーさんは男のままなのさ……」
ずるい、とアルフォンスはエドワードを睨む。
「んー、わっかんねっけど。多分、オレがそう望んだから、とかかなーって」
「なにそれ」
「ラフィーナがさ、最期にオレの指先に触れた行った時……、オレの望むとおりにしてくれたのかなとか。心の奥底とかでさ、もう二度とスカートなんて足がスース―するもん履いててたまるか、って強い深層心理があったとかさー」
「ほんとーなのそれ?すごい嘘くさいんだけど」
「いや、わっかんねけど。多分、つか、そのくらいしか思い浮かばないつかさー。あーあとは……」
「あとは?なんか理由思いついた?」
「ほら、アルフォンスの運命の相手っつーの?それ見つかれば新たな展開がひらけるんかなーとか?まあ、わかんねえけどなー」
「…………とりあえず、兄さんが呪いを解いたことでボクも死ぬことはなくなったけど、ボクはそこまで強く意識して男の体に執着してなかったから女性になったとか?」
「うーん。まあ、ほんとはどうかわかんねえけど。事実としてアルフォンスは女の子になったつーか、母さんに言わせれば戻ったっていう事実だけがあるわけで」
「う、ううううううううう」
「で、アルは男の体がいいんだろ?」
「今までずっと男で生きてきて、呪が解けたから女の子として生きなさいなんて納得いくわけないっ!」
「んー、そうだよなあ」
「兄さんはいいよ兄さんは。って言うか兄さんのほうこそ女の子になればよかったじゃないのさ。そうしたらロイ殿下が王様になってそれからの時も兄さんがちゃーんと性別ともども王妃様になれてさあ」
ぶつぶつと、アルフォンスは文句を言う。
「あー。ロイだったらその辺気にしなさそう……」
「なにそれのろけ?男でも女でも私の愛する人が私の王妃となるにしかるべきとか強行突破する実行力あるとかそう思ってる?」
「あー、アイツさあ、なんつーかこう……、なにが起こっても動揺とかしないで前向いて困難とか解決しちまいそうではあるんだけど……」
最初に、出会った時を思い出す。そして、その言葉を。
――ならば、嘆いていないで足掻きたまえ。唯々諾々と運命の命ずるままに服する気が無いのなら足掻くしかないだろう?
足掻け、とロイの声がする。
その声に、たぶん、支えられていた。
辛いことなど何一つない人生ではない。
むしろ困難など望まなくても向こうからやってくるのだろう。
だけど、足掻く。
足掻いてそして、望む未来をきっと手にする。
「まあなんにせよ、現状に不満があるんなら足掻くしかねえだろ?オレだってアルフォンスが不快なままっつうのはゴメンだし。さっさとアルの体男に戻して、そんでもって……まあ、そのあとはーえーと」
「イーストエンドに行く?」
「…………まあ、そっだけど」
「ボク、兄さんにありがとうとか言うべき」
「いや……、オレが、そうしたいと思うからそうするだけ」
そうありたいと、エドワードが望む未来。
ロイがいて、アルがいて、みんな笑っている。
雲一つない晴天の空のように。
ただそれだけ。
けれど、たったそれだけが難しい。
思い通りになど行かないことだらけの人生で。
助けてくれる神様なんていなくて。
だから、それを何とかしようと思えば自分の腕で掴み取るしかない。自分の足で駆けていくしかない。
全力で。
全身全霊の力をもってしても、望みをかなえることは困難かもしれないけれど。
けれど、エドワードは走ろうと思った。
やりたいこと、望むこと、それを叶えるために。
誰かを呪うような、誰かを恨むことで自己を支えるような、そんな生き方をしないように。エドワードだけではなく誰もがそうであるように。
エドワードは大きく息を吸って、そして、その息をゆっくりと吐き出した。
いつだってオレは全力で走る。
きっとその走り切った先にはロイが笑顔で腕を広げて待っていてくれている。
――ま、あんまり待たせると、待つだけじゃなくてあのやろーはオレを捕まえに来ちまうかもしれないけどな。
だから。早く。全力で走る。
へへへ、とエドワードは笑って、そうして青空を仰ぎ見る。
オレはロイのそばにいたい。オレの未来はアンタと一緒がいい。
胸を張って何度でも、言う。
終わり
「ん、アル。なんだよ」
エドワードのこめかむが、ピクリと動く。
もしや、またあれをいうんじゃないだろうな、と少々警戒しながらとりあえずから揚げを口に入れた。美味い。グレイシアさんのお弁当は本当にうまいなーっと意識をそらすその瞬間に、爆弾発言が投下される。
「にーさんがさー、あーんなにきっぱりはっきりと殿下に『好き』とか告白するとは思わなくて。いまだに思い出しちゃうもんねー」
あはははーというアルフォンスの笑い声に、エドワードは飲み込みかけたから揚げを、喉に詰まらせそうになった。
げほごほげほげほ。
咽ながら、やっぱりまたかよと、涙目でアルフォンスをにらむ。
アルフォンスはといえば、すまし顔で、「あー、はいはい、兄さんお茶飲んで。そーんなに咽なくてもいいじゃない。事実なんだしー」とコップを差し出してくる。
エドワードはそのお茶の入ったカップをひったくるようにしてつかむと、それを一気に喉に流し込む。
そして、ふううううううううと息を吐く。
「ぃ、いい加減になんどもなんども言うんじゃねええええええええっ!」
顔を赤らめて、小声で叫ぶ。何せここは教室なのだ。目立ちたくはない。
「あー、そうそうえっと、なんだったけ?正確に言えば『オレはロイのそばにいたい。オレの未来はアンタと一緒がいい』だったよねー。うひゃー、。しっかも大声で言ったじゃん殿下に」
「あーるうううううううう!」
リピートはされたくない。
思いのたけを、素直に、青空に響けとばかりに告げたのはわずか一週間前のこと。
当然、記憶は鮮明だ。
告白したことも、そしてその後のことも。
その告白シーンのことを、アルフォンスは毎日毎日繰り返し述べ、エドワードをからかうのである。
イーストエンドに滞在していた時も、そして、リゼンブールに戻り母に何が起こったのかを報告した後、もう一度アメストリスにやって来てからも。
何かの折に、ふと気が付いたふりで、アルフォンス何度も何度もエドワードがロイに告白をしたシーンを口にする。
「いいじゃないのさ、兄さんは幸せなんだから。なーのにわざわざ遠距離恋愛コース選んじゃってさー。やっぱり恥ずかしいからなのかなーって思ったり。兄さんそのままイーストエンドに残って殿下といちゃつけばいいじゃないのーとか思ったりさー」
「だーからアルうううううう、やめろってその話……」
アメストリスに戻り、そして学校にきちんと通う。リゼンブールという狭い社会でぬくぬくと過ごすのではなく、あのままイーストエンドに残るのではなく。
ここで、学びたい。たくさんのことを知りたい。そう思ったのはエドワード自身だ。
確かに、ロイのもとに居たいという気持ちもあった。
そして、そう望めばロイも、ほかの皆もそれを承諾してはくれると思った。
けれど、エドワードはあえて、グレイシアやヒューズの家に下宿という形をとらせてもらい、学校へ通うという選択をした。
知りたいのだ。
それは例えば、ラフィーナが最悪の魔女などと呼ばれずに済んだ方法。
例えば、ロイがロイの従兄に対してわざと敵愾心を煽らなくても済むような方法。
誰もが、笑顔でいられる。自分たちだけではなく。
世界中すべてを幸せにしたいなどという大それた望みは抱いたりはしないけれど。
少なくとも、自分の周りの人くらいは皆笑顔でいられるように。
そうエドワードは思ったのだ。
だから、今欲しいのは経験だ。
すべてを知りえることは不可能でも。
書物だけでは世界はわからない。
自分の目で見て、自分の手で触れて。そうしたのちに何かがわかるのだと思う。
恋愛も、そうだ。
ロイを好きになった初めてわかったことがある。
ロイに触れて、初めてわかったこと。
エドワードは、教室の窓の外の青空を見る。
――なあ、ロイ。オレはさ、アンタと幸せになりたいなーとか、そんなこと思ってるんだ。
などと、アルフォンスに告げたらまたもやからかわれるのは必至である。
だから、エドワードは逆襲を試みた。
「……ロイのことより先に、やんなきゃならねえこと、あるだろ」
ぼそり、と告げる。
「あー、兄さんてば花嫁修業とかするつもりー?」
「そんなわけねえだろ。っつーか、アル、おまえのこと、そのままでいーのかよ。アルがそのままでいいっつうなら、オレだってべっつにー」
あえて、ふざけ口調にして、アルフォンスを指さしてみる。
「まあ、オレはさ、もうスカートなんつーもの履かなくてもよくなったし?でもアルだってさー、やっぱそれ、スースーすんだろ?特に股間が」
「……………わざわざ声に出していわないでよね…」
「オレ的にはさ、ロイを放っておいてでもお前の体を元に戻すこと、考えたいじゃねーかって考えたんだけど、それ、大きなお世話だったらイーストエンド行くかなー」
「う、ううううううううう…………」
確かに、魔女の呪いは解けた。
が、本来であれば、命が助かるだけで、エドワードもアルフォンスも本来の女性の肉体へと戻る……はずなのだ。
そう、トリシャは確かにこう言った。
――エドワードとアルフォンスが男の子の身体になっているのは……呪い、と言っていいのかしら。……呪いのためにエドワードもアルフォンスも男の子の身体となったのだと思います。エドワードが運命の相手と結ばれればエドワードとアルフォンスに降りかかっている呪いは解けるはずです。魔女の呪いに打ち勝つのはたった一つ、愛の力だけですから。
魔女の呪いは晴れて解け、そうしてアルフォンスは女性へと戻った。
アルフォンスにしてみれば、女性へと変わった、という、呪など解けていないに等しさではあるが、これが本来生まれ持っての姿である。
「……なんで、にーさんは男のままなのさ……」
ずるい、とアルフォンスはエドワードを睨む。
「んー、わっかんねっけど。多分、オレがそう望んだから、とかかなーって」
「なにそれ」
「ラフィーナがさ、最期にオレの指先に触れた行った時……、オレの望むとおりにしてくれたのかなとか。心の奥底とかでさ、もう二度とスカートなんて足がスース―するもん履いててたまるか、って強い深層心理があったとかさー」
「ほんとーなのそれ?すごい嘘くさいんだけど」
「いや、わっかんねけど。多分、つか、そのくらいしか思い浮かばないつかさー。あーあとは……」
「あとは?なんか理由思いついた?」
「ほら、アルフォンスの運命の相手っつーの?それ見つかれば新たな展開がひらけるんかなーとか?まあ、わかんねえけどなー」
「…………とりあえず、兄さんが呪いを解いたことでボクも死ぬことはなくなったけど、ボクはそこまで強く意識して男の体に執着してなかったから女性になったとか?」
「うーん。まあ、ほんとはどうかわかんねえけど。事実としてアルフォンスは女の子になったつーか、母さんに言わせれば戻ったっていう事実だけがあるわけで」
「う、ううううううううう」
「で、アルは男の体がいいんだろ?」
「今までずっと男で生きてきて、呪が解けたから女の子として生きなさいなんて納得いくわけないっ!」
「んー、そうだよなあ」
「兄さんはいいよ兄さんは。って言うか兄さんのほうこそ女の子になればよかったじゃないのさ。そうしたらロイ殿下が王様になってそれからの時も兄さんがちゃーんと性別ともども王妃様になれてさあ」
ぶつぶつと、アルフォンスは文句を言う。
「あー。ロイだったらその辺気にしなさそう……」
「なにそれのろけ?男でも女でも私の愛する人が私の王妃となるにしかるべきとか強行突破する実行力あるとかそう思ってる?」
「あー、アイツさあ、なんつーかこう……、なにが起こっても動揺とかしないで前向いて困難とか解決しちまいそうではあるんだけど……」
最初に、出会った時を思い出す。そして、その言葉を。
――ならば、嘆いていないで足掻きたまえ。唯々諾々と運命の命ずるままに服する気が無いのなら足掻くしかないだろう?
足掻け、とロイの声がする。
その声に、たぶん、支えられていた。
辛いことなど何一つない人生ではない。
むしろ困難など望まなくても向こうからやってくるのだろう。
だけど、足掻く。
足掻いてそして、望む未来をきっと手にする。
「まあなんにせよ、現状に不満があるんなら足掻くしかねえだろ?オレだってアルフォンスが不快なままっつうのはゴメンだし。さっさとアルの体男に戻して、そんでもって……まあ、そのあとはーえーと」
「イーストエンドに行く?」
「…………まあ、そっだけど」
「ボク、兄さんにありがとうとか言うべき」
「いや……、オレが、そうしたいと思うからそうするだけ」
そうありたいと、エドワードが望む未来。
ロイがいて、アルがいて、みんな笑っている。
雲一つない晴天の空のように。
ただそれだけ。
けれど、たったそれだけが難しい。
思い通りになど行かないことだらけの人生で。
助けてくれる神様なんていなくて。
だから、それを何とかしようと思えば自分の腕で掴み取るしかない。自分の足で駆けていくしかない。
全力で。
全身全霊の力をもってしても、望みをかなえることは困難かもしれないけれど。
けれど、エドワードは走ろうと思った。
やりたいこと、望むこと、それを叶えるために。
誰かを呪うような、誰かを恨むことで自己を支えるような、そんな生き方をしないように。エドワードだけではなく誰もがそうであるように。
エドワードは大きく息を吸って、そして、その息をゆっくりと吐き出した。
いつだってオレは全力で走る。
きっとその走り切った先にはロイが笑顔で腕を広げて待っていてくれている。
――ま、あんまり待たせると、待つだけじゃなくてあのやろーはオレを捕まえに来ちまうかもしれないけどな。
だから。早く。全力で走る。
へへへ、とエドワードは笑って、そうして青空を仰ぎ見る。
オレはロイのそばにいたい。オレの未来はアンタと一緒がいい。
胸を張って何度でも、言う。
終わり
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