小説・2

BL二次創作&創作。18歳未満の方はお戻りください。無断転載厳禁です。
From:鳴上悠
俺のピンチだ、早く来い。

そんなメールが入ってきたのは夜の11時。あの……鳴上センセイ、明日も俺、仕事がありますけど?車飛ばして片道一時間半。そっちにつく頃は日付が変わりますけど?
まあ、でも、ピンチとか、コイツが助けを求めることなんてめったにないから。俺は免許と鍵を掴んでスーパーダッシュで駐車場に向かった。

そんでもって高速飛ばして一時間チョイで速攻着いた鳴上の部屋で、当の鳴上は……死んでいた。
いや、死ぬっていうのは比喩だけど。真っ白に燃え尽きて灰になっていた。
「ど、どどどどどうした相棒っ!」
夜中だって言うのに俺は叫んで、そんでもって両肩掴んでガタガタと鳴上を揺さぶる。
「……あ、陽介……か、」
目の焦点が合ってない。マジでどうしたんだ何があった。
ぼんやりしているコイツなんて初めて見た。
「なあどうした、何があった?俺に話せることか?」
大丈夫かしっかりしろって念じながら鳴上を凝視。
「あ……、」
「うん、どっした?」
「菜々子、が……」
「菜々ちゃんが、どうしたんだ?」
怪我か病気かそれとも……、子どもの頃から変わらない、ほんわかした雰囲気のまま大人の女性になった菜々子ちゃんは癒し系だのなんだのってめっちゃめちゃモテるようになった。老若男女問わず、皆、菜々子ちゃんが大好きだ。だから、もしや、菜々子ちゃんを狙うストーカーでも出やがったか。それとも……まさか誘拐でもされたとか。
思わず想像して青ざめた。
コイツがここまでひでえ状態ってことは俺の想像以上の何かが起こったのかもしれない。
「なあ、どうしたホントマジで大丈夫なのかよ。俺になんか出来ることあるか?」
探すとか探すとか探すとか、ストーカーとかだったらぶっ飛ばすとか。
「さっき、菜々子から電話があって……」
電話っつーことは誘拐の線だけは無いってことか?
何があったのか、ホント鳴上の目は未だに虚ろだ。
「菜々子が……、菜々子が……」
「うん、どした?」
重々しく繰り出された言葉は。
「……結婚」
「へ、ほ?」
「菜々子が、結婚するって……」
「は、あ?」
菜々子ちゃんが結婚するからコイツがピンチ?……お前、どんだけシスコンなんだ……。がっくりと俺は肩を落とす。あー……。
「お兄ちゃんは、辛いやね……」
思わず呟いた俺に、鳴上はひっしとしがみ付いてきた。
「辛い、のか……、そうだな、ものすごく胸が痛むのはどうしてなんだ……」
そりゃあ花嫁の父的な気分になっちまってるんだろう。
「あー、泣け泣け泣いちまえ」
ぽんぽんと肩を抱いてやる。
縋りつくように抱きついてきた鳴上にちょっとクラクラ来そうになったけど、ここは理性で我慢我慢。
「結婚式、いつだって?」
「……再来月の祝日」
「あー、そんじゃそれまでに覚悟決めねえとな、お兄ちゃん」
「覚悟……菜々子の相手を闇に葬る覚悟か?テレビの中に入れてしまえばそれも可能か……」
目がマジだ。おいおいおいおい、殺す気か菜々子ちゃんの未来の旦那を。
「そんなことしたら菜々子ちゃんに恨まれて嫌われるぞ」
「嫌われ……、菜々子に嫌われたら俺は生きていけな……」
マジで涙が出そうになってますけど。あー、しっかたねえなあ。
「あー、なんだその。菜々子ちゃんの分まで俺が愛してあげますから安心して」
「……いらん」
「いらんて、ひどーっ!」
マジでショック。お前のために夜中に車飛ばしてここまで来た俺に何このひでえ言い草っ!とか思ったら鳴上はくすくす笑ってた。
「嘘」
「へ?」
「ありがとう陽介」
すげえ綺麗に鳴上が笑うから。俺は見惚れたまま声も出ななかった。
うわあ、すげえ。
この顔、見ることが出来ただけでも夜中に車飛ばしてやってきた甲斐があったなんてそう思える。
じんわり、幸せに浸っちまう単純な俺。
でも、さ。なんかいいじゃんか。
さっきまで燃え尽きてたコイツを笑顔に出来たのが俺なんて、さ。
甘えってってか気を許したきって俺の肩にこつんでカンジで額乗っけてきたコイツなんて、さ。
あー、肩とか抱いちまっていいかな?あ、ほら下心ではなくてさ。なんかこう、優しい気持ちでさ、あーそのなんだ、超嬉しいし。嘘、下心抑えるの、結構大変です。
「なあ、陽介」
「んー、何ですか相棒」
とりあえず、よしよしってカンジで綺麗なラインを描くコイツの頭を撫ぜてみる。さらっさらの髪、すげえ気持ちがいい。もっと触りたいとか思っちまうけど我慢我慢。理性で我慢。
……我慢って思ってたのに。
「菜々子が先に嫁に行くのが辛いからさ」
「うん」
「俺も陽介の所に嫁に行っても構わないか?」
「へっ!」
「ノーという返事は聞かないからよろしく」
いやあの拒否なんてしませんけどしませんけどしませんけど。
返事の代わりに押し倒して容赦なく貪りました。ケダモノですんません。

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