小説・2
BL二次創作&創作。18歳未満の方はお戻りください。無断転載厳禁です。
……なんて想いは花村には悟られないように。
あくまでも俺は眉一つ動かさずに淡々と「行くぞ」と言った。そして「ついてくるも来ないもお前の好きにしろよ」と付け足して花村に背を向けて歩き出した。
すたすたと、躊躇なく。振り返ることなんかしなかった。
ついてくるもよし、来なくてもよし。
そんなのは花村が決めればいい。
ついてくるなら花村の好きなようにさせるし、ついてこないなら別に、明日からも今までと変わらずいつも通りに接するだけ。
好き、なんだけどな。遠距離恋愛なんか出来るほどに気持ちが強いなんて信じてやれなくてごめん。でも……さ、離れてもずっと気持ちが変わらないなんて信じられないんだよ。
好きだと言って恋人になってそれでそのうち別れるくらいならこのままの方がいい。
ずるいとは思う。
きっと俺は憶病なんだ。
だけど花村を失いたくはないから。
離れて暮らして疎遠になっても、俺の心のどこかに花村という存在をずっと感じていたいから。
恋人になって別れて苦い思いをするくらいなら、このままでいい。
なんて顔には出さないで、歩く。
花村はしばらくの間躊躇して、それでも俺の後についてきた。
なにも、話さない。
足を速めて俺に追いつこうともしない。一定の距離を開けたままで、ついてくる。
きっと迷ってる。
いや、戸惑っているのかもしれない。
花村の気持ちは分からない。
気がつかれないように一度だけ後ろを窺えば、すごく複雑そうに不機嫌そうな顔をした花村がいた。
俺は何気なく空を見る。
冬の、空。
寒々しい。
風も冷たくて。
でも、青くて綺麗だと思う。もう少し経てば、この青に段々とオレンジが混ざって夕暮れになって、一番星とかが輝いて、真っ暗な夜になる。ここみたいな田舎の夜は本当に暗い。闇ってこんなに深いんだなってここに来た当時はちょっと感動した。
なんて、余計なことを敢えて考えていればあっという間に家に着いた。
鍵を出して玄関を開けて、声には出さずに「ただいま」と言う。
それで、一応確認的に三歩下がって所在なく佇んでる花村に「入るか?」とわざと聞く。
花村は「うっ」とちょっとだけ詰まって、それから大股でズカズカと入ってきた。
「おじゃましまっ!」
……声が裏返ってるぞ花村。
俺はちょっと笑いそうになったけど、笑わずにおいて「先に二階に行っててくれ。茶くらい入れるから」と。さっさと台所に向かった。
花村も花村で、勝手知ったる他人の家状態なので、これまたズカズカと音を立てながら、階段を上っていった。
コンロに火をつけてお湯を沸かす。その短い間に俺は何回ため息をついたのかわからない。
……普通に、出来ているだろうか。俺の下心なんか花村に見透かされてはいないだろうか。
あれで花村は意外と聡い。うっかり口を開くからがっかり王子だとかうざいだとかいわれるんであるのだが、少なくとも俺の心情には敏感だ。あまり表情の動かない俺の気持ちを結構な確率で当ててくる。テレビの中で探索する時なんて、本当に俺専用レーダーでもつけているんじゃないのかっていうくらいだ。りせのかわりにサーチとかもできるんじゃないのかって時たま思った。無理をしている時なんて、他の誰にもばれていないと思っていても花村にはバレていた。
だから、気をつけなくてはいけない。
俺の気持ちは花村に知られてはいけない。
好きだけど、お前が俺のこと、離れててもずっと好きだなんて思えないんだって。友情に関しては信頼できるけど、恋愛的には信じていないんだよなんて。
……言えない、な。
何度目かのため息を吐けば、夜間がしゅんしゅんとうるさく鳴った。
とりあえず茶を入れて二階に向かう。
自分の部屋のドアを開ければ、ソファの所でかちんこちんに緊張している花村がいて。
俺は思わず盛大に笑った。
「何だよ鳴上。人の顔見た途端にその大爆笑は」
い、いやすまん。とかなんとか言いながら、茶碗をテーブルに置いて、少しこぼれてしまったお茶をティッシュで拭う。
「すごい緊張してるのがありありで」
「……緊張、するだろ。お前はしないのかよ」
「まあ、別に。花村だし」
「それ、どーいう意味よ?」
「まあいいから。茶でも飲んで落ち着きなさい」
「なんかこー……納得ができねっつか」
「何が、だ?」
花村は眉間に皺をよせながら花村はそれでも茶をすすって。お約束のように「あちっ!」とか言って。
「だいたい俺がいきなり告ったっつーのにお前顔色一つ変えねえでさ」
抑え気味に笑いながら俺は平然と答える。
「まあ、花村はわかりやすいから」
「……ふつー、男が男に恋愛感情抱いているなんて思わないっしょ」
「ふつー、はな。でも花村だし」
「俺、そんなにホモオーラだしてっかよっ!」
「いや逆。妙に大げさに拒否姿勢とか示してるし」
「……それ、いつだよ」
「テレビの中で、ほら、完治のサウナっぽいダンジョンの時とか」
「う……、あの頃はお前への気持ちなんか自覚なんかしてなかったけど」
「ネタで誰かがソレ系振ると異様に反応する割に俺には結構べたべたしてきたし」
「べ……た、べた、した、か……?」
「修学旅行のラブホの時とかの反応とか文化祭とかの女装の時とかも」
「げ……、そ、うなんだ?」
「自覚、ないんだな?」
「う……、アリマセン」
「普通、男同士の友人同士で、膝枕とかはしないし、俺の女装写真を本気で欲しがったり、風呂上がりで半裸の俺を見て頬を染めたりはしない」
「ぐ……っ」
トドメを刺されたように花村はばったりと床に転がった。
「花村が俺のことをどう自覚しているのかは分からなかったが、まあ一応想定はしていたんだ。いつかもしも花村は恋愛感情的に好きだとか言ってきたらどうしようかと」
「へっ?」
転がったまま顔だけ上げて俺を見上げてくる。
「結構これでもずっと考えてた。だけど、いくら考えてもわからない」
俺はわざとらしく腕なんかを組んで、考えているフリをした。
「さっきも言ったが分からないんだ。だから、お前の望むとおりにして構わない。多分、後悔は、しない」
考えてもわからない、は、嘘だけど。後半のセリフは俺の本音。
多分、後悔はしない。
一度でいいから花村が欲しい。
でも、一度だけでいい。
それ以上は要らない。欲しくない。
未練が、残るから。
離れたくなくなるから。
親の待つ家に帰るのではなくて、このまま3年になっても八十神高校に通って、大学とかもずっと一緒でとか。
ありえない未来を想像したくなるから。
無理なんだよ。
男同士で、ずっと一緒で、死ぬまで、なんて。
だから、一度きり。
それでいい。
③に続く
あくまでも俺は眉一つ動かさずに淡々と「行くぞ」と言った。そして「ついてくるも来ないもお前の好きにしろよ」と付け足して花村に背を向けて歩き出した。
すたすたと、躊躇なく。振り返ることなんかしなかった。
ついてくるもよし、来なくてもよし。
そんなのは花村が決めればいい。
ついてくるなら花村の好きなようにさせるし、ついてこないなら別に、明日からも今までと変わらずいつも通りに接するだけ。
好き、なんだけどな。遠距離恋愛なんか出来るほどに気持ちが強いなんて信じてやれなくてごめん。でも……さ、離れてもずっと気持ちが変わらないなんて信じられないんだよ。
好きだと言って恋人になってそれでそのうち別れるくらいならこのままの方がいい。
ずるいとは思う。
きっと俺は憶病なんだ。
だけど花村を失いたくはないから。
離れて暮らして疎遠になっても、俺の心のどこかに花村という存在をずっと感じていたいから。
恋人になって別れて苦い思いをするくらいなら、このままでいい。
なんて顔には出さないで、歩く。
花村はしばらくの間躊躇して、それでも俺の後についてきた。
なにも、話さない。
足を速めて俺に追いつこうともしない。一定の距離を開けたままで、ついてくる。
きっと迷ってる。
いや、戸惑っているのかもしれない。
花村の気持ちは分からない。
気がつかれないように一度だけ後ろを窺えば、すごく複雑そうに不機嫌そうな顔をした花村がいた。
俺は何気なく空を見る。
冬の、空。
寒々しい。
風も冷たくて。
でも、青くて綺麗だと思う。もう少し経てば、この青に段々とオレンジが混ざって夕暮れになって、一番星とかが輝いて、真っ暗な夜になる。ここみたいな田舎の夜は本当に暗い。闇ってこんなに深いんだなってここに来た当時はちょっと感動した。
なんて、余計なことを敢えて考えていればあっという間に家に着いた。
鍵を出して玄関を開けて、声には出さずに「ただいま」と言う。
それで、一応確認的に三歩下がって所在なく佇んでる花村に「入るか?」とわざと聞く。
花村は「うっ」とちょっとだけ詰まって、それから大股でズカズカと入ってきた。
「おじゃましまっ!」
……声が裏返ってるぞ花村。
俺はちょっと笑いそうになったけど、笑わずにおいて「先に二階に行っててくれ。茶くらい入れるから」と。さっさと台所に向かった。
花村も花村で、勝手知ったる他人の家状態なので、これまたズカズカと音を立てながら、階段を上っていった。
コンロに火をつけてお湯を沸かす。その短い間に俺は何回ため息をついたのかわからない。
……普通に、出来ているだろうか。俺の下心なんか花村に見透かされてはいないだろうか。
あれで花村は意外と聡い。うっかり口を開くからがっかり王子だとかうざいだとかいわれるんであるのだが、少なくとも俺の心情には敏感だ。あまり表情の動かない俺の気持ちを結構な確率で当ててくる。テレビの中で探索する時なんて、本当に俺専用レーダーでもつけているんじゃないのかっていうくらいだ。りせのかわりにサーチとかもできるんじゃないのかって時たま思った。無理をしている時なんて、他の誰にもばれていないと思っていても花村にはバレていた。
だから、気をつけなくてはいけない。
俺の気持ちは花村に知られてはいけない。
好きだけど、お前が俺のこと、離れててもずっと好きだなんて思えないんだって。友情に関しては信頼できるけど、恋愛的には信じていないんだよなんて。
……言えない、な。
何度目かのため息を吐けば、夜間がしゅんしゅんとうるさく鳴った。
とりあえず茶を入れて二階に向かう。
自分の部屋のドアを開ければ、ソファの所でかちんこちんに緊張している花村がいて。
俺は思わず盛大に笑った。
「何だよ鳴上。人の顔見た途端にその大爆笑は」
い、いやすまん。とかなんとか言いながら、茶碗をテーブルに置いて、少しこぼれてしまったお茶をティッシュで拭う。
「すごい緊張してるのがありありで」
「……緊張、するだろ。お前はしないのかよ」
「まあ、別に。花村だし」
「それ、どーいう意味よ?」
「まあいいから。茶でも飲んで落ち着きなさい」
「なんかこー……納得ができねっつか」
「何が、だ?」
花村は眉間に皺をよせながら花村はそれでも茶をすすって。お約束のように「あちっ!」とか言って。
「だいたい俺がいきなり告ったっつーのにお前顔色一つ変えねえでさ」
抑え気味に笑いながら俺は平然と答える。
「まあ、花村はわかりやすいから」
「……ふつー、男が男に恋愛感情抱いているなんて思わないっしょ」
「ふつー、はな。でも花村だし」
「俺、そんなにホモオーラだしてっかよっ!」
「いや逆。妙に大げさに拒否姿勢とか示してるし」
「……それ、いつだよ」
「テレビの中で、ほら、完治のサウナっぽいダンジョンの時とか」
「う……、あの頃はお前への気持ちなんか自覚なんかしてなかったけど」
「ネタで誰かがソレ系振ると異様に反応する割に俺には結構べたべたしてきたし」
「べ……た、べた、した、か……?」
「修学旅行のラブホの時とかの反応とか文化祭とかの女装の時とかも」
「げ……、そ、うなんだ?」
「自覚、ないんだな?」
「う……、アリマセン」
「普通、男同士の友人同士で、膝枕とかはしないし、俺の女装写真を本気で欲しがったり、風呂上がりで半裸の俺を見て頬を染めたりはしない」
「ぐ……っ」
トドメを刺されたように花村はばったりと床に転がった。
「花村が俺のことをどう自覚しているのかは分からなかったが、まあ一応想定はしていたんだ。いつかもしも花村は恋愛感情的に好きだとか言ってきたらどうしようかと」
「へっ?」
転がったまま顔だけ上げて俺を見上げてくる。
「結構これでもずっと考えてた。だけど、いくら考えてもわからない」
俺はわざとらしく腕なんかを組んで、考えているフリをした。
「さっきも言ったが分からないんだ。だから、お前の望むとおりにして構わない。多分、後悔は、しない」
考えてもわからない、は、嘘だけど。後半のセリフは俺の本音。
多分、後悔はしない。
一度でいいから花村が欲しい。
でも、一度だけでいい。
それ以上は要らない。欲しくない。
未練が、残るから。
離れたくなくなるから。
親の待つ家に帰るのではなくて、このまま3年になっても八十神高校に通って、大学とかもずっと一緒でとか。
ありえない未来を想像したくなるから。
無理なんだよ。
男同士で、ずっと一緒で、死ぬまで、なんて。
だから、一度きり。
それでいい。
③に続く
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