小説・2

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■ 第一章 その6 優太編 ■



ホントは、死ぬの、すっごく怖い。
昨夜、省吾サンと桐哉たちが来てくれた時、ホントはおれは逃げたかった。

でも逃げないよ。
でも怖い。

着飾って貰って、輿に乗っけられて。
お城から海までおれは震える体を押さえていた。

逃げたい。死にたくない。怖い。

だけど。

役人のヒトがおれ達の町にイケニエの青の一族探しに来た時。おれの青い髪見つかっておれがイケニエとして連れて行かれる時に、恭也さんが「俺だって青の一族の血くらい引いてるっ!川村君連れていくなよ俺にしろよっ!」って叫んでくれたから。
おれを庇ってくれたから。
だから、ね。
おれが逃げたら今度はこんな怖いこと、恭也さんにさせることになる。

だからおれは逃げない。
怖いけど、おれが自分からイケニエになるって決めたんだ。

ぐっと、服の裾をつかむ。
力入れていないと指先から震えてくる。

「ぴ」
小さくぶーちゃんが鳴く。
「だいじょーぶだよ。おれ、へーき」
ぶーちゃんだけに聞こえるように小声で言う。
怖いけど、死ぬのホントは嫌だけど。
だってもっとずっと恭也さんの傍に居たいんだ。
もっとずっと、恭也さんの笑顔見て居たいんだ。
おれの、大切な人。
昔、山で一人きりになって、ドラゴンの生息地に迷い込んじゃって、それからしばらくぶーちゃんに面倒見てもらってたけど。やっぱりぶーちゃんはドラゴンだから。寄り添ってもあったかくないんだよね。優しいし、大好きだし、可愛いし、夏とかならひんやりして気持ちいいけどね。
おれ、恭也さんに初めて頭撫でてもらった時、なんてあったかいんだろうってびっくりした。
久しぶりに触れた誰かの体温。
ううん、それだけじゃなくて。恭也さんがあったかい人なんだって思った。
おれを拾ってくれて。優しくしてくれて育ててくれた大好きな、人。
桐哉もね、ホントはそんなに嫌いじゃないよ。恭也さん取り合って喧嘩するの、結構楽しかったのかもしれない。
なんだかんだでおれの面倒見てくれてたし、それに昨夜は助けにだって来てくれた。
おれのこと、ホントはそんなに好きなんかじゃないはずなのにね。
ちがう、かな?嫌いとかじゃなくて、家族だとかは思ってくれてるのかな、おれのこと。
省吾サンもホントに来てくれるとは思わなかった。だって会ったばっかだし。禊のためとかで役人の人達に連れていかれた山の中に、何故か省吾サンが住んでいて。それで、禊で冷たい水につかって熱出したおれの看病とかしてくれたんだよね。うん、山の中で一人で熱出したらおれきっとイケニエなんかになる前に死んじゃってたかもしれない。
ただそれだけなのに。
おれ、迷惑しかかけてなかったのに。
助けてくれるとか守ってくれるとか言ってくれた。おれ、知らなかったんだけど、省吾サンてあの勇者様なんだってね。省吾サンの居た山からミノリアってところのお城に移動している時に教えてもらったんだよね。おれ、びっくりした。勇者様ってお身体の具合悪いって噂だったし。あ、だから俺が熱出した時すぐにお薬とか飲ませてくれたのかな?具合悪いのにおれのコト助けてくれるとかさ。そんなのダメだよね。
なのに昨夜わざわざ来てくれた。おれ、逃がそうとしてくれた。すっごいね、嬉しかった。
恭也さん、ぶーちゃん、省吾サンに桐哉も。
おれのこと、大事にしてくれてありがとう。

だから、大丈夫。
死ぬの怖いけど。
あったかい気持ち貰ったから大丈夫なんだよ。

少しずつ、おれの乗っている輿が進む。視界が開けて海が見える。

……あそこに、魔物が居て、おれはそれに多分喰われる。
あと、少しで。もうすぐに。

ねえ恭也さん、おれが死んでも泣かないで。あ、ちょっと泣いてくれたら嬉しいけどずっとは泣かないでね。
恭也さんが悲しんでるとおれが辛い。
だから桐哉。ちゃんと恭也さんの傍に居て恭也さん慰めてよね。悔しいけど、譲るから。
今までホントにありがとう。それから……、それから……。

ばいばいみんな。おれのこと、忘れないでいてね。


→その7 優太と桐哉の過去話編へワープ!
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