小説・2

BL二次創作&創作。18歳未満の方はお戻りください。無断転載厳禁です。

3

がっくりと、肩を落とす二人に、ホークアイの鋭い視線が向けられた。
「……エドワード君の背後に、大佐の幽霊が浮いて出ていて、それはエドワード君とアルフォンス君にしか見えていない、ということでいいのかしらね」
「ええまあそんな感じで。ボク達、ホークアイ中尉に聞けばこれがどういう状況かわかるかなって期待していたものですから……」
アルフォンスは愕然としたままそれでも律儀に答える。
そんなアルフォンスにホークアイは低い声で答えた。
「あなたたちで7人……いえ、7組目として数えることができるのかしらね」
「ななくみ、め?、ですか」
「そう。ここ数か月、このアメストリス……いえ、イーストシティ限定と言ってもいいのかしらね。あなたたちのように、親しい人物が霊となって現れるという事件というかなんというか……そんなことが起こっているの。もちろん最初は、気のせいや幻覚ではないかと思われていたんだけど……」
「え?」

イーストシティの幽霊騒動。
最初の一人目は、花屋に勤める若い女性だった。恋人である男性の幽霊が現れた。きっと彼は死んでしまったに違いない。それで自分のもとに霊魂となってやってきたのだと主張した。
確かに、彼女が付き合っていた男性は失踪をしていた。だが、霊など誰も信じない。だから、単に女性が男性に振られたショックで霊などと言い出したのだろうと決めつけられた。
しかしその次にまた別の人間が幽霊が現れたと言い出したのだ。こちらは教師を務めあげ、間もなく定年退職というばかりの年代の、まじめを絵にかいたような男性だったのだ。とある私立高校の副校長に就任したこともあり、その学校の同僚・教師・生徒の評判はまじめすぎるほどまじめで冗談など言う教師ではないと言う。もちろん幽霊などとそんなことも言うような人柄ではない。だか、その男性は、数年前、家出半分、勘当半分で行方知れずになった息子が幽霊となって現れたのだと主張した。失踪後どんな生活をしていたかわからない。もしかしたら何かの事件に巻き込まれて死んだ挙句に自分のところに霊魂となってやってきたのかもしれない。だから、息子の遺体でいいから探してくれと、その男性は駆け込んできた。
もちろん、軍部はそんなことなど取り合わなかった。
だが、三人目、四人目、五人目……と、霊となって親しい人物が現れたのだと軍部に申し出てくる者が増えた。

「そんなこんなで軍部も重い腰を上げざるを得なかったのだけれど……」
はあ、と珍しくホークアイが溜息を吐く。
「えっと、あの。マスタング大佐自ら潜入しないといけないような場所なんですか?」
「そーだよなあ。潜入捜査なんてもっと下っ端っつーか、大佐がわざわざなんでまた。ハボック少尉とかが潜入とかして、大佐なんかその結果をふんぞり返って待ってそうだけどなー」
疑問に思ったアルフォンスとエドワードが何気なく言葉にすれば。
ハボックは明後日の方向を向き、ホークアイは重々しく口を開いた。
「それがね。……少尉は受からなかったの」
「はい?」
「へ?」
「……というか大佐しか受からなかったのよね。もちろん大佐だとわからないように偽名を使って経歴も詐称して髪の色も変えて変装はしているんだけれども」
「へ?」
「あ、あのー。大佐はどこに潜入捜査しているんですか?」

ホークアイが重々しく語る。

私立イースト女学園。
それはイーストシティ郊外にある歴史と伝統を重んじる、今時珍しく堅苦しい全寮制女子学校。
良家の子女を集め、礼儀作法を重んじる教育方針。挨拶の言葉は朝も夜も「ごきげんよう」
別名、良家の子女のための花嫁修業学園。
授業を担当する教師のみならず、寮母、事務員、栄養管理士、はては清掃の職員までもに厳格な規律と立ち居振る舞いを要求する。

「大佐が潜入捜査したのはそういう場所でね。最初はブレダ少尉やハボック少尉に面接を受けてもらったのだけれど……」
ハボックがひがむように横を向いた。
「えーえー、そうっすよ。俺が応募したのは単なる掃除のおっさんなのに、立ち居振る舞いが粗野だとかで面接受ける前に、学校の校門くぐった時点で落ちましたよ」
「ブレダ少尉は?」
「アイツは体重体脂肪つーか外見が当校にふさわしくありませんとか言われてな、今やさぐれてるわ。健康健全な体を管理できない人間はいらんとさ」
「そ、それって……」
「なんつーかこう。ヤナガッコ―って感じだわ」



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