小説・2

BL二次創作&創作。18歳未満の方はお戻りください。無断転載厳禁です。
「大佐なんて好きじゃねえ、うざい、キモイ、オレに触るなこの中年」
……酷い言われようだと思う。金色の天使のような外見のお子様は口の悪さは天下一品。容赦なく私の心を傷みつける。
「女たらしのかいしょーなし。仕事溜めまくって中尉に撃たれちまえってんだ」
無言でいれば私への悪口はエスカレートしそうだ。いい加減に止めるべきか。
はあ、とため息をつきながら私は「……鋼の」と非難をこめてその二つ名だけを呼んでみた。すると鋼のはじろりとその金の瞳で容赦なく私を睨みつける。睨まれるような真似をしたつもりはない。そん心当たりも全くない。大体鋼のに会うこと自体が久しぶりだ。
いつものように書類にまみれてそれにサインをひたすら繰り返していた本日の私の執務室に、挨拶の一つもなく現れて、開口一番彼の可愛らしい口から飛び出したのは悪口雑言。
……そんなことを言われる心当たりなど皆無だというのに。はあ、ともうひとつため息をつく。そんな私に鋼のは流れるような流暢さで私への暴言をすらすらと吐き出し続けている。いつ終わるともわからない大量の文句や暴言を大量生産。けれどそんな悪口製造器と化した鋼のは、その両腕を私の背に回していて、私の軍服にしわが寄るほどに強く、ぎゅっとしがみ付いていたりするのだ。ならば私も鋼のを抱きしめてもいいのだな、と彼の背に手を回すと、途端に言われてしまうのだ。「触んなよ、このエロ大佐」と。
全く一体この私にどうしろというのだね?何度目かのため息をつきながら私は反論を試みる。
「触るなと言われてもだね、鋼の。君のほうが私にしがみ付いてきているんだぞ?」
「オレは大佐にしがみ付きたいからしがみ付いてるだけだ。でもアンタはオレに触んな」
彼の言う通りに触らないようにと努力をすれば、彼の背に回しかけた私の両手を挙げるしかなくて。ホールドアップの姿勢で直立不動。そんな私にしがみ付く鋼の錬金術師の姿は、どのように判断したらいいのだろう?最近の若い者の考えはわからん、などと人生をリタイアしかけたご老人のようなことを思いながら私はしがみ付いている鋼のの金の髪に視線を落とした。さらさらの金の髪の間から、ほんの少し見えている彼の耳は予想外にこれでもかというほどに赤に染まっていて。
……これはもしや。
期待半分願望半分でその赤い耳をじっと見る。
「好きじゃない」は「好き」で、「触るな」は「触れ」、だとしたら。
天の邪鬼な性質のこの子のことだからもしかしたらそういう可能性もあるのかもしれない。いや、そういうことだと勝手に判断してしまおうか。
「……鋼の」
もう一度その名を言葉に出してみる。
「うっせーなっ!文句ばっか言うんじゃねーよクソ大佐、ばーかばーかばーか」
そういいながらも更に強くしがみついてくる鋼のに、私の判断は間違っていないのだなと確信して。問答無用で彼の身体を抱きあげて、その暴言製造器である唇を、ふさぐために顔を寄せた。



‐ 終 ‐



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