小説・2

BL二次創作&創作。18歳未満の方はお戻りください。無断転載厳禁です。

もしかしてやっぱオレ男だからそういう気にならないのかな?胸ないと駄目なのか?同じモンついてたら、気持ちはどうであれ、身体は萎えるんかな?それともやっぱり機械鎧だと気持ち悪いとかなのかな……とかも思って落ち込んだ。けど、いつまでも落ち込んでるのもオレの性に会わなくて。とっとと確認はしてみた。うん、確認だ、確認。さ、触りたかったわけじゃねえぞ?や、ちょっと、まあどーなんかなって興味はあったんだけど。えーと具体的にって言うか、露骨にいえばロイの股間に手を伸ばして触った。あっはっはっはっは。いやいやいやいや。口にすると照れるな。
アルフォンスにも兄さんそこまでしたの……って呆れられたんだけどさ。
でも、まあ、収穫はあった!!ロイのそこはしっかりとした強度を保っていた。うっしゃ、オレの勝ち。あ、勝負じゃなかった。そんなにしてんならいいのになーって思わねえ?そんなに我慢しなくてもいいってのに。
オレはもうとっくに覚悟なんか決めてんの。ちゅーだけじゃ、もう足りねえの。あのさ、オレだって子どもじゃねえんだよ?思春期舐めんなよ、想像どころか妄想モード全盛期なオトシゴロなんだぜって、わかるだろ?
……そりゃ、腰抜けるくらいの情熱的な、あっついキスをかましてもらっているけどさ。でも、その先を期待してもいいだろう? ……まあでも、こーゆーのも大事にされてるっぽくてちょっといい。ちょっとうれしかったけどな。そこまで我慢してくれてるのはさ。愛されてる証拠みたいにも思えて。
でもな。
けどな。
そろそろいいんじゃねえのっても思うんだよな。それに今日は何とオレの誕生日!!
なあ、十八って年齢どう思う?
身体的に深いお付き合いに移行したって問題のない年齢だ。そうだろう?
結婚だって出来る年だし。だから今日こそ!!何が何でもロイの寝室にもぐりこみ、積年の思いを果たそうと、ぶっちゃけて言えば最後の一線を越えてやろう。めくるめく快楽の世界へ飛び立とう!そう誓ったというのに。そう決意したデートの最中だったのに!
なのに。
なのに。
なのに。その大事な大事な大事な大事なデート最中だってのに、ロイを人質なんかにしたあげく、顔に傷だと?ふざけんじゃねえええええ!お前なんか三流ヤラれキャラのくせに!!
オレは次第に湧き上がってくる怒りのままに「このニヤケきったツラ、搔っ捌いてやるぜ」と嗤った男を睨みつける。同時に体にも力が入っちまって、手にした拡声機を握りしめ、ばっきばきに粉砕してしまった。足元の砂利の上には粉砕されたばかりの拡声機の残骸が散らばっていく。
「あ、いけねえ。今からコレ使うんだった」
慌ててパンと両手を打ち合わせて錬金術を発動する。日が落ちて暗さを増した列車の発着場に青い錬成の光が輝く。いつも思うけど錬成の光ってちょっときれいだよな。ぴかぴか光るって言うんじゃねえけど、まるで暗闇を切り裂く稲妻のような輝きだ。オレには見慣れたこの光。けれど、警戒していたテロリストたちにとっては驚くべきものだったようで。
「錬金術師!?」
どうやら警戒心をより一層強化してしまったらしい。一斉にオレに向かって強い視線が集中した。ロイを人質にとってその首筋にナイフを当てていた男がちらりとほかのメンバーに目くばせをする。コンテナの上に登っていた一人の男がこくりと小さくうなずいた。その男は手にしていた手榴弾のピンに指をかけた。衝撃を与えてしまえばそれだけでピンは外れ、その男も絶命するだろうが、周りの被害も計り知れない。オレの錬金術だって間に合わないかもしれないのだ。また別の男も銃のグリップを握りなおす。
けれど軍部メンバーは動揺など欠片も示さない。黙々とそれぞれの仕事に精を出し、包囲網は完成した。残すはヒュリー曹長の作業待つのみだった。
オレは錬成し直した拡声器のボリュームを最大に設定すると、ロイにナイフを当てている男に向けて、可能な限りの大声を出した。
「ロイの顔に傷つけやがたらタダじゃおかねえからな!ああもうメンドクセエ!さっさとオレの男を返しやがれ!」

途端に周囲が脱力したのが手に取るようにわかった。けれどオレはこの上なく真剣だ。ヒュリー曹長がぼそぼそと、まるで独り言のように呟いてみて。
「あの……エドワード君?せめて『君たちは完全に包囲されている。武器を捨てて投降せよ』とか、言ってくれると嬉しかったんだけどなあ」
が、オレはそんな言葉には耳も貸さずに、拡声器を手に怒鳴り続ける。
「それはオレのだ!返せすぐ返せ今すぐ返せっ!速攻返せ!!!もう日が暮れちまったじゃねえか、今日じゃなきゃ駄目なんだ、今日出来なかったら、てめーら全員死んだ方がましだってメにあわせてやるぜっ」
心の底からのオレの本心だ。今まで出来なかったことに対する八つ当たりなどではない。あ、せっかくの誕生日デートの邪魔をされた悔しさはあるか。うん、めちゃめちゃあるぞ。盛り上げて盛り上げて、なんとかロイをベッドに引きずり込もうかと画策してたってーのに。まあ、だから意識がロイにしか行かなくて、周囲の状況なんかどーでもよかったからこそこんな状況に陥っちまったのかもしれねえけど。
「……でも、仕方ねえだろ。オレの人生かけて、気合いを込めて誘惑してたんだからな。アルフォンスにも今日は兄ちゃん帰らねえからな、って宣言したって言うのにさ。あー、思い出したらムカつき倍増。『どうせ今日も一緒のベッドでなんにもないままグーグー眠るだけでしょ』って、オレを送り出したアルの顔が薄ら笑いがまざまざと浮かんでくる。脳味噌沸騰してきたぞ。なあ、もう十八なんだから、いいじゃねえか!してもさあ」って、つい口に出してしゃべっちまってた。いかんいかん。
無意識のうちに本心を口に出していたってのに、してもいいじゃねえかっていう、その具体的な行為を突っ込んでくれる優しい大人はいなかった。ヒュリー曹長ですら、知らない聞こえないって黙々と作業をしてるしさ。オレに声をかけてくれたのは、人質となっているロイだけだった。
「エドワード。すまないね。大人しく待っていてくれないか?すぐに帰るから。そろそろ予約していたレストランの時間だしね」
にこにこと、のんびりしたロイの声に、オレはこくんと首を縦にふった。
けれどその声は、テロリストを刺激しただけだった。
「貴様、自分の状況がわかっているのか?」
男はナイフをロイの頬に当て、ほんの少しだけ、その肌に滑らせる。
「……っ」
ロイの頬から首筋に、血が流れ落ちていく。夕焼けよりも赤い流れ。それを目にした途端、周囲を取り巻くロイの部下たちはざわりと浮足立った。ロイはそれを片手で制す。大したことはないから落ち着いてくれと。けれど、鋭い眼光で背後の男にロイは低い声を出していった。
「あまり顔に傷をつけてほしくはないんだがね……」
ロイの文句などには冷笑を浴びせた。優男が何を言ってやがるとでも言いたげな、見下した眼だった。
「さっさと我々の要求どおりにしろ。さもないと言ったとおりに貴様の顔に口をもう一つ作ってやるぜ」
顔に付けた傷に再度ナイフを当て、さらに深く抉る。その刃先からロイの血がぼたぼたと落ちていく。首から肩にかけて流れ落ちた血液がどす黒く軍服の布地を染めた。
だけど、ロイはたいして気にもせずに、表情を変えないまま告げる。
「ふむ。君らのグループは『赤の旅団』だったかね?色の選択は素晴らしいではないか」
ほら、彼のコートの色と同じだよ、とロイは上げたままの手でオレを指し示してからのんびり告げた。
「ふざけるなよ、ロイ・マスタング。お前の命はオレが握ってんだ」
大声で言ったところからするとこのセリフはロイへと向けてというよりも周囲を取り囲んでいる憲兵やロイの部下たちの牽制に出されたものかもしれなかった。単に地声が大きいという可能性もあるのかもしれないが。
この間オレは動くことが出来なかった。怒りが大きすぎて、咄嗟に声すら出ない。歯を食いしばって、身体を震わせるのみだった。
「おい、てめえっ!ロイに傷、付けやがって。いい度胸だ、覚悟しやがれよ……っ!」
オレは手にしていた拡声機を地面へと叩きつけ、足を一歩前に踏み出した。

ばきっと壊れる音がした。せっかく錬成し直したってーのにまた拡声機破壊しちまったなあ。けど、今度は直す暇などないぜ、、とっととケリをつけてやる!!
オレはテロリストたちの方へ駈け出そうとした。けど途端にハボック少尉とファルマン准尉に手と足を押さえつけられる。
「お、落ち着いてくださいエドワード君。あれ以上酷い怪我でもおわされたら大変ですっ」
と、オレの足をつかんでいるのが准尉で、
「ほれ、大将おちつけよー。だいじょーぶだからさ、あの人なら。死神にも見捨てられてっし」
火をつけていない煙草を口にくわえた少尉には背後から押さえられて。
けど、オレはもう我慢ならねえぞ!ああ、オレのロイの大事な顔に!!
「うるせーなっ!殺しても死なねぇのくらいわかってるっ!けどな、見ただろ、今、アイツ、ナイフでっ!」
激高したオレはファルマン准尉を蹴り飛ばし、ハボック少尉も投げ飛ばした。ブレダ少尉があちゃあと顔を顰めた。ホークアイ中尉は銃口を一ミリたりとも動かしてはいない。ヒュリー曹長はライトの設置がようやく終わったところかな。つまり、止めようとする者などは居りはしなかった。
いや一人だけ、いた。人質となっているロイだ。その口からのんびりとした声をかけられて。
「エドワード、いい子だから大人しくしていたまえよー」
頬の傷など気にも留めないかのような声に、激怒したのはナイフの抹殺決定馬鹿テロリストではなく、オレのほうだ。
「できっか、この無能……っ!オレに断りもなく傷、つけられやがって」
ふーふーと沸騰するのを止められなかった。にこやかに制してくるロイにもなんだかだんだんムカついてくる。
「ああ、気になるかい?大したことはないんだが……ならば後で君に舐めてもらうから」
え、ロイ今なんっつった?な、舐めるとか言ったのか?
オレの顔がイキナリ赤くなったのがわかった。
舐めるって……なめていいってこと?だよな。いいのか?そっかーそうだよな。うん、なめちゃおうかなーっ、「ええと、どこまで舐めていいのかな?顔はおっけー、その下は…首もいい?…うわわわ~、ホント、いいのかなー。あーっと、どこまでおっけーかなロイ的には」とまたオレは無意識のうちに言葉に出しちまってたらしい。独り言、最近のオレの癖なのかな?って考えている時に、げっそりとしたハボック少尉が腹を押さえながらなんとか身体を起こしてきた。
「大将……そーゆーのは後にしてくんねえか……」
「だ、だって、ほら、あれだ。……て、照れるじゃねえかよ、お墨付き出ちまったんだぜ?な、めていいって……さ、」
かあああああっと耳まで真っ赤なままのオレ。脳内でロイのどこを、どこまで舐めているのかなんて、照れるじゃねえか、恥ずかしくて言えねえぜ。
「あー……青少年は大変だなあ……」
ハボック少尉のその呟きをオレは聞き逃しはしなかった。待っていましたとばかりに畳みかける。
「なんだ、少尉わかってんじゃねーか。そうなんだよ、アイツ紳士だからなー。オレに手、出してこねえの。もーちょっとしてくれてもいいと思わねえ?オレだってもうガキじゃねえんだし。それとかあれとかこれとかさ、ロイとだったらいいじゃねえかって思うんだけど、でもさーロイの奴いっつも言うんだよ。『未成年のうちは身体的に深いお付き合いはしない』てさー。もー頭固いってんだ。なー、少尉もそう思うだろ?なあ?なあ?どーよ?そろそろいいよなー」
バンバンバンとオレは少尉の背中を叩いていった。なんでこんなにげっそりと背中を丸めてんのかはわからないけれど、うっしゃ、貴重な賛同者。
うん、少尉っていいヤツだ。
そんなオレに邪魔者、つまりテロリストたちは切れたらしい。
「お前っ!そんなどーでもいい与太話なんかしてねえで、さっさと俺らの要求に答えやがれ!さもないと今度は首でもぱっくりいってやるぜ!」
ぐっと、手にしたナイフを構えなおしながら、オレに向かって怒鳴ってきた。売られたケンカは買ってやるぜ?そもそもロイの顔に傷なんか付けた時からオレ様の抹殺リストの筆頭はお前だお前、そこのむさいおっさんテロリスト!名前も知らねえけどな、確実に殺ってやる!
「おっさんはうるせーんてんだよっ!よりにもよってオレ様の誕生日にオレ様の恋人を人質にとりやがって、その上厚かましくも要求か?それ以上ロイに傷つけてみろ、ただじゃおかねえからなっ!」
オレは右手の中指を立てて、それを突き出してやった。
「頼みますから、犯人たちあおらないでください……」と未だに倒れたままのファルマン准尉が言ってきたけど煽ってるつもりはオレにはない。オレは売られたケンカを買っただけ。
テロリストたちの持っているナイフやらライフルらやらがぶるぶると震えているけどそんなものどーでもいい、知るかってんだ。
「貴様っ、このチビ!いい度胸してるじゃねえか、何なら今すぐこの首かっ切ってやってもいいんだぜっ」
おまけにオレに向かってその単語を怒鳴りやがったな!?いい度胸だっ覚悟しやがれっ!とオレが怒鳴ったのと同時にヒュリー曹長の小さな声が聞こえてきた。「セット完了」と。


3へ続く



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