小説・2

BL二次創作&創作。18歳未満の方はお戻りください。無断転載厳禁です。
No.5-2「晴れやかな未来」その2

「ん……」
「……エドワード?」
ロイは確認するように耳元で囁いた。その低く蜜のような響きに、エドワードの身体が震えた。ああ、やっぱりアンタにオレの名前呼んでもらえるのって嬉しい。
「……あんま、がっつくんじゃねえ、ぞ?」
「お望みとあらば、ゆっくりと」
言葉どおりゆっくりと、ロイはその手を動かした。服の上から円を描くようにエドワードの身体に触れていく。胸に手を合わせ、脇腹へ。そのまま後に手を回し、背を抱きしめる。唇はお互い触れたままではある。けれど舌を差し入れることもなく唇の形を確かめるように啄ばむだけだ。手も唇も、触れるか触れないかのぎりぎりのラインを保ったまま動かし続ける。柔らかく、ゆっくりと。掌の温かさを確かめているだけかのように思えるその行為に、先に根を上げたのはエドワードのほうであった。
「ん、ロイ。……もっと」
服の上から触れられているだけではもう足りなかった。直接的な刺激が欲しい。エドワードは自身の情欲を隠すことなく、自分からシャツのボタンを外していった。
「ゆっくりと、と希望したのは君なのだがね……?」
わざとロイはそう告げると、晒されたエドワードの胸に手を当てた。ピンクの色をいっそう濃くしているその一点には触れずに、周りだけを時計回りに指で撫ぜていく。もっと刺激が欲しいとばかりに反らされたエドワードの胸。ロイは胸の突起以外のところにだけ、意地悪くキスを落としていった。唇も、そっと掠めるだけに留めて。
「あ……、も、じらすなよ……」
仕方ないなとばかりに軽く、突起を口に含んだ。歯を当てるようなことはしない。唇と唇で温く食むだけにとどめて。それでもエドワードからは熱い吐息が洩れた。
もっと、もっと、強い刺激が欲しい。
突起を食んだまま、ロイはエドワードの衣服を剥ぎ取っていく。一枚そして、また一枚。ゆっくりと。その動作にも性急さは微塵もない。じれったいくらいのその動きに、エドワードは自分から腰を浮かせた。さっさと脱がせよ、とばかりに。あからさまなサインを送られてもロイは動きを早めたりはしなかった。薄皮を一枚一枚剥いでいくような慎重さで、下着までを脱ぎ取っていく。一糸纏わぬエドワードをロイはじっと見下ろした。その視線はさて、どこからして行こうか、とでも考えているようだ。見られていることがわかってエドワードは全身を桃色に染めた。けれど恥ずかしさだけではなく、そこには期待も含まれている。はやく、早くロイが欲しいと。エドワードの全身が声を上げている。けれど晒された下肢にロイは手すら触れなかった。ただ、胸を食んだまま、ロイの手はエドワードの脇腹を通り、太股を撫でて。大きな円を描きながらゆったりと掌で撫ぜてるだけだ。触れられもしないエドワードの中心はそれでも次第に力を持ち、立ち上がりかけている。ロイの手はそこだけを避けるようにして、周囲を柔らかく辿る。付け根をついと、指で辿る。後で既にひくついてしまっている孔にもそっとその表面に触れるだけで。真綿か羽で触れられているだけのような微かな愛撫のみが繰り返された。なのに先端からは蜜があふれ出してきてしまった。
「あ あ あ、もうっ焦らさなくていいって言ってんだろっ」
いっそ自分の手で触れてしまおうか。そうエドワードが思った瞬間、ようやくのことでロイの手がエドワードの中心に、触れた。ふわりと、大事なものを手にしているとでも言うかのように柔らかく握られただけだというのに、エドワードの身体に電流が走った。 ……ああ、いい。もっと。
ロイの手が輪を作って上下に動く。形を確かめているのだといわんばかりのゆっくりとした上下の動き。それでもようやく直接触れられた快楽に、エドワードは声をあげ続ける。そろり、と先端まで辿られて、先の割れ目を指で押されるだけでもひくひくと震えてしまう。裏筋に沿って指を下ろされればじんわりと悩ましい熱が波紋のように広がっていく。指だけで、もうこんなだ。強い刺激などされてもいない、ただ、ゆっくりと触れられているだけなのに、なんでこれほどまでに気持ちがいいのか。熱を放出できる契機がないまま、ゆっくりと触れられ続ければ重い疼きが身体に籠る。腰を中心にどんどんと熱がたまっていく。身体が熱くて疼いて仕方がない。けれどいつまで経っても強い刺激を与えてはくれない恋人に痺れを切らしてエドワードは叫んだ。
「も、もう、早くっ……」
「まだ、触れただけ、だろう?時間はたっぷりあるんだ。前言どおりゆっくりと、だね……」
その言葉にいやだ、とエドワードは首を横にふる。確かにがっつくな、とロイを制したのは自分だった。けれどこんなふうに真綿で首を閉め続けられるような愛撫が続けば、熱は籠るだけで。このままこんな行為が続ければ欲しくて欲しくて仕方がなくなる。
「ロイ……」
潤んだ目を向けて強請ってやろうかとも思った。きっとそうすれば我慢ができなくなるのは自分ではなくロイのほうだと。が、エドワードが策略をめぐらす前に耳朶に言葉が囁かれた。
「あれやこれやそれの、どれか一つだけでもしてもらおうかな?」
欲しいんだろう?とロイは意地悪くエドワードを見つめた。
エドワードはぐっと詰まった。にやにやと哂う恋人を睨みつけても、そんな君も可愛いなといなされた。
……チクショウ、こんなふうにしたのわざとかよっ。
絶対に嫉妬してやがると思ったけれども。それでもエドワードは覆いかぶさったままのロイの身体をぐっと押して、立ち上がった。
「……そこ、座れよ」
ロイをソファに座らせて、エドワードは絨毯に膝をついた。そうして既に硬さを見せ始めているロイの中心を取りだす。手で触れているだけでもそこが熱く感じられて、ごくりとエドワードは喉を鳴らしてしまった。昼間の明るさの中ではしっかりと細部まで目視することができてしまう。ますます身体に熱がこもったようでエドワードはぎゅっと強く目を瞑った。ロイの先端に舌を伸ばす。目をつぶっているのだから見えはしないのだが、感触で手の中のそれが大きさを増すのがわかった。やられたらやりかえすとばかりにゆっくりと舌を使っていく。濡れた舌を先端でゆったりと弄ぶように回してやる。同時に、ロイの欲望の根元を柔らかく包んでそっと扱き上げていく。ゆっくりとゆったりと、それだけを意識してエドワードが舌と手を動かし続ければ、更に硬く熱を持ったロイの先端から先走りの蜜がにじみ出てきた。その苦さがエドワードの口の中に広がる。苦味しか感じないはずのそれが不思議と熱くて、今は触れられてもいないエドワードの中心が疼き始めた。
「んっ、んん、」
エドワードのその欲情に気がついたのか、それとも別の意図からか。ロイは陶然とした笑みを浮かべた。
……これはこれでたまらないものがある、が。
微かに震えながらロイのものを食んでいるエドワードなど今度いつお目にかかれるかわかったものではない。このまま続けてさせたい気持ちもあるけれども、それよりも……と、ロイはエドワードの脇の下に両手を差し入れると、ぐいっと力を込めて持ち上げた。
「あ……」
急に抱き上げられたことに驚いて目を開ければ、自分はロイの身体を跨ぐように足を広げているのがわかった。視線を下にまわせば、開いた脚の真下にはロイのそそり立つものが見える。
ああ、アレが欲しいのに……。
向かい合わせになってはいても、エドワードはソファに膝立ちになっているためほんのわずかな距離だというのにそこに届きはしない。体勢と変えようと姿勢をずらせば、膝に当たるソファの感触が柔らかくて、身体がぐらついてしまった。支えるために手をソファの背についてぎゅっと握れば運悪く自分からロイに胸を突き出したようになり、そこをいきなり強く吸われた。ついで上を向いているエドワードの中心にもロイの手は伸びて、そちらは先ほどと同じように柔らかく上下された。
「ん、あ……、」
左の胸と中心を同時に、しかも異なる強さで攻め立てられてエドワードはその白い咽喉を逸らした。身体を支えるものはソファの背を硬く握り締めている自身の手だけで。後はロイの唇とその手で揺さぶられてしまって。ソファのスプリングがぎしぎしと音を立てる。その音に添うようにエドワードの荒い息がリビングに響いていった。それがまるで二重奏のようだ。ロイはその音を楽しみながら、エドワードの身体を追い立てていく。既に口に含んでいるエドワードの胸の突起はまるで薔薇のとげのように尖っている。下肢も、情欲に硬く膨らんでいて、弾けるときを待っている。けれど強く吸うのは胸のほうで、エドワードの中心は、やはり、優しく触れているだけに留めた。
……まだ、だ。もう少し堪能させたまえ。
柔らかく触れているだけなのに、エドワードの先端は蜜を生み出し、ロイの手を濡らしていった。弾けることはない。けれどじわりじわりと先走りの液は次第ににじみ出てくる。刺激が欲しいとばかりに自ら揺れるエドワードの腰を、左の手でロイは支えてやると同時にエドワードの中心を弄っていた右の手をそっとそこから外した。
「あ、やだ、ロイっ」
触って欲しいと見下ろせば、ロイはわかっているからとエドワードの瞳に向かって笑みを零す。その意図がわからずエドワードが首を傾げれば、こうだとばかりにロイの右手はエドワードの後の孔に触れた。そうしてやはりゆっくりと、ロイの指はその中へと進入していった。
「ああ……っ」
一番締め付けの強い入り口を潜り抜けて、指は難なく根元まで埋められた。けれどそのまま引き抜かれる様子はなかった。ただ、エドワードの中に入ってきただけで動くこともせず、そこに居続けて。それなのに、それだけなのにエドワードの腰から背中がふるふると震えた。
もう乱暴でもいいから動いて欲しい。入ったまま動かないなんて、拷問にも等しい。エドワードは耐え切れず
「あ、や……っ、うごけ、よ……」
と、ロイを睨む。
くすりと哂ってロイは一度だけ指をぐるりとまわし、そして、再び指を静止させた。
「あっ、あ、ああ……ロイ……っ」
一度では足りなかった。もっと刺激が欲しくて。エドワードはロイの腹に自身を擦りつけた。
「ずいぶんと悩ましいな、エドワード?」
囁かれたその言葉の意味を理解して、エドワードは眼を逸らす。それでももっと強い刺激が欲しかった。
「そのままゆっくりと腰を落としてごらん?」
その言葉と同時にロイは後から指を引き抜き、ソファに自身の身体を横たえた。引き抜かれる刺激にさえ、もう快楽を感じてしまう。もっと強い刺激を求めるのならばもう他に選択肢はなく、言われたとおりにエドワードは腰を落とし、ロイの身体の上に跨った。片足を折り曲げて、もう片方の足はソファから絨毯へと伸ばした。手も、片方はソファの背をしっかりと掴み、もう片方の手はロイの腹の上に置く。そうしてエドワードは息を吐きながら、ロイの硬くそそり立ったそれを受け入れるために身体を進めていった。既に慣らされているとはいえ、穿たれる深度が増すたびに身体は焼けついた。指などとは比べ物にもならない質量を全て収めてしまえば身体が勝手にその先を期待して熱を増す。エドワードは収めてしまったロイの大きさに息を吐く。ああ、これでようやく望みどおりの快楽を得られるのだと。けれど、ロイはそのまま動くことはしなかった。ただ、エドワードの中でじっと、息を潜めるように、その身を硬くしているだけだ。動いているのはロイの下肢ではなく手だけだった。ロイの右手はエドワードがソファから転げ落ちないようにとしっかりと腰を支えていた。左手はエドワードの腰から太股を撫ぜている。円を描くように上から下へと下ろしていき、そうして太股まで達すると再び腰へと触れていく。
「動けって……っ!」
これ以上焦らされることに耐え切れなくなり、エドワードは自分から腰を動かした。動けと言っても、その気配すれ見せないロイに焦れて、エドワードは自分で腰を上げ、そうして再び腰を下ろす。
「下から突き上げるのは大変なのだよ。君の言からすると私は肉体年齢は三十八、というのが歴然とした事実なのだろう?」
「今朝のこと、根に持ってんのかよ」
「もちろんだとも。ああ、年のことではなく……君が私から逃げ出したという事実にね」
「こんなに毎日毎日じゃあ逃げ出すのも当たり前だろっ。オレは加減しろって言ってんの」
「君に対して手加減などできるものか。そんなことをして誰かに取られたらどうするんだ」
「……は?」
エドワードは予想外の言に目を白黒させた。
他の人間に取られる?そんなことありえないと思うんだけど……。
エドワードは自分の中に入ったままのロイの中心のことも一瞬忘れ、
「……オレ、アンタ以外に好きなヤツなんていないけど?」
と首を傾げた。
「君はそうでも、君を欲しがる人間などたくさんいるだろう」
それはアンタの方じゃないかとエドワードは思う。
ロイの記憶に残っている東方司令部時代、アンタ、いったい何人のオンナノヒトと付き合ったのか言ってみろ、と迫りたい衝動に駆られた。が、そんなことを言い出せば話はますます脱線しそうで、とりあえず、修める方向へとエドワードは思考をフル回転させた。何しろ自分の後ろにはロイが入ったままなのだ。会話などさっさと切り上げて、肉体的な快楽を追いたいというのが本音だ。
「そんなのアンタくらいなものだろ?」
「そう思っているのは君だけだとも……」
そう思い出すのはホークアイのインタビューが掲載された記事。そこには「理想のタイプは鋼の錬金術師」と明記されていた。以来、気をつけていればあちらこちらからからエドワードに向けて秋波は送られている。単にエドワードが気付いていないだけなのだ。というよりも、きっとホークアイとそれからロイ自身の鉄壁のガードというか牽制により、直接エドワードに告白するなどという度胸のあるものが居なかっただけだろうとロイは思う。けれど影で想いを秘めている者がどれ程いるというのだろうか。想像するだに恐ろしい。そんなもの蹴散らすくらいは朝飯前だが、エドワードが誰かに……と、考えてしまうことすら腹が立つ。

当初、敵は過去の自分だと思っていた。けれど結局はロイ自身の失くした記憶の中にしかない。不愉快だと思ってはみても実害はない。影で思いを秘めているものなども正直うっとうしいが所詮敵ではない。けれど彼女は過去の自分よりも強敵だ。きっと気を抜けば私は銃の的になり、エドワードは彼女の手に落ちる。だから、過去の自分は牽制のためにエドワードの身体に痕を残し続け、軍の広報誌まで使ったのだとも理解した。さまざまな意味を込めて、エドワードを逃がさないために、また、誰にも奪い取られないために、ロイは毎日毎日愛を囁き続け……。つまり、文字通り身体を張っていたのであった。
そんなロイの思惑などこれっぽっちも気がつかないエドワード。単にロイは過去のロイ自身に嫉妬を燃やしているだけ思っていた。そして、それほど好きになってくれて嬉しいなとも。だからくすくすと笑った。
「あのさ、ロイ。オレの好きな人はアンタだけ。もし仮に誰かオレのことが好きだとか言ってくれる人がいたとしてもそんなの関係ねえから。オレ、もうアンタから離れる気、ねえぜ?」
だから安心しろよとエドワードはロイの唇に一つキスを落として、自分から律動を再開した。
「こんなこと、オレからすんのもアンタだけ」
「エドワード……」
ぎりぎりまで我慢させられて、その上ほったらかしにされていたエドワードの身体は一気に燃焼した。もう熱を止めるものなどありはしなかった。エドワードは両手をロイの引き締まった腹筋にそっと置くと、上下に動き出した。腰を持ち上げれば内壁を擦られて、下へと腰を落とせば深く深く最奥までが穿たれる。ロイもエドワードの動きに併せ、下から突き上げる。がくがくと身を震わせるエドワード。その顔は陶酔し、酩酊しているかのようだ。後に仰け反ったエドワードを支えるために身を起こせば、エドワードはロイの首に手を回し、ぎゅっとしがみ付いて。もう何も考えられなくなって、エドワードはただ、快楽を追った。
「ロイが好き、だ……」
身体を震わせてそう告げたエドワードをロイは強く貪り続けた。

そうしてロイに貫かれたまま、気がつけば深夜。
「……結局いつもと同じかよっ!」
リビングのソファから廊下へ、廊下から寝室へと場所を移してもしていることは一つだった。 もう……なんで、ロイはこんなにやり続けられるんだろう……。今日も流された自分が馬鹿だったのか。エドワードは深夜になった今も、自分身体を穿ち続ける黒髪の恋人を見つめ続けていた。
「まあまあ、落ち着きたまえよ。エドワード。……愛しているよ」
「うるせー、この馬鹿!ヤリ魔、変態!いいかげんにしろってばっ!」
そんな男が好きで好きでたまらない自分自身に腹がたつ。なんてオレはこんな男に心底惚れてんだ……っ!
真っ赤になって暴言を吐き続けるエドワードをロイは優しくその腕に包み込んだ。
「まあ、新婚期間は諦めたまえ。そのうち私も落ち着くだろうから」
エドワードは自分身体を穿ち続ける黒髪の恋人のその信じられない発言に眩暈がした。
そのうち、そのうちって、いったい何年後だよっ!
そうして今度は貫かれたままの身体を、睡魔ではなく気絶という別のものへと預けるしかないエドワードであった。

No.6「kiss kiss kiss」に続く
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