小説・2

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No.6-5「kiss kiss kiss」その5


浮かれてしまっていたからだ。ロイがオレを好きだと言ってくれたその言葉に。
嬉しくて嬉しくて。
だって、オレ、気がつかないだけできっとずっと好きだった。心の中のこの気持ちに「好き」って名前がつくまで気がつかなかっただけで。もしかしたら、最初から。きっと、あの時。初めて会った時からロイは特別だった。オレの暗黒の世界に焔の色をつけたのはロイだ。感情は急流のようだ。今まで自覚がないまま塞き止めていた感情は一気に溢れる。こんな心をセーブできるのか、それも自信が無い。
気がついてしまった気持ちを隠しておけるのか。
キスなんてされたらきっとまた抵抗なんて出来ない。抱きしめられたらうっとりする。
そう、あの心地よさをもう否定できるものではない。でも、否定し続けるしかない。それがロイのためだ。アイツの足枷にならないために。好きだけど、恋人にはならない。いや、なれない。 もし気持ちがばれても、それでもアンタの側には居られないって言うしかない。いくらキスなんかしても、もしかしたらそのうち身体なんかも重ねても。それでもオレらは恋人じゃないって言い張るしかない。アイツは上司でオレは部下。オレらの関係に名前をつけるのであればこれしかない。決して恋人なんかじゃない。
だから、いいんだこれで。
好きだから、好きになってもらったって本気だからって。それだけでいい。お互いの気持ちの中だけでいい。
いいんだよ。本当に。オレはこれで。
一生なんて側に入れなくてもこの気持ちは本物だから。ロイが向けてくれた気持ちも本当のことだから。ほんの少しの時間だけ。ロイの時間をオレに分けてもらって、それを大事にすればいい。離れた後も、思うことは許してもらって。うん。それでいい。これが例えば一生にたった一度の恋だとしても、別れた後に後悔なんかしない。オレは決してロイの足枷なんかにはならない。

エドワードは自分に言い聞かせるように何度も何度も胸も内でそう告げて、穏やかに笑うとバスローブだけを羽織って浴室を後にした。

ゆっくりと廊下を歩く。既に何度か泊まりにきたこともある家だ。ロイの寝室は階段を上ってすぐの部屋。とんとんとん、と軽い足取りでエドワードはその階段をのぼって行って、そうして扉の前で一度深呼吸をしてから、そっと寝室の扉を開いた。
「……ロイ?」
寝室は既に灯りが落とされて、ベッドサイドのオレンジ色の光だけがぼんやりと部屋を染めていた。ロイはベッドに腰を掛けてエドワードを待っていた。
「おいで、エドワード」
その声が欲情を含んでいて、常よりも艶やかに感じられた。
エドワードはぎこちなく足を進める。足裏の絨毯の感触が、痛いくらいに感じられた。そっと右足を出す。一歩ロイに近づく。左足を一歩進める。ロイとの距離が更にほんの少し縮まって。右足を出し、次いで左足。そのたびにロイに近くなる。心臓が早鐘を打つ。扉から、ベッドまでの短いはずの距離が、異様に長く感じられた。それでもエドワードは歩を緩めることをしなかった。掌が汗ばんでくる。
期待と、――不安で。
これから好いた男に抱かれるのだ。初めて情を交わすのだ。それを再認識してしまった途端にエドワードの足が固まったように止まってしまった。さっきまで、右、左と歩を進めていた足は、ロイまであと三歩というところで、石膏で固められたように、そこから動かなくなってしまった。 エドワードはロイを見た。その漆黒の目は欲情を湛えていて。まるで匂い立つようだった。その瞳を見た途端にエドワードの身体がカタカタと震えだした。
……何で?
平気だったはずだ。いつ、抱かれてもいいはずだった。なのに何故、身体は震えてくる?足がこれ以上進まない? 寝室へと向かう階段を上がったときは軽かった足取り。この部屋に入ってからほんの少しずつぎこちなさが加わって、そうして今は止まってしまった。
身体が震えるのは何故だ。怖い?怖いのかオレは。ロイに抱かれることが?
それは自分の望みのはずだった。
好きで。いつの間にか好きになって。こうなることを思い浮かべもしていて。そう、ロイの 声やその手の熱さを思い浮かべて、自分の身体を慰めたことすらあったのだ。きっとこうやって、ロイは自分に触れる。それを想像して。キスをされて、舌を絡められて。きっとあんなふうにロイは自分を抱くのだと、身体を熱くした時もあった。それなのに何故、あとほんの三歩が進めない?
震えだしたエドワードを見て、ロイがゆっくりと立ち上がった。エドワードはそんなロイを見て、このままここから逃げだしたくなった。無意識に一歩、足を引いた。
……なんで震えるんだ。オレはロイが怖いのか?
ロイはそんなエドワードを気づかうように、壊れ物を扱うかのごとく優しくその腕に抱き寄せた。エドワードはロイに抱き寄せられても、自身の手をロイの背に回すことも出来ず、震えの理由のわからないまま、その腕の中で立ちすくんだ。
「大丈夫。怖くはしないから」
そんな言葉もどこか遠くのほうで響いているようで。エドワードは拳をぎゅっと握った。今までなら、うっとりと受け入れていた接吻にもエドワードは反応できずに、身を硬くしたままで。ロイはそんなエドワードを抱き上げて、シーツの上にそっと横たえた。そのまま圧し掛かってくると思われたロイは、何故だがエドワードの隣にごろんと横になって、何もせずにじっとエドワードを見つめ続けているだけだった。
何も言われないまま、見つめられていただけのエドワードは身の置きどころがなくなって、「……しねえの?」と、小さく漏らした。
ロイは「するよ」とだけ告げて。けれど、そのまま動こうとはしなかった。いや、動きはした。仰向けに寝転んで、エドワードに向けていた視線も天井へとやった。すると告げたくせに、自分から視線すら外したロイをますますエドワードは不可解に思って。
「ロイ?」
ロイの方へと身を乗り出せば、ぐいと強く身体を引かれ、エドワードはロイの身体の上に馬乗りになってしまった。エドワードは自身の身体の下にあるロイの顔を見つめれば、そこに在ったのは柔らかい色をしたロイの瞳だった。
「怖くしないと告げただろう?君、身体が震えている。無理をしなくてもいいから」
そう言って、ロイはエドワードの髪を撫でてやった。
「へい……き、だぜ?オレ、とっくに覚悟なんてしてて……」
「けれど、足が止まったではないか。今だってこんなに震えていて」
密着した身体がエドワードの震えを伝えてくる。ロイの上から逃げ出しはしなくても、それは、逃げるだけの力すら身体に入らないからに違いない。
「私はね、君の身体だけが欲しいのではないのだよ。君を愛しているからこそ、欲しいんだ」
髪を撫でていたロイの手がそのままエドワードの頬に触れて。ゆっくりと怖がらせないようにと優しく引き寄せて、唇を寄せた。
「あ……」
さらりと触れるだけのキスが優しくて、エドワードの身体にほんの少しだけ、熱が灯った。ロイはそのまま、唇を啄ばみ続ける。 触れて、掠めて、軽く食んで。舌を伸ばして上唇を撫ぜて。右手は頬に触れたまま。左の手はエドワードの背をぽんぽんと軽く叩く。子どもを寝かしつけるようにぽんぽんと。次第にエドワードの震えが止まってきた。身体から力を抜いて、ロイに体重を預けて。はにかむような笑みをロイに向けた。それを確認して。ようやくロイは深く深くエドワードの唇を求めた。ロイの舌がゆっくりとエドワードの口腔に入っていく。歯列を舌で撫でた。うっとりといつものように潤んだ目でロイを見下ろす。
「……ん……」
無意識に漏らした声が色気を含む。それに誘われるようにして舌と舌を絡めた。夢中になってロイの舌を求めた。絡んで離れてそれでも再び掠められて。深く深く蹂躙されて、息が上がった。ついと唾液が零れてそれを絡め取られれば、じんと何処か深いところから疼くものがあった。気がつけば、ロイに圧し掛かっていたはずの自分が逆にロイに組み敷かれてしまっていて。唇を食んでいたはずのロイの舌は、今では自分の首筋を這っていて。頬に触れていたはずの手はいつの間にかバスローブのヒモを外し、前を肌蹴させて。肌に直接空気が触れて、鳥肌が立つ。それを収めるように這わされていくロイの手の熱を感じた。
……焔を生む手だからこんなに熱いのかな?
ふと、思いついたそんな考えにエドワードはくすりと笑った。
なんだオレ、余裕じゃねえか。
先ほどあれだけ震えたのは何故だろう?ロイに抱かれるのか怖かったのか?
違う。きっとそうじゃない。それは怖くない。
だっていつだってロイは優しかった。キスするときも口説くときも。いつだってオレを追いつめすぎないようにと、何処かに逃げ道は確保していてくれた。
じゃあ何が怖かったんだろう?
その思考が纏まる前にロイがエドワードに微笑みかけた。
「もう、大丈夫そうだな」
ロイはその手をエドワードの中心へとそっと伸ばした。


指が触れた瞬間に、痺れるような甘い疼きがエドワードの中心から湧き起こった。
「……んっ!」
丁寧に絡め取られて、ロイの手の中で脈打った。ロイの舌が首から胸へと落とされていった。触られた場所に順番に火が付いてくるように思われた。焔を生み出す男の熱がエドワードに飛び火したのか。それともエドワードが自ら生んだ熱なのか。ただ、熱かった。やんわりと握られて、その手を動かされて。ロイの手の中でエドワードの中心は熱く、そして芯を持っていった。
「あ、熱いって……」
「君がね」
先端から零れてきた蜜をロイの指で塗り広げられるようにされれば、エドワードの口から思わず甘いささやきが洩れた。
「ふ、あぁ……んっ」
「うん、可愛らしい声だ。もっと聞かせてくれないか?」
「や、やだ……」
「そんなふうに言われたら……」
ロイは一旦そこで言葉を途切れさせた。手はエドワードの中心から離さないまま、顔だけを上げて。目を細めてエドワードと瞳を合わせる。
「……がんばってしまうではないか」
にっこりと告げられたその言葉に、エドワードは全身を朱に染めた。
がんばるってがんばるってがんばるって、何をっ!!
混乱している最中もロイは手を休めることはしなかった。下へと身体を滑らせて、そうしてエドワードの足の間にその顔を埋める。
「な、何っ、ロイ、 あ、ああああああ……っ」
すでに熱くなっていた中心が、ゆるりと温かく湿ったものに包まれる感触に、エドワードは眼を見開いた。一瞬それが何かわからずに呆然としかかったが、すぐにロイの舌だと気が付いた。反射的に脚に力がこもって腰が浮く。指で、自分を慰めるのとは全く異なる強烈さに、その甘美な刺激にエドワードはただ声を上げ続けるしかなかった。ロイは決して急がなかった。ゆっくりと怖がらせないようにと丹念に愛撫を繰り返す。エドワードの、蜜を零し始めている先端を唇でそっと吸う。大切なものに触れているとばかりに柔らかく慎重にゆるゆると手を上下させる。その緩やかな刺激にエドワードはどうすることも出来ずに、ただ、シーツをきつく握り締め続けた。 ごく偶に、アクセントのようにきつく吸い上げられた。それがロイの本心のようで嬉しくなった。優しく、怖がらないようにと行為を進めてくれているロイの、それでも堪えきれずに溢れ出る強さのようで。
好きだ好きだ好きだ。オレはロイが好きだ。だからもっとしていいから。気、なんて使わなくていい。好きにしていいから。怖くてもいい。優しくしなくてもいい。オレは、アンタが好きだから。
その気持ちだけが、ぐるぐるとエドワードの身体の中で反射した。けれど声に出るのは意味を成さない喘ぎだけで。欲望を口で柔らかく締め付けるだけではなく、ロイは指も掌も使って、脇腹や太股をゆっくりと円を足掻くように念入りに撫でていく。そんな場所すらエドワードは刺激と受け取ってしまうのが、もう中心は弾ける寸前だった。
「う、あ、もっ、ダメ……っ」
ロイが息を継ぐ際に漏らした吐息と軽く食まれた先端への刺激によって、エドワードは腰をわななかせながら、その白濁をロイの口腔へと飛び散らせていった。
吐き出してしまった開放感にエドワードがぼんやりとしている内に、ロイはエドワードの右足を抱え上げて、それから白濁で濡らした指をそっと入れた。痛みがそれほどないようにとゆっくりとではあったが、それでも突き入れられた感触に身体は大きく弾んだ。予期せぬ衝撃にエドワードの中心が縮こまる。無意識に逃げようと及び腰になった。けれどロイの指は止まらずに、真っ直ぐ奥へと侵入して。
「い……っ、そこヤダっ」
「すまない、エドワード。解す間だけ、少しだけ我慢してくれないか」
「ほ、ほぐすって、何っ」
呼吸が乱れて、腰を強張らせて。先ほどは放ったときの快楽など何処かに飛んでいってしまった。身体の内側を摩られているようで、気持ちが悪い。ぐぐぐ、と進む感覚がその場所どころか頭の先まで響いていって。そっと丁寧に分け入っているとは理解は出来てもエドワードは歯を噛み締めるしかできない。
「ここで、繋がるからね。痛い思いをしないように準備が必要なんだよ」
指が二本に増やされればエドワードの咽喉が仰け反った。
痛い、ヤダ、気持ち悪い。
初めて触れられる内側と、その内側から生じる未知の感覚にエドワードは必死になって耐えた。指の関節が白くなるくらいにシーツを握り締めて、首を横に振って。痛みと抉られるような気持ち悪さに目から涙がにじみ出た。嫌だ、嫌だと身体が強張る。進めば進むほど身体に力がこもる。
「エドワード、身体の力を抜きなさい。息を止めずに吐くんだよ」
必死になってロイの言うとおりに力を抜こうとしても、痛みに耐えている身体はどうしても強張ってしまって。可哀想に思えて、ロイが一旦抜こうと指を引いたその瞬間。エドワードの身体がひくんっと跳ねた。ロイはその一瞬の変化を認めて、その場所に指を押し付ける。
「な、に……コレ、……あ」
ロイの指がそこを掠めた瞬間、全ての感覚が反転した。じん、と、強烈な感覚が脊髄を這った。目の前が真っ白になって錬成の光で目を焼いたようで。痛みに感じていたはずのロイの指があっという間に何かに変化したようだった。
「ああ、ここだな。もう大丈夫。後は気持ちがいいだけだから」
そう告げられた言葉の意味など判らない。同じはずの指が何故こうも別のもののように感じてしまうのか。強烈な痺れのような感覚に飲み込まれそうになって。ただ、意味のない声だけが溢れた。縮こまったはずの中心は持ち主の意思とは無関係に天井を向く。その弱い場所を何度も何度も摩られて、顎が上がって息が苦しかった。心臓もドクドクと駆けていって。
ああもう嫌だ。耐えられない、何とかして。なにこれ。わからない。ただ熱くて。全身が燃えているように熱くて。
「や、あ、も……いや……あ ああ」
声は喘いで、首を振る以外に出来ることはなくなって。
「ああ、大丈夫。大丈夫だから、エドワード」
そんなふうに優しく言われても、何が大丈夫なのかわからない。
ただ熱くて、疼くだけで。
コレが気持ちいいと言う感覚なのか。わからない。けれど確実に身体の熱が上がってきて。ぎゅっと締め付けているだけだったはずの中も次第に柔らかく蠢くようになる。そこをロイの指が自在に動く。押して引いて突き入れて。掠めて探って進入する。その指にエドワードの内壁は絡みつく。押されれば受け止めて、引き剥こうとすれば追いすがって。ぐちゅぐちゅとした音さえ聞こえてきて。触れられているのは内だけのはずなのに、硬く屹立した中心からも露が垂れる。ぽたぽたと、ぽたぽたと。雫のように。
おかしい。オレの身体、どうしたんだ?
疼いて熱くて沸騰して。ぐるぐると蠢く熱が気持ちよくて。
気持ち、よくて?
これを快楽というのか、悦楽とはこれのことなのか。熱くて疼いて怖いのに、それに酔うのは何故なのか。痛みしか生まないはずだったロイの指を今では甘美に感ずるのは何故なのか。
「……ロ、イっ、 あ、ロイ……っ」
何も判らなくてただ名を呼んだ。シーツを強く掴んでいたはずの手を伸ばす。背に、手を回したかったけれど、届かない。仕方なしにエドワードはロイの黒髪に指を埋める。
「エドワード?」
中心に落とされるロイの声にも震えてしまう。息を吐いて、吸って。ん、ん、ん、と指の動きに併せて呼吸をして。
ああ、オレさっきまで何が怖かったんだろう?
もう、気持ちよさしかなくて、手の力も抜いて。しがみ付くことなく、ロイの黒髪を梳いてみた。さらさらと指の間を流れていくような髪の感触にエドワードは落ち着きを取り戻す。
オレだけ、脱がされてんのに、ロイはまだ服着たままじゃねえか。そんなことを考える余裕もできて。不思議と可笑しさを感じてエドワードくすりと笑った。
「……大丈夫そうだね。この先に進んでも?」
この先?エドワードは顔を赤らめる。そうだ、これで終わりというわけではない。ロイはオレの身体がロイは受け入れやすいように解していただけで。この先を考えると脳まで沸騰しそうだった。けれど生来の負けず嫌いが頭をもたげて、
「その前に、服くらい脱げよ。着たままじゃ、出来ねえだろ?」
と、顔どころか全身を赤に染めながらもエドワードは、こう言葉を発した。そんな強がりなどロイには判っているのか、それもそうだが、と笑って。エドワードに見せつけるかのようにシャツを脱ぎだした。
デスクワークばっかりになってるはずなのに、何でこんなにがっしりしてるんだろう。エドワードは同じ男としてなにやら悔しくなってきた。腹の火傷の跡や数々の傷などは男の精悍さを引き立てるアクセサリーにしか思えなくて。オレなんてけっこう鍛えてるはずなのに、そりゃ筋肉なんてしっかり付いてるけど。傷だっていっぱいあるけどさ。けれど、一見細く見えてしまって。肩幅も腰の細さも。女性とは異なる筋肉の付き方で、脂肪などはほとんど見られないといってもいいくらいなのに。
だけど、ロイの腕の中にすっぽりと埋まってしまう。するいな、と思ってしまう。筋骨隆々な身体が理想なわけではないが、それでもロイの身体自分の身体を比べてみると、そう思ってしまう。
「エドワード……」
ロイの裸を直視することが恥ずかしくて、それでも視線はそちらに向いてしまう。だから無理やり冷静な思考を構築していたというのに。名前を呼ばれただけでエドワードの身体は熱を増した。ロイは、そんなエドワードの戸惑いに気がついているのかいないのか、ゆったりと微笑みかけてから、エドワードの身体をくるりと返して、うつ伏せにした。
――え、何?
「こちらからのほうが辛くないと思うから。エド、腰を少し上げてくれるかい?」
混乱しかかった思考はその背後からの声に素直に従った。腰を上げれば四つん這いになって。
――ちょっとまて、コレ、なんか……。
恥ずかしい、と口に出す前に、熱いものがひた、と合わされた。
「……えっ?」
「力を抜いて。……いいね?」
途端に衝撃がエドワードの身体を駆け抜けた。
「―――――っ!」
頭の後ろが真っ白に染まった。不思議と痛みはなかった。ただ、内側から膨れ上がるような衝撃だけに襲われた。
「あっ、あ、……っ」
身体の奥深いところまで、一気に貫かれて、そしてロイは動きを止めた。
「……っく、――狭いな」
ロイは動きを止めたまま、エドワードの身体がロイ自身に馴染むのを待った。エドワードは、上体をシーツに沈み込ませた。いや、力が上手く入らずに、ただ崩れ落ちてしまったのだ。けれど、腰を落とすことは叶わなかった。差し貫いているものが楔となって、その上、腰をロイの腕にも抱えられて。ただ衝撃と熱に支配された。
「……エド……っ」
その声が切羽詰っているのがエドワードにはわかった。
いいから、動いて大丈夫だから。
そう告げたかったけれど、受けた衝撃に身体が支配されて、思うとおりに声が出せない。
「……イ……っ」
気持ちを込めてロイの名を呼んだつもりだった。けれどロイは腰を進めない。入ったまま静止して。その代わりのように手を前に回してきた。エドワードの昂りをゆっくりと刺激する。
「あっ、んんっ!……あっ……あ、んん、、、」
前を探られ柔らかく上下されて、自然にエドワードの腰が揺らめいた。ほんの小刻みな律動ではあったが、それが生み出す刺激にロイの理性は切れかかった。
「エドワード……動くぞ」
ロイは腰を引いて、またすぐ貫いた。負担にならないようにとゆっくりゆっくり動くことが出来たのは数回で、すぐに激しく前後に揺さぶりかけた。
「あああああああっ!」
鋭い快感がエドワードを襲う。身体の奥の深い場所を突かれて全身ががくがくと震えた。先ほど指で掠められたその場所を今度はロイの屹立に打ち付けられれば全身が総毛立つ。肌のぶつかり合う音が聞こえた。粘膜がぐちゃぐちゃに絡み合う濡れた音も。それらは中を突き上げられるリズムと同じで、エドワードは狂おしく身を揺すった。
好きだ、好きだ好きだ好きだ。ロイが好きだ。
この瞬間だけは、それだけしか考えなくていいのだ。先も後も考えないで、将軍だとか国を背負うとかも何もかも全て今は知らない。
この瞬間だけは何も考えずにロイを愛していいのだと、それだけを唇に乗せた。
「好き、好きだ……っ、ロ 、イ……」
そのエドワードの告白を合図に、ロイは動きを増した。角度を変えて中を穿つ。押して引いて、ねじ込むように衝いて。激しく蕾を貫きながら、限界近くまで反り返ったエドワードの中心を扱いてやった。快楽に震えるエドワードの蕾がロイをぎゅうと強く締め上げた。
「愛している、エドワード」
ため息と共に落とされたその声に、二人は全ての熱を吐き出した。


続く
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