小説・2

BL二次創作&創作。18歳未満の方はお戻りください。無断転載厳禁です。
ロイエド、パラレルです。エド女装あり。


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ガラリと教室のドアが開けられ、出席名簿を持った担任教師が入って来た途端に一年二組の教室はざわついた。
もちろん見なれた担任の教師に驚いたのではない。その後ろの、金髪の少年と少女のコンビに、教室中がざわめいたのである。
「あー、みんな静かにしろ。転校生を紹介する。エルリック、こちらへ」
一歩前に出たのは利発そうな少年。そしてその後ろには不貞腐れた顔の少女が付き従う。二人の顔は瓜二つと言っていいほどそっくりだった。しかし受ける印象はまったくと言っていいほど違っていた。
少年は温和なイメージの笑顔である。しかし少女のほうは。
高い位置で一つにまとめられた長い髪。制服のスカートからすらりと伸びた健康そうなはち切れんばかりの曲線美。勝ち気そうな金色の瞳。
テレビの中のアイドルなど裸足で逃げだしそうなほどの、完璧な美少女だ。
いや、若干胸が薄いのだけが問題だが、それにしても細い腰だとため息までついてしまいそうになる。
しかしその美少女は苦虫をつぶした顔で仁王立ち、なのだ。腕まで組んで、じろりと教室中を見回している。喧嘩でも売っているような顔つきだ。
美しいというよりも恐ろしい。
運悪く目があってしまったクラスメイトの数名は、さっと顔を伏せた。
「えーっと、ボクはアルフォンス・エルリックです。で、こっちが兄の、」
「……エドワード・エルリック」
へ?と一瞬教室中に疑問符が飛んだ。
兄と、今言わなかったか?そしてエドワードというのはどう聞いても男の名前ではないのか……、と。その雰囲気を察したようにアルフォンスが言葉を続けた。
「ええと、ボクは弟で、こっちはボクの双子の兄です。已むを得ない事情によりスカートを穿いてますけど、別に兄の趣味でもなんでもないですから、同級生の皆さん、兄には迫らないように。もし万が一、ウチの兄が嫁にも婿にも行けないような事態になるのなら、ボクが闇討ちしますからね」
にっこりと穏やかに笑っているが、その金色の瞳だけは殺気に満ちていた。
冗談でもなんでもなく本気だと細められた瞳が伝えてくる。
「……実に不本意なんだけどさ、オレは男だ。スカートを穿く趣味はねえけど仕方がねえ。つうわけで、しばらくの間よろしく」
「その事情になんとか蹴りがつけば、ちゃんとウチの兄もちゃんと男の恰好に戻りますので。しばらくの間ご容赦ください」
ぺこり、と下げられた頭に、クラスメイトの皆さまは、どうしていいかわからずに「は、はあ、よろしく……」と茫然と答えたのだった。


そうして、クラスメイトに遠巻きにされたまま転校初日の授業が終わった。キンコンカンと軽やかにチャイムは鳴り、クラスメイトのある者は部活動に参加し、ある者は帰宅をする。皆が皆、一様にちらちらとエドワードとアルフォンスを見るが、二人に声をかけようとする勇者などはいなかった。
また、二人も、そんなクラスメイト達など気にもしなかった。
「さってと……」
教科書とノートをかばんにしまうと、アルフォンスはそのかばんの中からカードを取りだした。
トランプのようにも見えるが、それよりも枚数が多く、絵柄も異なっている。1~10までの数字の札と四枚の人物札、それに加えて戦車だの悪魔だの雷に打たれて崩れ落ちかけている塔の絵だのといった不思議というか何らかの寓意に満ちた札が数十枚ある。海や山といった自然の風景が描かれているものもあった。
そして一枚だけ真っ白な札がある。
タロットカードを知っているものならそれと思ったであろう。
実際にアルフォンスが手にしているのはそれに非常によく似ている。
似ているが、違う。
これは二人の母親であるトリシャからアルフォンスが受け継いだ、エルリック家に代々伝わっている特殊なカードなのである。
まあ、しかし、用途はタロットカードとほぼ同じである。つまり、これは占いのための道具なのだ。
アルフォンスは手早くカードを切ると、机の上に一枚また一枚とカードを並べ始めた。
「ま、ボクは母さんほどの力は無いケドね。まだ修行中の身だし。……でも『場の力』ってものもあるからカードに聞いてみる」
「ああ、頼むなアル」
「母さんが見てくれるなら完璧にわかるんだろうけど……。それこそ『場の力』ってものがあるし、だから母さんはリゼンブールから動けないしね」
「大丈夫だアル。オマエは母さんに次ぐすっげぇ力持ってる魔女なんだから。占い、外したことないじゃねえかよ」
「うーん、魔女……かあ。ボクの場合は女の人じゃなくておとこだからさ……魔男とかいうのかなあ?」
「魔男って……。なんか別の意味に取られそうな気するけどな。ま、魔術師でいーんじゃね?」
「あ、そうそうそれで行こう。魔術師、かっこいーね」
ぼそぼそと喋りながらもアルフォンスは手を休めることはない。カードを切ってそしてそれを並べて、捲っては真剣にその絵柄や数字を凝視する。
そして、その手を止めた。
「うん、やっぱりここだね。この学校にその制服で通う。そうすれば兄さんは出会うよ」
「あー……、まあそこまでは母さんの占い通りだよな」
「うん、母さんの占いは絶対に外れないからね」
トリシャは魔女である。と言っても対外的には占い師、ということになっている。決して外れない占いをするために、彼女の住まうリゼンブールまでわざわざセントラルの政治家や軍部高官までが通ってくるほどの力を持っているのである。
アルフォンスはその後を継ぐ。残念ながらエドワードにはその占いの才能は欠片もない。だから、カードの告げる未来など読み解くことは出来ない。しかし、エドワードは知っている。トリシャやアルフォンスのカードは絶対に外れないのだ。
「この学校の近くに、兄さんの運命の人はいる。もう間もなく、兄さんは出会うよその人に」
宣言のように、きっぱりとアルフォンスは告げた。



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