小説・2

BL二次創作&創作。18歳未満の方はお戻りください。無断転載厳禁です。
誕生日を祝ったことなど一度たりともなかった。今までも、これからもないと思った。表の仕事が俳優で、多少なりとも売れ始めてきているから。ファンからのプレゼントは事務所に届く。けれど、そうか、と思うだけで感慨はない。
ただの記号。年をまた一つ取っただけ。意味といえばそれだけしかないと思っていた。
だけど、今は。

名取はまるでそれが大事な宝物であるかのような繊細な手つきで携帯の画面を見つめている。
そこに表示されているのはたった数行の文字。

お誕生日おめでとうございます名取さん。今度ちゃんとお祝いしますから、時間を取ってくださいね。

差出人の少年の名を見て名取は笑みを浮かべた。

誕生日に意味などない。ただひとつ年を取るだけだ。23から24歳になったというただそれだけの記号。
けれど。
こうやって祝ってくれる人が今は居る。
それが何物にも代えがたく幸福だと名取は初めて知った。

単なる記号、無機質な数字。
けれど今は。

たった一つの特別な日。数行の文字が伝えてくる温かさ。

名取その文字を何度も見て、そしてそのたびに、この特別な日の幸福を噛みしめた。



‐ 終 ‐



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